パプティマス様、お慕い申し上げます ~機動戦士Zガンダム~

「サラ・・・」
 ああ、この眼だ、この眼差し。
 宇宙の深遠を垣間見てきた者だけが、持つこの瞳。ああ、吸い込まれそうになる。
 すべてを見通すような深い眼が、今、私だけを見つめていた。

 私は、ふらふらと磁石に吸い寄せられる砂鉄のごとく、パプティマス様に歩み寄った。
 そしてその胸に抱かれた。

 ああ、パプティマス様!!パプティマス様っ!私、私!!

 たくましい胸に抱かれて、私は安堵した。

 ここが私の居場所、ここだけが私の居場所なんだ。離れたくない、パプティマス様、どうか私を、私を離さないでいて。

 顔を上げて、パプティマス様の顔を見た。
 笑みを浮かべた、その顔を見ているだけで安心だった。

 好き、好き、好き、パプティマス様、大好きです!

 心の中でそう私は訴えた。本当は声を大にして言いたいけれど、そううまくはいかない。言えない。
 その代わりにパプティマス様にひし、と抱きついた。暖かい温もりがまた私を包んでくれるのだった。
「サラは甘えん坊だな。」
 この声。この響き。とっても好きだ、パプティマス様にサラ、そう呼んでもらえる瞬間が好きだ。
「よくも無事に帰ってきた。レコアとお前の身を案じていたところだ。」

 やめて、パプティマス様、レコアのことなんか、言わないで。

 指が頬に触れた。そのまま、持ち上げられて、また深い瞳を直視させられた。
 あっ、というまもなく、唇が重ねられていた。初めての経験に私は震えた。
 唇を離す音が聞こえ、
「キスは初めてか?」
 と尋ねられた。
 恥ずかしくなって、また胸に顔を埋めようとすると、今度は頬に唇が触れていた。
「ああっ・・・」
 頬から耳を、パプティマス様の唇が這ってきた。足から力が抜けそうになり、立てなくなっていく。
 パプティマス様は私の片腕を掴んで、引っ張ったまま、私の肌を吸うのだった。
「そ、そんな・・・あんっ・・・いや・・・です・・・恥ずかしいです、パプティマス様・・・」
 最後まで言えずにまたキスをされて、私は溶けてしまいそうになる。舌が唇を割って口の中に侵入していた。
「ん・・・んっ・・・ん、ん、ん・・・」

 たまらない。キス、キス、キス、甘いキス。
 首に両手を廻し、ぶら下がったような格好で私の方から求めていく。
 判らない、どうしていいか、判らない。この後、どうするのか、どうすべきなのか。
 ティターンズはこんなこと、戦闘以外のことを私に教えてくれはしなかった。ジェリド中尉だって、教えてくれなかったもの、こんな気持ちのこと。
 だけど、人間なら誰でも知っている。遺伝子が受け継いでいるのだ、この次なすべきことを。

「サラ・・・服を脱がしてよいか。」
「はい・・・い、いえ、自分でできます。」
 慌てて否定する。真っ赤になりながら、いったんパプティマス様から離れると、
「あの・・・お願いです・・・」
「照明か?」
「は、はい。」
 私の気持ちはすべてお見通しだった。
 パプティマス様は明かりを絞って再び私を抱き寄せた。そのまま、私の首筋に歯を軽く立てた。
「っ・・・ん・・・」
 私の胸が掴まれた。首筋へのキスと膨らみを掴まれるという2重の攻撃に声が洩れていた。
「あの、じ、自分で・・・脱ぎますから・・・」
 と訴えても、パプティマス様の私の身体を探る手は決して止まらなかった。
 流れるような手つきで、制服のホック、ボタン、次々と外されていく。戸惑う間もなく、ただ私は、まるで水の中をたゆたうまま。
「パ、パプティマス様、さ、様~」
 私の声から、甘えの感情を排除することができなかった。もう演技なのか、本気なのか、それすらも判りはしない。
 不安な気持ちを否定することはできはしない。
 だけど私の身体が、パプティマス様のためにお役に立てるなら、構いはしない、この身を捧ごう。
「肌が白いのだな。」
 何も言えず、私はショーツ姿だけにされていった。パプティマス様はまだティターンズ制服を着ている。
 暗いとはいえ、自分だけ肌をさらされて、どうしようもなく恥ずかしくなっていた。
「いや、です、パプティマス様も・・・どうか・・・」
 シュッシュッ、無言で手際よくパプティマス様は脱いでいった。本当は手伝いたかったが、何も言い出せずにいた。
「こっちへこい、サラ。」
「はい・・・」
 個室にしつらえられたベッドの近くで、私達はまた抱き合った。
 隠していた手がどけられてしまい、私の胸にパプティマス様の唇がそっと触れた。
「ん!んっ!あ、ああ!」
 全神経が、パプティマス様の触れた場所に集中していく。吸い上げる唇、舌、優しく揉む手のひら、ああ、恥ずかしい、溶けてしまいたいほどに恥ずかしい。
 鳥肌が立っているような気がする。恐怖感や嫌悪感ではない、そう・・・畏怖感とでも言うのか。
 これから、私はパプティマス様に抱かれるのだ。
 怖いことなんか、ない。恐くない。
 不意に、カミーユに捕まった時に言われた言葉を思い出した。
『そうまでして、シロッコに抱かれたいのか!』
 図らずもカツを利用しようとした時に、Zガンダムのコクピットでカミーユ・ビダンにそう言われた。
 
 当たってる。その通りだ。
 誰に何と言われようが、どうされようが、私は、パプティマス様に抱かれたいのだ、愛されたいのだ。
 そのためなら、死んでもいい。犬になれ、そう言われるのなら犬になってやる。

 この身は、パプティマス・シロッコ様のためだけにあるのだ。

「明日はハマーンと会うというのに、私はサラの肌に溺れてしまいそうだ。」
「パプティマス様・・・」
「どうしてくれる、サラ、お前の責任は重いぞ。」
「そ、そんな・・・」
 パプティマス様にすがりつき、私はその胸にただ顔を埋めた。抱き上げられ、何もできないうちにベッドへ横たえられていった。
「ハ、ハマーンにはどうかご注意を・・・」
 パプティマス様は笑った。
「判っている、あの女は危険だ。ザビ家再興のことしか考えていない、哀れな女だ。」

 私もその哀れな女の1人です。パプティマス様のことだけを考えている、1人の女の子なのです。

「サラはハマーンのことなど考えなくていい。」
「パ、パプティマス様・・・」
 私からくちづけを求め、唇を吸った。舌を絡めせることによって、更に身体に甘い疼きに似た炎が走っているような気がした。
 乳首が鋭敏になって尖っている。それを指で刺激されると、もういけなかった。
「あっ、ああ・・・あっ、やぁ・・・」
 指だけではなく、口で吸われた。ちゅぽん、そんな音がして、いったんパプティマス様は唇から離し、また含んだ。
 私の反応を楽しんでいるのだ、見られているのだ、観察されているのだ、そう思うと、とてつもなく恥ずかしかった。
「あ・・・ああん!きゃうん!」
 あんまり見ないで下さい、そう言いかけて、私は変な声で喘いでしまっていた。
 指が私の股間に触れていたのだ。優しく大切な場所を愛でるように、指が探っていた。
「痛くはないのか、サラ?」
「は、はい・・・」
 痛くはないが、ただこの身が焼けるように恥ずかしく、このまま消えてしまいたい。触れ合っている肌が熱いのだ。
「ここ、熱いぞ。温泉が吹き出ているようだ。」
「ああっ、恥ずかしいです・・・」
 パプティマス様にからかわれて、思わず両手を手で隠してしまった。
「あ、ああ、あっ、ああ~!」
 眼をつぶっている間に指の動きが加速して、声が洩れてしまった。気持ちいいというのか、妙な感覚が、身体の奥底から湧き起こったのだ。
 身体の上のパプティマス様が移動を開始し、眼を開けた途端、
「あ、そこは、汚いです、やめて・・・あ、あ、あ、パ、パプティマス様、やめて・・・」
「女の身体には、汚いところなどないのだよ、サラ。」
 そう言って、パプティマス様の舌が大切なところを這うのだった。
 ザラザラする舌の感触、内臓が舐め取られていくような感じ、身体の奥底から立ち昇る妙な感覚と震え。

 ああ、私、私、おかしく・・・おかしく・・・なって・・・ああ~!!

「パプティマス様!!」
 パプティマス様の頭を足で挟んでいた。ギュッと強く押さえていた。
 変な感覚から逃げようとしても、パプティマス様は私を捕らえて離さない、逃がさない。
「あ!あ!あ!!」
 身体の力が逃げていく。正確に言うと、上半身は力のこもったまま、下半身からだけ力が逃げ出していた。
「ああ!だ、だめで・・・す・・・ああっ!」
 目の前にビームの閃光のような光が走り、何かがこみ上げ爆発していった。途端に身体中からすべてが抜け出て、ベッドの上に私は沈んでいった。
「サラ、大丈夫か?」
「あ・・・あいっ・・・」
 脱力感のせいか、発音が不明瞭になっている。大丈夫ですと言いかけたが、パプティマス様は余計にしゃべらなくてもいいと私を制してくれた。
 ぼんやりとした私にキス。気づいて慌てて吸い返そうとした時には、パプティマス様はもう離れていた。
「いくぞ。」
「あ、あい・・・」
 本当は何にいくのか、まったく判っていなかった。先程の水中をたゆたうような感じに包まれ、私はただ心地いい疲労感の中を漂っていたから。
 足が広げられた。またパプティマス様の顔が近づき、それに手を伸ばして頬に触れた。
「ふふ、可愛いな。」
「あ、ありがとうございま・・・!!」
 最後まで言えず、私は絶句した。固い物が私の大切な場所に触れたような気がした瞬間、激痛が身体を走り抜けていた。
 いや、走り抜けていない、まだずっと痛い。
「ん!!あ、あ、い・・・痛・・・あ、あ、ああ!!」
「力を抜くんだ。」
「そう言われても・・・あ、あ、ああ!」

 だめ、痛い、いった~い、痛いよう、ああ、あっ!!

 身体がバラバラになったよう。銃で撃たれたよう。
 熱くて、熱くって、痛い、壊れそう、壊れる、壊れる、ああ、壊れちゃう~!
 許して、パプティマス様、ど、どうか、聞き分けのないサラ・ザビアロフを、お許し下さい!

 身体を密着させて、パプティマス様がギシギシ動き出していた。私の上で、動いていた。
「ん!・・・ああっ!!」
 頭を揺さぶられているようだった。痛いのに、切り裂かれてるかのように痛いのに、それでも私は目の前のパプティマス様に抱きついていく。
 必死になって抱きしめていないと、また抱きしめられていないと、私自身がどこか別の世界に吹き飛んでしまいそうだった。
「あっ、うう!・・・うあっ!」
 私の声に動揺したのか、動きが止まった。瞼をうっすら開けると、頭上に心配そうなパプティマス様の顔が見えた。
「だ、大丈夫です、続けて下さい・・・」
「・・・」
 短い沈黙の後、再びパプティマス様が動き出した。
 また痛みがぶり返し、唇を噛んで堪えた。苦痛の声を上げないよう一生懸命我慢していく。

 だって、心配をかけたくないから。このまま、抱かれていたいから。
 私は、今、パプティマス様と1つになってる。肌を合わせて一体化している。
 パプティマス様の女になったのだ、痛くても平気、平気、あ、あ、へいき、へいきだもの。

 腿の内側を持たれて、足がパプティマス様の胴体を挟んだ。ものすごい淫らな格好で、私は抱かれてる。

 恥ずかしいけど、みっともないけど、痛くて涙が出ちゃうけれど、平気。
 ああ、パプティマス様、サラは幸せなのです、あなたに抱かれて。

 急に熱いものがこみ上げた。押さえきれないほどの情熱と情念が、自分でも信じられないくらいのそれが、身体中からあふれていく。
 身体が揺すられていくうち、痛みはやや収まり、それと同時に熱いものを押さえきれなくなっていた。あっと思った時には、もう遅い。熱いしずくが頬に流れた。つーっと伝わり、首筋に触れ、そして落ちていった。
 私は泣いていた。どうしてか、涙があふれるのが止められなかったのだ。
 女になったのが嬉しいのか、パプティマス様に抱かれて嬉しいのか、苦痛のせいなのか。きっと全部なんだろう。全部の理由で泣いているのだろうと思った。
「泣いているのか?」
「い、いえ、泣いてなんかおりません。」
 パプティマス様は、そんな強がりを言う私を見て微笑んだ。

『そうまでして、シロッコに抱かれたいのか!』
 またカミーユに言われた言葉が甦った。

 もう私は抱かれてる、抱かれた、パプティマス様のものになったんだ。
 カツ・・・カツが知ったらどんな顔をするだろう?
 ごめんなさい、カツ。あなたの好意はとっても嬉しいけど、私はパプティマス様のもの。あなたを受け入れること、できそうにもないわ。

「女は・・・」
「?・・・え?」
「女は、男の腕の中でも違う男のことを考えられるとは、よくも言ったものだ。」
「パ、パプティマス様?」
 時折見せる怖い顔と、すべてを見透かされそうな瞳に、私は震えた。
「今、サラは誰かのことを考えていたな・・・エウーゴのヤツか?」
 首を振った。ウソをついたのだ。
「いいえ、決して!」
「・・・すまない、ジェラシーという俗な感情が私にもあるのだな。木星にまで行っているというのに、私はダメな男だ。」
「パプティマス様・・・」
 今日何回その名前を呼んでいるのだろう。私こそ、今抱かれているというのに、カツのことなんか思い出して、ダメな女だ。
 私はキスをせがんだ。パプティマス様はそれに応えてくれ、私達は舌を絡め、吸い合った。
 そのうちにまた身体の中から激情がこみ上げ、首に手を回した。細いながらも筋肉質のパプティマス様の身体が動き始め、痛みよりわずかにそれを上回る快感がやってきていた。
「あん、あん、あ、あ、パプ・・・ティマス・・・さ・・・ま・・・」
 顎、首筋、肩、胸、そこら中にキスの雨が注がれていく。
 全神経、すべての肌がぬくもりを感じ、昂ぶっていく。

 ああ、私は、私は、私はっ!!

「パプティマス様、大好きですっ!!お慕い申し上げています!!」
 体内を突かれて、私は狂ったように叫んだ。私がぐずぐずに溶けていくような錯覚を感じながら、絶叫をしていた。
 もうカミーユもカツのことも、頭からきれいさっぱり消えうせていた。どうしようもない幸福感と高揚感に包まれ、世界が白い光に覆われていった。

「先にブリッジに上がっているぞ。」
 制服に身を包んだパプティマス様は、そう言って部屋を出ていった。頬にキスを残して出ていってしまった。
 身を起こして見送った私は、シーツを覗いた。私のしるしが、パプティマス様と愛し合ったまぎれもない証拠が、そこにあった。
 撫でてみた。かすかに湿った感触が指につく。
 私はそれに指を馴染ませながら、幸福感と充実感を感じていた。全身が震えるのを押さえられなかった。
 きっと、人生で今が1番幸せなんだ、そんな気がした。戦争中でありながら、そう思った。

 股間に何か丸太のようなものを挟んだような錯覚に戸惑いながら、私は自然と歌を口ずさんでいた。

(了)

 

えろぺぐさんの70万ヒットキリ番GETリクエスト、Zガンダムのサラ・ザビアロフの処女喪失モノです。

 

ハンバーガーショップ時代を書こうかな、そう思ったのですが、想像力が働かなかったためにおとなしくシロッコにしました。

 

ハーフムーンラブとか見てもヴァージンっぽいし。シロッコを巡って、レコアとの三角関係(笑)を見ててもそう思うし。

 

ハマーン様と会うシロッコ(要するにジャミトフ暗殺の回)の前夜、そういう設定でございます。

 

最近は痛い系が苦手ですし、初体験モノは不得手ですが、いかがでしょうか。

 

何よりも、えろぺぐさんに喜んで頂けたら、こんなに嬉しいことはないのです。(アムロ風に)

 

 

サラ、2回目の鑑賞で好きになりました。第1印象だけで接したらいけない、そういう教訓を得たのであります。