ドッグファイト ~東京ミュウミュウ~

 甘えた寝顔が可愛かった。

 本当は、そろそろ起きて支度をしなくてはならなかったけれど、右肩に掛かった頭が邪魔……邪魔ではなく、起こしたくなくて私はそのままでいた。

 天井を見た。

 昨夜の余韻からはもう醒めていたけれど、身体の節々が少し痛むのに笑った。

 

 昨晩は、この腕の中で眠るみんとが、あまりにもせがむから仕方なく愛してやったのだ。

 仕方なく、か、私は笑った。

 仕方ない、というのはしょせん言い訳に過ぎない。

 

 みんとは、頭がよくって素直で可愛い娘だ。負けず嫌いのところもいいチャームポイントだと思う。

 必死に顔を染めて、

「お姉様! お姉様っ!」

 とキスを求めてきたり、しがみついてくる姿も可愛らしい。私のベッドの中で、羽根のように軽くて、小さい身体を折り曲げて泣くところなんか最高だ。

「そんなに辛いなら、やめた方がいいの?」

 私が意地悪を言うと、みんとは首を振る。

「イヤです、お姉様! もっと続けて下さい、続けて欲しいんです!」

 哀願とはこういうことか。

 みんとのリクエストに応じてやるため、潤った泉に口を近づける。

 私の吐息がかかるのか、それだけで息も荒くなっていた。ちゅと、音を立てて吸うと、たちまち私の口の中に、熱く粘りのあるみんとの味が広がっていった。

「お姉様ぁ!」

 首を左右に振って、私の名前の連呼だけをするみんと。その目尻から流れる涙は、快感の、気持ちいいことの証なんだろう。

 濃くて大量の泉の中に、ぽつんと顔を覗かせるみんとのクリットを、私は舌先でつつく。

 つん。

「あっ!」

 つん、つん。

「お、お姉……さ、まっ!!」

 手が伸びたために、私はみんとの股間に深く顔を押し当てることになっていた。

 ほとんど無毛の、きれいなピンク色の亀裂からは、匂いたつ少女の香りがしていた。かぐわしくも甘酸っぱい匂い、だった。

 それを思い切り深く吸うと、くらくらとめまいがした。

「私、死んじゃう、死んじゃいます!!」

 みんとが絶叫する。私は舌を細くして、みんとの体内へ進ませていった。

 ぴくん、みんとが弓のように身体を折る。そうしてぐったり弛緩するかと思ったら、いきなり跳ねた。

「し、死んでしまいますっ!!」

 大量の泉が押し寄せてきて、私は顎まで泉で濡らすことになってしまっていた。

 それを、口を大きく開けて啜った。少女の神秘の泉の水を咽喉を鳴らしてこくこくと飲んだ。甘い泉を心いくまで味わったのだ。

 飲んだ後、私は、息も絶え絶えのみんとの顔に自分の唇を近づけた。

「お、お姉……様?」

 薄く目を開けたみんとは、私をその瞳に映した。そしていきなり、がばっと抱きついてくる。

「愛してます、お姉様だけを、心の底から!!」

 痛いくらいの愛情表現。聞いていても切ないくらいの愛の告白。しかし私の身体は熱く燃え盛り、反対に心は冷え切っていくのだった。

 キスの求めに応じてやった後、再びみんとの中心を吸い続けた。

 少女の泉は衰えを知らず、貯え、あふれてきていた。私が吸っても啜っても舐め取っても際限なく、泉は満ちていく。

「お……姉様!! 私、本当にぃ……」

 みんとが後を続けられなくなった。忙しい呼吸が断続的に続き、私の頭を締めつける力が強くなっていく。

 顔を上げて、痺れかけた舌を休めた。舌先には、露のようなみんとの泉が濃く付着していて、口内で丸めると、何とも言えない味が広がっていった。

 休憩する代わりに、指先でみんとを愛撫してやった。指の腹に。大量の粘り気を含んだ泉がまとわりついてしまう。

 それを潤滑液のようにして、クリットを摩擦する。ただ、ひたすらにまさぐる。

 少女の薔薇色に染まった頬は、私の身体をも熱くしながら、ただ冷え切っていく私の心だけを残して、燃えた。

「ああっ、も、もう!!」

「いきそうね、いいわ、いきなさい」

 みんとが私を見て訴えた。

「で、でも……私だけなんて……あっ、あ、ああ!!」

 加速させた指の腹で、みんとの台詞を言えなくしてやった。

「お、お、おおっ、お姉様も……」

「いいの」

「で、でも」

「聞き分けのない娘ね、いっちゃいなさい」

 むきだしの無毛の亀裂が裂け、大洪水が始まった。私の指は濡れ、いよいよ肥大したクリットを軽く叩いていた。

 瞬間、みんとが達した。

 がくがくと何回も痙攣し、首を抱いている私の腕にしがみついて、悲鳴を上げた。

「ああっ、ダメです、ダメなんです、お姉様、私、死にますっ!!」

 藍沢家の召使い達が聞いたら、およそ卒倒しそうなくらいの声だったが、私の手をびっしょりと濡らす泉と小さく尖ったクリットは正直だ。

「いきます、いくのです、ああ、私、私ったら!!」

「……」

 何事か呟く少女のたわごとめいた歓喜の声を聞きながら、私はまだまだ発育未熟な胸の頂きを吸った。

 薄く色づいた小さな頂き、それを含みながら、まるで弄ぶようにみんとを嬲った。オモチャに飽きない子供のように、私は彼女を愛していった。

 みんとは、何回も可愛い声で哭き、叫び、喘いだ。

 涙をこぼしながら乱れるみんとが、可愛いと思った。

 

 やっとの思いで、腕枕で眠るみんとを起こさないようにして、私は起き上がった。

 無造作に脱ぎ捨ててあった制服に袖を通していると、

「あ、お姉様、もういっちゃうんですか?」

 まだまだおネム、といった声で、みんとが残念そうに言った。

「今日はカフェミュウミュウには?」

 私は首を振った。

「そ、そうでしたわね、お姉様はお仕事が」

「そう。今日は仕事」

 キスをねだるみんとに唇を預けてみれば、何回も要求された。足腰が立てなくなるほど、腰が抜けるくらい強烈なキスをしてやってから外に出た。

「お姉様、もうダメェ」

 と言うなり、再びベッドに崩れたみんとを残して。

 

「で、今日は用意してきたのか?」

 私を辱める声。

「はい」

 堕ちていくのを自分で求める、私の声。

「じゃあ、つけてみろよ」

 カバンから取り出したのは、銀と黒い革の首輪。

 髪を上げて、首に回して装着する。

 首輪には紐を繋いであり、私はそれを彼に渡した。渡す時、指が震えた。

「あのう、制服は?」

 私が聞くと彼は笑った。

「そのままでいい、学生っぽくていい」

「本当に学生なのに」

 言い返すと、彼は紐をぐいと引っ張るのだった。

「く、苦しい」

 首輪が締まって、私の咽喉を圧迫する。

「いいから、ほら、スカートの中身を見せてみろ」

「は、はい」

 ゆっくりと手を伸ばして、私はスカートをたくし上げた。それを見ていた彼の顔が卑猥に歪む。

「白か、ん?」

 男って、女の子の下着が死ぬほど見たいらしい。で、色や柄が自分の趣味と異なると、平気でブーブー文句を言う。

 だから、こんなことをする予感がある日は、白にしておく。繊細なレースで幾重にも飾られた白であれば、大概の男は満足するのだ。

「ん……んっ!」

 彼の指先が、荒々しくも私の大切なところに伸びた。

 彼はまず、手のひらを裏返して、中指の腹で触れてきた。ショーツに触れ、丸いお腹の曲線を確かめるようになぞった。

「ん……ん」

 目を閉じた私、下半身を彼に視姦されて、身体と心がかーっと熱くなる。

 燃えた私、触れられた指先に感覚が集中し、息を呑んでしまう。

「何だ、もう濡れてるのかよ」

 昨夜のみんとの時とは全然違う、指摘されなくとも、私、もう濡れてる。

 腿の間から抜いた指先を灯りにかざす彼。白っぽく光るその指先には、私の……

「舐めろよ」

 コク、素直に言いつけに従う。濡れた指先にかぶりつく私は、従順そのものだ。

 

 従順。

 違う、およそ普段の私とは違う、違っている。

 私は犬。

 彼の言いつけに従う、従順で淫らな犬。

 

「よくできました、次はこっちだ」

 カチャカチャ音を立てて、彼が下半身を露わにする。現れた彼のペニス、テカテカに赤黒く光って、尖って、逞しくって、もう大きくなっちゃってる。

 彼が私を欲しいと望んでいるのだ、と思った。それだけではなく、私も彼を、彼のここを欲しがってる。

 口を開いて、彼を呑んで。思いきり深く呑んだ。

「う、うっ、うく……くうっ、う、う」

 激しく吸い込んだ後、いったん離して、見つめた。

 硬度を増した彼に、頬ずり。スリスリと頬を寄せる。顔に私の唾液と彼の体液がついても、髪がそれで汚れても構わなかった。

「へへ、本当に好きなんだな」

「う……ん、好き、これ好き」

 舌先を叩きつけて、太くなった彼を刺激する。握り締めた手を上下させた。

「う、う、それ気持ちいい」

 彼の顔が歪む。それが見たくて、嬉しくて、愛撫に熱が入るのだ。

「う、うく、ん、んうっ」

 目を閉じて、尖らせた舌の先を彼の全部に這わせる。たっぷりつけた唾液を塗りたくってやった。

 下の方の袋も忘れない。片方を揉みながら、もう片方を口に含んで。

「自分で触ってるのか?」

 気づけば、私はいつのまにか、自分の手をショーツの中に突っ込んでいた。

 そしてクリットを摘んでいた。

「指を見せてみな」

 出した指先を横目で眺めてみれば、やっぱり濡れて光っている。

 口で奉仕をしながら、私は濡れていたのだ。ううん、改めて彼に指摘されるまでもない。

 欲しいんだもの、これでされちゃいたいんだもの。だから、股間を濡らして、自分で触って気持ちよくなって。

 でも、ずっと口で愛してあげていたいという気持ちもある。こうやって焦らされて、待ち望み続けた後にされると、とっても気持ちよくなるから……何倍もよくなるから……

 あたしは唇を軽く閉じて、膨らんだ彼に刺激を送り続けた。また、彼が自分でしろ、と命令したので、言われるまま、股間を撫でた。

 ショーツがぐっしょりと濡れていた。自分で慰める、という行為は、単純でありあっという間に昂まることができる。

 クリットが固くなり、指を押し返すくらいに発達していた。

「ん、んっ、ああっ、あん」

 

 彼はいつまで口でさせるのだろう?

 早く、早くぅ、早くっ!!

 でも、これをこのまま味わっていたい、ああ!

 

 にゅるっという感触の、私の中は熱かった。熱い泉だった。

 掻き回して、上にあるクリットを撫でて、太い彼をゆっくり味わう。その度に私は身体を震わせた。

 きた、きた。小さかった波動が集まってきた。

 

「あ、ああ」

「何だ、しゃぶりながら、自分でいっちゃうのか?」

「う、うん」

「ようし、いけ、いっちゃえ」

 狩りにお供して、飼い主から獲物を捕まえるべく放たれる猟犬よろしく、許可が下りた。

「あ、いく」

「いってもいいけど、口を休めるなよ」

「う、う、ううっ、うく、うぐ、ん」

 咥えたまま、私は達していた。都合、三回いった。だけど、彼は口を離す許しをくれなかった。

「いったか、ん?」

 私は首を縦に振った。

「ようし、じゃあ、褒美をやろう」

 彼は、残酷で無慈悲な暴君だった。

 私を立たせ、後ろを向かせて、ショーツも脱がさせてくれず、犬のように扱った。

 

 そう、犬。淫乱奔放な犬。

 ミュウざくろは灰色狼とのキメラで、こうやって扱われる私は、牝の犬。

 だから、私は。私は……

 

 一気に奥深く挿入されて、喘いだ。快感で目が眩む。

 彼は、前戯などしてくれないのだった。また、してくれる訳などなかった。私を突くだけなのだ。

 だからこそ、自分でしていたのだ。充分に濡れさせておいて、彼を受け入れる用意をしていた。

 

 だから、きてえっ! もっと、もっとっ!!

 

 はしたない牝犬は、後ろから愛されて、抱かれて、どんどんよくなっていく。

 指だけで満足できない、自分じゃ満ち足りない、こうやって、激しくされるのがいい。

「ざくろ、自分で動いてみな」

 暴君が冷たく私に命じる。

 腰を揺らして、自分のいいとこをえぐってもらって、もう最高、と思った。彼が動かなくたって、平気だった。

 ピチャピチャといやらしいしずくを床に垂らして、私はひたすらに動くのだ。

 このまま絶頂を目指して、何度でも動くのだ。

「あっ、ああっ、はあっ!!」

「そうじゃねえだろ、犬のように吠えてみな」

 首輪を引っ張られる私は、

「う、うう、わ……わん」

「そうだ、ほらもう一回」

「わ、わん、わん、キ、キャンッ!!」

 もうすぐ絶頂が訪れようとしていた。

「うおん! わお~ん!! あ、あんっ!!」

 私は犬のように吠え続けた。

 

(了)

 

亭主後述・・・

 

ざくろお姉様。

拝啓、あなた様をお慕い申しております。その冷たい眼差し、孤高の振舞い、一匹狼のように気高くもお美しいお姉様。

ちらりと見える、可愛らしいおへそも堪りません。

みんとが、お姉様に萌えるのも判りますとも。

ですが、あの時のあなた様は、きっとこうではなかろうかと。それとも、やはり攻めご専門なのでしょうか。

ああ、下賎な想像をする私をお許し下さい。叱って下さい。蔑んだ目で私をご覧下さい。

 

敬具 滝沢馬鹿琴