その妹 ~機動戦士ガンダム 逆襲のシャア~


『議会の方と、このテレビを見ている連邦国国民の方には、突然の無礼を許していただきたい。私はエウーゴのクワトロ・バジーナ大尉であります。話の前にもう1つ知ってもらいたいことがあります。私はかつて、シャア・アズナブルという名で呼ばれた事もある男だ!』

 演説が始まった。
 地中海をほんの少し越えた先のダカールからの放送が、11月の冷たい風に乗って聴こえていた。

『私はこの場を借りて、ジオンの意志を継ぐ者として語りたい。勿論、ジオン公国のシャアとしてではなく、ジオン・ダイクンの子としてである。ジオン・ダイクンの意志はザビ家のように欲望に根ざしたものではない。ジオン・ダイクンがジオン公国を作ったのではない。現在ティターンズが、地球連邦軍を我が物にしている事実は、ザビ家のやり方より悪質であることに気付く。人が宇宙に出たのは、地球が、人類の重みで沈むのを避けるためだった。そして、宇宙に出た人類は、その生活圏を拡大したことによって、人類そのものの力を身につけたと誤解して、ザビ家のような勢力をのさばらせてしまった歴史を持つ。それは不幸だ。もうその歴史を繰り返してはならない。宇宙に出ることによって、人間はその能力を広げることが出来ると、なぜ信じられないのか!』

・・・何を言ってるの、兄さん・・・兄さんこそ、人間を信じていないヒトはいないのよ・・・

『我々は地球を人類の手で汚すなと言っている。ティターンズは、地球に魂を引かれた人々の集まりで、地球を食い潰そうとしているのだ!人は長い間、この地球というゆりかごの中で戯れてきた。しかし、時は既に人類を地球から、巣立たせる時が来たのだ。その期にいたって、なぜ人類同士が戦い、地球を汚染しなくてはならないのだ!地球を自然のゆりかごの中に戻し、人類は宇宙で自立しなくては、地球は水の惑星ではなくなるのだ!このダカールさえ砂漠に飲み込まれようとしている!それほどに地球は疲れ切っている!今、誰もがこの美しい地球を残したいと考えている。ならば、自分の欲求を果たす為だけに、地球に寄生虫のようにへばりついていて、いい訳がない!』

・・・だからって、兄さんが戦争を続けていい訳がない!・・・
 私はきっと唇を噛んだ。寂しかった。悲しかった。

『現にティターンズは、このような時に戦闘を仕掛けてくる。見るがいい、この暴虐な行為を。彼等はかつての地球連邦軍から膨れ上がり、逆らう者は全てを悪と称しているが、それこそ悪であり、人類を衰退させていると言い切れる!テレビを御覧の方々はお分りになるはずだ!これがティターンズのやり方なのです。我々が議会を、武力で制圧したのも悪いのです。しかしティターンズは、この議会に自分達の味方である議員がいるにも関わらず、破壊しようとしている!』

「セイラさん、放送聞いちまったんですか?」
 ジョブ・ジョンが温かい飲み物を持って現れた。彼から受け取って1口味わう。コーヒーの苦さが口に染みた。
「・・・そんな悲しい顔しないで。」
「あ、ダ、ダメよ、ジョブ・・・危ないじゃない。」
 後ろからジョブに抱きすくめられた私は、何とかカップをこぼさないように彼をたしなめた。ジョブは私の耳を噛みながら、
「・・・いつまでもブラコンなんだから。」
「あっ・・・ダ、ダメ・・・もう離れて!」
 ジョブのお腹を軽く肘で突いた。彼は、痛そうに呻くと名残惜しそうに私から離れた。
「イテテ・・・じゃ、いつまでも外にいないで。寒いっすから。」
 と言い残し、部屋に入っていった。私はコーヒーの残りを啜っていた。

 1年戦争終了後、私は連邦軍を除隊した。軍の興味を引いたのはアムロだけで、後のメンバー達はそれぞれの道を進んでいた。可哀想にアムロはシャイアン基地に幽閉されていて、外界との接触を禁じられていたそうだ。そのアムロも最近、エウーゴに身を投じたと聞いている。
 アムロとは前の戦争時、男女の関係になった。だが、それだけだ。恋人でもないし、付き合っていた訳でもない。お互いの寂しさを埋めるために寝ただけのことだ。
 マス家の遺産と兄が送ってきた金塊を元手に、私は欧州で投資と商売を始めた。幸いにも順調だった。人手が欲しくなり、除隊したホワイトベースのクルーに声を掛けると、ジョブ・ジョンが故郷からやってきたのだ。
 そうして気がついたら、いつのまにかジョブと男女の関係になっていたのだった。

「ジョブ・・・抱いて!」
 部屋に戻って、エウーゴが去った後の混乱するダカール議会の生中継を見ていたジョブに私は言った。黙って彼はソファから立ち上がると、私を抱きしめた。
「セ、セイラさん・・・」
 私は荒々しくジョブの唇を吸った。驚いていた彼もやがて強く吸い返してくる。彼が私の服のボタンを外しに掛かる。私も彼のズボンのベルトを急いで引き抜いた。
「はあ、はあ、はあっ!」
 全身を高まる欲望が支配していた。宇宙での一別以来、別れた兄の姿を見たのが原因かもしれなかった。
 遅々として進まないジョブの脱がせ方に、私は苛立っていた。とうとう自分で脱ぎ始めた。下着姿になって、ブラの肩紐を弛ませながら、私は彼の耳元に囁いた。
「お願い・・・メチャクチャにして・・・」
 ごくん、とジョブが唾を呑む音がした。彼はもう1度私の口を塞ぐと、ソファに押し倒した。
「激しく、して!」
 ジョブの舌が私の胸に這っている。強引に片方の乳房を掴んでいる。火照った身体が彼の情欲の昂ぶりを感じて、心地よかった。逞しい身体の下で私は陶酔感に溺れているのだ。
「もっと、乱暴にして!」
 ぶちん、とブラが破れた。両の乳房を舐めながら、ジョブの片手が私の足の付け根に伸びていく。もう既に私は濡れている。下着と秘唇がぐしょぐしょで気持ち悪くくっついている。
「はあん・・・そう・・・もっと触って・・・あ、あ・・・ああっ!!」
 ジョブの固くなったペニスが太腿に当っている。下着をするすると脱がされながら、私はその時を待っていた。
「・・・ゴメンだからね。」
 ジョブが何かを言った。よく聞き取れなかった。
「え?」
「・・・『赤い彗星』と、アムロの代わりはゴメン、って言ったんだ。」
 思えば、ジョブはホワイトベースのMSパイロット候補生だった。それを避難民でしかなかったアムロや、ハヤト、カイに、非常事態とはいえパイロットの立場を奪われたのだ。だが、彼は黙って不平も言わずによく働いていた。そう言えば、私とアムロの密会の現場も見られたこともあった。
「違うわ・・・ただ・・・あ、あん・・・ただ、抱いて欲しいのよ。」
「嘘つき!・・・嘘つきはこうしてやるっ!」
 と短くジョブは叫ぶと秘唇を舐めた。舌先が尖って、秘唇をつんつんする。じわっと体内からあふれる愛液をすくいながら、ぺろぺろ舐めている。彼は咽喉を鳴らしながらこくこくと味わっていた。秘唇の中心にある私の敏感な突起が攻められた時、身体がびくびくと痙攣してしまった。
「あうんっ!あ、あ、あ、あ、ああっ!!」
 私は快感に身悶えしながら、両の腕でジョブの頭を自分の秘唇に押し付けた。
 ぶちゅる、じゅぴゅ、ぐにゅにゅ、
・・・ああ、何て卑猥な音なんだろう・・・ああ、私は何てえっちなんだろう・・・
 霞む意識で濡れた音を聞きながら、そんなことを考えてみる。急にジョブのペニスを頬張りたくなり、手を伸ばしてやると、彼は私の意図に気づいてソファに横になった。
・・・ジョブのペニス・・・固くなってる・・・
 しゅこしゅこと手でこすってやると、ジョブは気持よさそうに低く唸るのだった。それを見た私は口に含んでやった。
・・・ちろちろちろ・・・
 ペニスの割れた先端から一気に液体が染み出てくる。勿体ないように思えてちゅうちゅうと吸い込むと、秘唇からようやく口を離したジョブが言った。
「・・・そ、そんな技どこで覚えたんです?・・・うお、気持ちいいなあ。」
 私は答えずにペニスへの愛撫に没頭する。
 兄さんに覚えさせられたのよ、なんて言ったらジョブは目を剥いて怒るだろうか。
 手を添えてゆるく上下に擦りながら私はペニスを愛していく。
「んっ、ん、ん、ぷは、はあはあはあ・・・じゅる、ちゅる、ちゅるるるるる・・・ん、ん、ん、んうっ!・・・あ、あ、あ、ああんっ!!」
 唇を細めて顔を動かす私に我慢できなくなってきたのか、下になったジョブは指で秘唇を撫で始めた。くちゅくちゅいう音と共に私の快感が高まっていく。負けじと私も舌を動かす。
「・・・セイラさんの肌、真っ白できれいだ・・・」
 ジョブがぼうっとして言う。
「ああ・・・ジョブ、ジョブ・・・ん、ん、ね、早く・・・ね?」
 切なくなって私はジョブに訴えた。
「よし・・・」
 再びソファに寝かされると、私は唇の端についた涎を拳で拭きながら、ジョブの次の行動を待った。
・・・早く・・・早くう・・・欲しい・・・欲しい・・・
 ジョブが私の足を広げながら覆い被さってきた。
・・・来た、来た、来た・・・早く、早く、早く・・・
 にゅ、という粘膜の音がした。秘唇とペニスが触れている。
・・・ああ・・・ペニスが来る・・・私の中へ入っていく・・・ああ、早く深く奥まで入れてよう・・・
 私を焦らすように、ジョブは先端を近づけては離し、離しては近づけている。
「・・・意地悪!・・・ジョブのバカア!」
 腰を振って求めた。ジョブはにやりと笑うと、身体を沈めてきた。
「あん、あ、あ、あん、ああっ!」
 秘唇の肉をこじ開けながらペニスが入れられると、すぐに快感が私を襲う。乱暴にペニスを押し込みながら、ジョブが唇を奪いにくる。唾と唾を混ぜ合わしながら、私達は互いの舌を吸い合った。まるで、少しでも離れてしまうと死んでしまうような恋人達のように。
「あう、あう、あ、あ、いい・・・いいっ!!」
 呼吸が苦しくなって口を離すと、喘ぎ声が洩れる。もう静かに振舞うなんてことは出来そうにもない。こんこんと体内奥深くまで貫かれながら、私は更にジョブを求めていた。
 ジョブのくるくるした金髪に指を伸ばし、絡めてみる。抵抗に遭い、指が下まで落ちていかない程のちぢれっ毛だった。
「すごい、すごい、セイラさん・・・あ~気持ちいいや。」
 ジョブの間延びした声が聞こえる。
「あん・・・どうするの?」
 私から引き抜いたペニスが愛液で鈍く光っている。ジョブは今度は私をよつんばいにするのだった。後ろを向いた途端に、またペニスがにゅぷと刺さって来た。
「!・・・ああっ・・・どうしてえ・・・すごい・・・こんなの・・・こんなのおっ!!」
 唇を噛みながら、私は耐える。支える腕が崩れてしまいそうな程の快感だ。その時うっすら開いた私の眼に、つけっ放しのテレビの画面が入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああん、き、気持ちいい、もっとしてよっ!

 

「只今、ダカールの連邦議会より、生中継をお送りしています。・・・エウーゴのクワトロ・バジーナこと旧ジオン公国軍の『赤い彗星』シャア・アズナブルが議会に乱入し、演説を行ないました。では、その演説をご覧下さい。」
 アナウンサーの前振りの後、再び先程の兄の演説シーンに変った。
『・・・私はかつて、シャア・アズナブルという名で呼ばれた事もある男だ!』
・・・に、兄さん・・・あん、ああん!!・・・
『私はこの場を借りて、ジオンの意志を継ぐ者として語りたい。勿論、ジオン公国のシャアとしてではなく、ジオン・ダイクンの子としてである。』
・・・バカな兄さん、可哀想な兄さん、鬼っ子の兄さん・・・あん、ジョブ、いい、いいよっ!・・・
『宇宙に出ることによって、人間はその能力を広げることが出来ると、なぜ信じられないのか!』
「もっと、激しくしてっ!私をめちゃくちゃにしてっ!!」
「え?こう?こうかい?!」
・・・もう兄さん、やめてよう!!・・・
『ティターンズは、地球に魂を引かれた人々の集まりで、地球を食い潰そうとしているのだ!』
・・・兄さんこそ、戦いに魅入られた、死神に魂を引かれた戦争の申し子なのよう・・・
「あん、あん、んっ、あん!!」
 テレビの中の兄が大きくアップになった時、不意に兄に抱かれているような錯覚を覚えていた。ごりごりと私を悦ばせるペニスが、兄さんのそれのように思えていた。
 私は、兄さんの顔を見ながら登りつめる変態なのだ。
 私は達した。
「も、も、もうダメッ!!あん、い、い、い、いくう!!」
 ジョブもクライマックスだったらしい。私のお尻の上にとくとくと熱い精液を振り掛け始めた。その熱い情熱の結晶を受けとめながら、私はふと昔のことを思い出していた。

 地球へ亡命した幼い兄妹。父の死によって、南欧の名家マス家にエドワウ・マスとセイラ・マスとして養子にやられたあの日以来、私達はたった2人きりだった。
 まるで、中世騎士物語に出てくる姫君に愛情を誓う騎士のように颯爽と現れて私を守る兄さん・・・そんな兄さんと私が一線を踏み越えたのは、兄が13才、私が10才の暑い日だった。
「・・・兄さん・・・兄さん?・・・ね、何するの?」
 マス家の納屋に連れて行かれた私は、兄さんが息も荒く圧し掛かってくるのに恐怖していた。
「・・・この間、メイドに教えてもらったんだ・・・」
 藁と干し草の匂いの立ち込める納屋で、兄さんは怯える私に囁いている。私は知っていた。可愛らしい美少年の兄さんに、マス家の人達は使用人も含めて夢中だということを。
 あるメイドの1人が、兄さんに流し目を送っているのが判っていた。私は、不機嫌になりながらもそれを見ているしかなかったのだが。
 そしてある晩、お手洗いに立った私は、そっと兄さんの部屋に入っていくそのメイドの姿を見たのだった。早朝メイドが立ち去るまで、私は徹夜で起きていた。涙を流して待っていた。
「いや・・・兄さん・・・みんな心配するから・・・出て行こうよ!」
「・・・アルティシアを抱きたいんだ・・・それとも僕のこと、好きじゃないのかい?」
「ち、違うの!兄さんのこと、大好きよ。でも私達兄妹だし!」
 兄さんがキスをしてきた。今まで何度となくキスをしてきた。父が亡くなるずっと前から、だ。
「兄妹・・・なんてくそくらえ!・・・僕はアルティシアのことが好きだ!」
「・・・兄さん!」
 兄さんにぎゅっとしがみつく。私はもちろん兄さんが好きだ。でもそれは普通の仲のよい兄妹の感情だったのだろうか。素敵な兄さんに憧れてはいたが、男女の関係になるつもりはなかったはずなのに。
 だが、メイドのことが気になっていた。あんなメイドのような女に兄さんを取られたくなかった。
「兄さん・・・ずっと私のことを見ててくれる?」
「もちろん。」
「他の女の人を追いかけたり、どこか遠くへ行ったりしない?」
 私は幼いながらも嫉妬していたに違いないのだ。メイドに、そして兄を情熱的な視線で眺める他の女性達に。兄を独占したかったのだ。
「ああ・・・アルティシアだけを見ているし、どこにも行かないよ・・・」
「兄さん!」
 キスは涙の味がした。身体を兄さんに任せたのだった。

 そんな関係が数年続いていた。私は兄さんによって開発されていた。最初は何もせずに大人しくしているだけ。黙ってしがみついているだけだった。
 でも年上の女によって手ほどきを受けた兄さんは、私の身体を使っていろいろ試してくるようになっていた。
「あうん!あん、あ、あ、ああっ!!」
 兄さんは私を上にして貫いている。まだふくらみのほとんどない乳房を、指で嬲るのが兄さんのお気に入りだった。そして私を辱めるためにこんなことを言うのだ。
「下から見ると、アルティシアはみだらで、キレイだ・・・」
「いや・・・恥ずかしい・・・あん、あん・・・はあっ!!」
 私が真っ赤になりながらいやいやをすると、兄さんは満足そうに笑うのだった。
「兄さん、兄さんっ!!・・・あん、あ、あ、いい、いいよ!」
 ふわっとする浮遊感覚が訪れてくる。
・・・まだ幼いのに・・・私って子供なのに、兄さんに・・・あ、あ、あ、あ、あ、はあっ!!・・・
 もう大人の女のように感じ、振舞ってしまう私がそこにいた。

 結局、兄さんは子供の時の私との約束を守ってくれなかった。0074年、密かにサイド3に入国してしまったのである。
 例のメイドが手首を切って自殺を図ったのを、今でも鮮明に覚えている。
・・・ずっと私のことを見ててくれる?どこか遠くへ行ったりしない?・・・
 しょせん、守られるはずもない約束だった。

 グリプス戦役が終わった。消息筋の話では、エウーゴが何とかティターンズに辛勝したということだった。コロニーレーザーが発射された時、確かにいわれのない悪寒を感じていた。
 地球連邦軍は疲弊しているようだった。何しろグリプス戦役は連邦軍同士の内戦、と言ってもよかったからだ。
 テレビニュースに写ったアーガマ艦長のブライト・ノアのやつれた顔が、その苦労を物語っているようだった。ブライトは兄さんと共同で戦っていた、ということだった。
・・・昔、1年戦争の時、殺し合った者達が一緒に戦い、また仲間が殺し合う、なんて・・・
 結局、兄、シャア・アズナブルは、行方不明となっているようだった。
・・・兄さん・・・もう、死んで!・・・ゆっくり休んでよ・・・
 しかし、私はどうしても兄さんが死んだとは思えなかった。

 そしてアクシズのネオジオンがやってきた。
・・・ジオン、か・・・
 私は呟いた。
・・・何度でも蘇るバケモノだわ・・・父の理想は形を変えて、何千人、何万人もの人を殺している・・・

 0088年の秋、北アフリカに外せない出張の用事ができた。ジョブは危険だからやめろ、と私を引き留めたが、構わずに行った。付近にはまだ戦火があったが、何とか仕事に差し支えはなかった。
 そこで1人の少女を拾ったのだ。名をリィナ・アーシタと言った。話を聞くと、ブライトのアーガマに乗り込んでいたそうで、兄と別れてネオジオンに拉致されたが、ダカールでの戦いでようやく脱出したものの、瀕死の重傷を負っていた。現地の人に応急手当を受け、避難民キャンプに収容されていたのだ。
 ブライトがらみ、と聞いて私には放っておけなかった。お節介な私は、兄と別れて、という言葉に刺激されたのかもしれなかった。
 ダブリンへのコロニー落下の後、私は欧州に戻った。具合のよくなったリィナを連れ、治療に専念させるためだった。しばらくしたら宇宙へ上ろう、とも考えていた。
 年が明けた。0089年の1月、月面で私はブライトと数年振りに再会した。奇跡的に回復したリィナを伴ってである。兄さんのことを語るブライトに私は言ったものだ。
「兄は鬼っ子だから・・・」
 ブライトは何も言わなかった。

 ネオジオン抗争(ハマーン戦争)が終結した。兄との再会を喜ぶリィナを見て、少し私は羨ましかった。私も兄さんとあんな風に会えたらいいのに、と思っていた。

 数年立った。
 私も身体に少し肉がついて、無理のできない年齢になった。
 私はジョブとつかず離れずで、たまにはケンカもし、時には愛し合ったりしていた。
 そして0092年の年末・・・私は再び亡霊のように蘇った兄の消息を知ったのだ。
 連邦は、宇宙難民の収容施設としてサイド5のスウィート・ウォーターを提供したのだが、兄さん・・・そう、あのシャア・アズナブルが統率する新生ネオジオンが地球連邦政府に対し攻撃を示唆し、スウィート・ウォーターを占拠したのである。

「セ、セイラさん・・・これ、これって!」
 シャワーを浴びたばかりのジョブが、水を滴らす髪を拭く手を止めていた。
「そう・・・シャアよ。亡霊のように蘇って、演説してるの。」
「今から演説するの?」
「そうよ。」
 私はテレビ画面を食い入るように見ていた。年相応に相応しく年齢を重ねていた兄は、熱弁を振るっていた。

『このコロニー、スウィート・ウォーターは密閉型とオ-プン型をつなぎ合わせて建造された、極めて不安定な物である。それも、過去の宇宙戦争でうまれた難民のために、急遽建造されたものだからだ。しかも、地球連邦政府が、難民に対して行なった政策はここまでで、入れ物さえ造ればよしとして、彼等は地球に引きこもり、我々に、地球を解放する事はなかったのである。私の父、ジオン・ダイクンが宇宙移民史にすなわち、スペースノイドの自治権を地球に要求した時、父ジオンは、ザビ家に暗殺された。そして、そのザビ家一党は、ジオン公国をかたり、地球に、独立戦争を仕掛けたのである。その結果は、諸君らが知っている通り、ザビ家の敗北に終わった。それはいい。しかし、その結果、地球連邦政府は増長し、連邦軍の内部は腐敗し、ティターンズのような反地球連邦政府運動を生み、ザビ家の残党をかたるハマーンの跳梁ともなった。これが、難民を生んだ歴史である。』

・・・ハマーンだって、兄さんの愛人だったっていうじゃない・・・しかも兄さんが、摂政に推薦したっていうじゃない!嘘つき!!、兄さんの嘘つき!・・・

『ここに至って私は、人類が今後、絶対に戦争を繰り返さない様にすべきだと確信したのである。それが、アクシズを地球に落とす作戦の真の目的である。これによって、地球圏の戦争の源である地球に居続ける人々を粛清する。』

・・・これ以上、人が殺しあって、どうするの?小惑星を落として、地球に引力を引かれる人を殺して、何になるの?・・・兄さんのエゴよ、それはっ!・・・

『諸君、自らの道を開くため、難民のための政治を手に入れるために。後一息、諸君らの力を私に貸していただきたい。そして私は、父ジオンのもとに召されるであろう。』

・・・バカッ、勝手に召されて、独りで死んじゃえ!!・・・

 背後からジョブが抱きしめてきた。これでもジョブは私を慰めてくれているのだ。
「ジョブ・・・」
 ジョブの胸で泣いた。そして何度となくキスをせがむ。
 無言でジョブが私のバスローブを剥ぎ取っていく。私はその荒々しさを望んでいた。激しく、乱暴に、そして道具のように扱われることを心から望んでいた。
 子供のように軽々とベッドまで連れて行かれた。
・・・もう、言葉なんていらない、このまま、私を犯して、何も言わないで!・・・
 ジョブの青い瞳の中に私がいた。
・・・欲情してる、ああ、身体が熱い、犯されたい、早く、早く、ね、お願い!・・・
 愛撫などいらなかった。深い深い所にある私の女の性が、ジョブの雄々しさを待ちきれなくなっている。
 ジョブの腰をぎゅっと引き寄せた。彼も私の意図に気づいていた。
「あ・・・ん、ん、あっ!」
 秘唇の入口に鋼鉄のようなものが触れている。その存在が私の欲情を増幅させていた。
「ジョブ、ね、待てないわ、ね、ね、お願いよう、早く、私を、ね、も、もう、早く、犯してよ!」
 一気に挿入された。途端に体内奥深く貫かれて、私は絶叫していた。
「ああっ、あ、あ、あ、あ、い、いいっ、あん、いい、あ、もっと!!」
 両足を逞しい腰に巻きつけ、私は喘いだ。より深い挿入を求め、自ら腰を揺らしていく。
 にゅぷ、にゅぷ、ぱぁんという派手な音が私の快感を増幅させていた。
・・・もっと手荒にして、乱暴にして、痛くして、忘れさせて、そうすべてを、今だけ、忘れさせて、お願いよう、ジョブ!!・・・
 脳天にまで甘美な雷が響いている。頭の先からつま先のてっぺんまで、私は全身で固い固いジョブのペニスを感じている。
「いい、いい、ああん、あ、あっ、もう、いく、いくのっ!」
 何を叫んでいるのかも判らないほどの悦楽。身体が蕩けるような感覚。もう痺れちゃうくらい感じている。
 ジョブの動きが早くなっていた。
「セ、セイラさんっ!」
「ん、ん、ん、んっ、いい、あ、また、また、あ、ああん、いい、いいっ、あっ、いく!!」
 ジョブの姿が光に溶けた。代りに突然、兄さんが現れて、私を犯していた。
・・・に、兄さん?・・・嬉しい、ああ、兄さん、兄さん、私を抱いてよ、お願いだから、抱いてよ!・・アルティシアを犯してよ・・・
 妄想にむせび泣く私は、もう何回目かの絶頂を迎えていた。
「いく、いく、いい、いいよ、あん、いいっ!!」

 小惑星5thルナが連邦軍本部所在地チベットのラサに激突した。もう私もジョブも、宇宙のどこへも行こうとはしなかった。
 アクシズが落ちてしまえば、地球は氷河期に突入するそうだ。今更どこへ逃げても助かる訳でもない。ほとんどの人が、死の恐怖と戦いながら普段の暮らしをしていた。
 私は天空を見つめた。アクシズの不吉な姿が空に浮かんでいる。
 ブライトが率いるロンド・ベルが、新生ネオジオンと戦っていた。そしてあのアムロもロンド・ベルに参加しているようだった。かつて私を抱いた2人が、この身体を抱いた2人が死闘を繰り広げていた。
・・・お願い、アムロ!!兄を殺してっ!!・・・哀れな兄の魂を解放してやって!・・・楽にして上げてっ!・・・
 不意に戦っている2人の声が聞こえたような気がした。

「やめろ!」
「やってみなければ分らん!貴様ほど急ぎすぎもしなければ、人類に絶望もしちゃいない!」
「そうか、この温かさを持った人間が、地球さえ破壊するんだ。それを判るんだよ、アムロ!」

 兄さんがアムロに叫んでいた。
・・・兄さん・・・やめて、もうやめて!!・・・アムロ、兄さんを殺してえっ!・・・

「ララア・スンは、私の母になってくれるかも知れなかった女性だ!」
「お母さん?ララアが・・・うわっ!」

 それきり2人の声が聞こえてこなかった。

・・・兄さん・・・お母さんが欲しかったの?・・・

 天空のアクシズの岩塊が、大きく壊されていくのが見えている。
 私は2人の死を感じながら泣いていた。いつまでも泣いていた。
 後ろでジョブがまたコーヒーを沸かそうとしていた。

(了)

 

亭主後述……

2001年最初の新作です。これでようやくファースト放映以来、ガンダムの呪縛から離れられた気がします。
0080、0083は余裕持って見ようっと。(もう見ました!)
しかし、先のハマーン様もそうですが、最近やらしくないですね。いかんいかん。
とにかく2001年もよろしくお願いしま~す。

ええっとリンク先のkesoさんからステキな絵を頂きました。
「後ろからされる金髪さん」……すんごいえっちです。
よって、常々足りないと思っていたえっちシーンを増幅しました!
kesoさん、ありがとうございました。皆さんも是非遊びに行って下さい。