麗しのナディア ~ふしぎの海のナディア~

 

 親愛なるカトリーヌ。
 僕は元気。いつも通り、魚釣って、野菜や果物など食べれそうな物をリンカーン島で探す毎日なんだけど。
 ここは南の島だから、暑くて堪らないけど、2人と1匹の仲間がいるから、平気。
 男の子の僕が、がんばらなくっちゃね。

 でもやっぱり僕、本当はいつも通りじゃないんだ。ナディアやマリーにこんなこと言えない、言えやしない。
 カトリーヌ、君だから言えるんだ!

 ごめん、僕、興奮してる。あ、ナディアが戻ってきた、また明日、おやすみ、カトリーヌ。

 親愛なるカトリーヌ。
 今日はタコが釣れたよ!悪魔の魚なんていって、フランスでも忌み嫌われてるけど、茹でるとおいしいんだよ。マリーもキングも、おいしいおいしいって食べてくれる。
 ナディアも食べればいいのになあ。
 神様、どうかナディアに好き嫌いがなくなりますように。
 また明日、おやすみ、カトリーヌ。

 親愛なるカトリーヌ。
 大変なことを忘れていたよ。おととい、カトリーヌに告白するって誓っておきながら、昨夜はすっかり忘れちゃった。神様、こんな僕をお許し下さい。
 で、カトリーヌ、告白の続きをするよ。こんなこと、神父さんにも告解できないから。あ、どっちにしろ神父さんはこの島にはいないか。
 とにかく、君の胸にしまっといておくれ。

 実はさ、僕、病気なんだ。
 風邪とか熱病とかじゃないと思う。ひょっとしたらノイローゼかもしれない。
 ネモ船長の百科事典を見ても載ってないんだ、こんな風土病。
 どうしたらいいと思う?

 具体的な症状を述べるね。
 体温、平常よりやや高め、微熱状態。
 脈拍、平常より早い。
 身体の1部が極度に肥大化、及び膨張。

 ね、判る?僕、異常でしょ?しかもほぼ慢性的に起きるんだ、この病気。一過性のものだったらいいんだけど。
 ああ、神様、お助け下さい。
 また明日、お休み、カトリーヌ。

 親愛なるカトリーヌ。
 病気について、重要なことが判明したんだ。報告するね。
 ナディアなんだ、ナディアが原因らしい。
 ウソじゃないよ、本当だよ。
 ナディアが近くにいると、僕はそうなっちゃうらしい。
 香水とか使ってないのに、いい匂いなんだ。
 胸元をチラリと盗み見て、あの隆起を見ちゃうとだめなんだ。
 僕の発明のシャワーをナディアが浴びてる時、妄想しちゃうとだめなんだ。
 心が苦しくなるんだ。それでもって、身体がいうことを聞かないくらい、膨張しちゃうんだ、大きくなるみたい。もう死んじゃいそうだよっ!
 固くて、熱くて、どうしようもないんだ。
 どうしたらいいのかな?
 カトリーヌ、どうか、この哀れな僕を助けてよ。お休みなさい。

 親愛なるカトリーヌ。
 今日は大事件が起きたんだよ。
 マリーが寝ついてから、遂にナディアに打ち明けてみたんだ、病気のこと。
 ナディアは僕に言ったよ、
「患部を見せてごらんなさい。」
 って。
 恥ずかしいけど病気だったから、そうも言ってられなくって、えいっと勇気を出してズボンを脱いだんだ。
 そしたら、ナディアが、
「いや~変態!ドスケベ!!」
 なんて、真っ赤な顔して大きな声出すから、僕慌てちゃった。
 だって、僕は病気なんだよ!
 それをナディアに一生懸命、説明したんだ。
 そうしたら手のひらで顔を隠したナディアが、指の隙間から僕の腫れ上がった部分を恐る恐る見てた。
 息を呑む音と、ごくんっていう生唾を呑む音が、交互に聞こえたよ。
「・・・うわあ・・・すっご~い・・・」
 僕はついナディアの顔を観察しちゃった。首筋から頬まで赤くなってる。目は心なしか潤んでいる。半開きになった唇から、口の周りが渇いてしょうがないのか、小さい舌がぺろんと覗いては消えた。
 びくん、無意識のうちに、僕の股間のそれが跳ねて、さっきより更に大きくなった。
 ナディアの顔が後ろに下がった。ひっと悲鳴にならない悲鳴を咽喉で押し殺して、コブシで口元を隠していた。
 でもおかしいことに、目は股間の大きくなったそれ・・・(それって書きにくいな、便宜上サヤエンドウにしとくね)から、絶対離れないんだ。
「ナディア・・・ねえ、ナディア・・・」
 僕の訴えにも、どこかうわの空なナディア。
「ナディア!ナディア!!」
「えっ・・・あ・・・ごめん、何?」
 それでもまだ、サヤエンドウを見続けている。
「僕のこれ、病気かな?」
 破傷風、と言いかけて自分で怖くなってやめた。この病気は絶対に助からないって聞いてたからなんだ。
 もしノーチラス号があれば、治療法がなんかあるはずなんだけど。
 とにかく破傷風にしろ他の病気にしろ、僕は絶望していた。悲しいはずなのに、サヤエンドウは見事なまでにそそり立っているのが、ミジメだ。
「違うわ・・・病気じゃないと思う・・・」
 上ずった声でナディアは言った。囁くように小さい声だ。
 涙腺が弛んで、もうちょっとで泣き出しそうだった僕は、
「びょ、病気じゃない?知ってるの、ナディア!?」
 神様にすがりつくように僕は言った。思わず、ナディアに近づこうとすると、彼女はキャッと叫んで、また両手で顔を隠した。今度は覗き見さえしていない。
「そんなの、むき出しにしたまんま、近寄らないで!!」
 構うものか。こちとら、命が懸かってるんだ。真剣なんだ。
 しゃがみ込んでいるナディアの肩を僕は掴み、
「知ってるなら、教えてよ!ナディアったらぁ!」
「・・・知らない知らない・・・」
 ナディアが顔を隠したまま、かぶりを切る。
「僕、本当は病気なんでしょう!命に関わる病気なんでしょう!だからナディアは僕に言えないんだ、そうなんだ!!」
 途端にナディアは手を顔から離して、僕の手を振り切った。そして眉を逆立てて、
「違うったら、病気じゃないったら!!」
「で、で、でもこんなに腫れちゃったよ!病気じゃないんだったら、何なの、この現象は!?」
「・・・ネモ船長の百科事典読んだ?」
 うんと僕はうなづいた。
「全部読んだの!?」
 首を横に振る。確かに人体や病気など医学についての巻があったが、緊急時の外傷の手当てとか熱帯風土病の対応とか、そんなところしか読んでいない。とても全部読みきれるほどの量ではないのだ。
 医学よりか、自然科学や機械についての巻ばかり読み耽っていたんだ。
「ジャン、それはね、性徴期特有の・・・」
「性徴期?」
 僕が聞き返すと、ナディアは本当に耳まで真っ赤にして、
「後は事典を読みなさいっ!私もう寝るからっ!」
 って言って出て行っちゃった。

 カトリーヌ、大事件だろ?
 今日はもう遅いから、事典を読むのは明日にするよ。
 たくさん書いて、眠たくなっちゃった。お休み、カトリーヌ。

 親愛なるカトリーヌ。
 信じられない。すごい。知らなかった。
 何のことか、自分でも判らないから、順序立てて書いてみるね。
 夕べ、夢見たんだ。
 最初はグランディスさんだった。キャンプした時、ネモ船長に見せるため、水着とは名ばかりの小さな布着れを着てたじゃない?
 あれであの人、僕の側にいるんだ。ぶるんぶるんって、すっごくおっぱいが揺れてた。
 で、次はエレクトラさん。エレクトラさんは、ノーチラス号の甲板の上で、何故か僕に数学を教えてくれているんだ。
 やっぱり、グランディスさんみたいな水着を着てて、僕はもう勉強どころじゃないんだ。それより、サヤエンドウが痛くって痛くって。
 深~い胸元が気になって、代数の数式が頭に入らないんだよ。
 最後はナディアに変わったんだ。
 しかもナディアは裸。真っ裸。それで浜辺や渚を走ってるんだ。僕が追いかけると、笑って逃げていく。
 がんばって走っても、全然追いつかない。僕が、
「ナディア!待ってよ!!」
 って叫んでも、待ってもくれやしないんだ。

 そこで目が覚めた。人の気配を感じて、ガバッて起きたよ。
 ビックリしたよ~傍らには心配そうなナディアがいたんだもん。
「大丈夫?うなされてたわよ。」
 暗い中、ナディアが言ってくれた。僕は何だか急に彼女を失っちゃうんじゃないか、って思って引き寄せたんだ。
「ちょ、ちょっとジャン!」
 正直、ナディアは戸惑ってたと思う。僕も寝ぼけてたと思うんだけど、ぎゅって抱きしめたんだよ。
「ナディア、行かないで、どこにも行かないで!」
 うわごとのように繰り返したよ。そしたらナディアは、僕が怖い夢でも見たと思ったのか、急に力を抜いて、空いてる手で僕の髪の毛を撫でてくれたんだ。
「どこにも行かないわよ、私はここにいるから。」
 ナディアは、まるでお母さんみたいに優しく言ってくれた。とってもいい匂いと、しなやかで柔らかい身体の感じに、僕はうっとりしちゃった。
 そしたら、急にサヤエンドウが痛くなった。すっごく痛いんだ。
「あ・・・」
 僕の頭と背中を撫でていてくれたナディアが、それに気がついたように声を上げた。同時に身体に力が入って、僕を押しのけた。
「もう、ジャンのえっち!ドスケベ!!この変態!!」
 またえっち、ドスケベ、変態と罵られてしまった。どうしてだろう?僕は病気だって言うのに。
「どうして、そんなひどいこと言うのさ!」
「だって、ジャンのが・・・」
「僕は病気なんだよ!!」
「あの・・・違うのよ、ジャン!」
 それでも言いにくそうに、ナディアは口を開いた。
「それ、違うの。病気なんかじゃないの。」
「へっ?」
 これが病気でなければ、何だと言うのだ。
「さっき言ったでしょ、性徴期だって。」
 まだ事典を読んでないことを、ナディアに言ったよ。
「私もうまく言えないけど、ジャンの身体が大人になった、ってことなの。大人の男の人は、みんなそうなるの。」
 カトリーヌ、大人はみんなこうなのかい?
 みんな、サヤエンドウが痛くなるのかい?サンソンもハンソンも?あのネモ船長も?!
「・・・そうなの?じゃ、この中には、何が詰まってるの?固くて固くて、すごいんだよ!?」
「赤ちゃんの素とか、血液とか・・・きゃっ、ジャン、何言わせるの!」
 枕が飛んできて、僕の顔に当たった。おかげで眼鏡が吹っ飛び、辺りが何も見えなくなった。
「眼鏡、眼鏡・・・」
 周りを手探りで探しちゃったよ。
「はい、これ・・・」
 ナディアが手を差し伸ばした先に、眼鏡があった。僕はそれを受け取って、
「ありがと、ナディア・・・でも、これ病気じゃないんだね、ああ、よかった・・・」
 僕は取りあえず安心した。病気じゃなければ、大丈夫だ。
 サヤエンドウはすくすく育ったまま、疼いてしょうがないけど、大人になったんだ、僕は、早く大人になりたかったから、ある種の満足感を感じていた。
「?」
 ナディアが僕の手を握って離さなかったんだ。何かじっとり汗で湿ったような手のひらに、僕はドキドキしてしまった。
「ナディア、どうしたの?」
 月明かりだけが差し込む暗がりの中、顔に暖かい息が掛かった。ナディアが突然顔を寄せてきたのだ。 
「・・・そこ、苦しいの?」
 かすれた声だった。妙に背中がゾクゾクしてしまったんだ。
 苦しくって、せつなくって、この気持ちは何だろう?おまけに、どうして壊れた蒸気機関みたいに、サヤエンドウが脈を打ってるんだろう?
 人間って不思議だ。
「う、うん・・・苦しくて・・・死にそうだよ・・・」
「や・・・あげ・・・うか?」
 よく聞き取れなかったんで、聞き返しちゃった。すると、怒ったような、拗ねたような顔で、
「私が・・・やってあげようか、って言ったの。何度も言わせないで、ジャンのバカ・・・」
 最後のバカには抑揚がなかった。
 僕の返事を待たずに、ナディアがにじり寄ってきた。同時に手が僕の太腿に触れたんだ。
 お尻の穴から頭のてっぺんまで、ビビビと電気が走ったような気がしたよ。
 ああ、カトリーヌ、いよいよ僕は臨終を迎えたのだ。神様がお迎えにいらっしゃったんだ。
 と思う間もなく、ナディアの手が、すばやくズボンを脱がして直立したままのサヤエンドウを握った。
「あ、ナ、ナディア!!」
「し~っ、マリーに聞こえないようにね。」
 柔らかい手がサヤエンドウを持っていた。手のひらが汗で湿っている。不思議と、握られた痛さより、気持ちいい方が勝っていた。
 ナディアが、真剣な眼差しでサヤエンドウを間近に見ている。その瞳には、若干の好奇心が宿っているみたい。
「・・・片手じゃ、持ちきれない・・・熱い・・・固い・・・」
 バラバラなことをうなされたように言っている。
「動かすわよ・・・」
 両手でわっかを作ったナディアの腕が上下する。僕のサヤエンドウの頭から分泌してた体液があふれて、ナディアの腕に伝わった。
 こす、こす、こす、
 ああ、ナディア、いい匂い!手が、な~んて柔らかいんだろ?!
 でもちょっと痛い。摩擦で、皮の部分が引っ張られて痛い。でもこれも治療法の1つだと思って、僕は黙っていた。
 突然、僕の身体の中を、未知の衝撃が駆け抜けたんだ。そう、石炭が燃えて蒸気機関を動かすように、シリンダーが壊れたように、体内の圧力が一気に高まった。
「あ、だめだよっ!だめだよ!!ああ、僕、爆発しちゃうよ!!もう、本当に爆発しちゃうっ!!」
 でも、ナディアは手を休めずに、サヤエンドウに刺激を与え続けた。
 両手でこすこす、額に皺を作って熱心にこすこす。
 そして、サヤエンドウの根元から先端まで衝撃が集まったかと思うと、僕は・・・爆発した。文字通り、大爆発したんだ。
「あ、ああっ、ああ!」
 鋭い快感で、サヤエンドウが破裂したかと思った。白くてつぶてのような不思議な半固形状の液体がサヤエンドウから射出されて、ナディアの顔面に直撃したんだ。
「きゃ!!」
 絹をつんざく悲鳴ってこういうことをいうんだ、僕はヘナヘナになりながらそう思ったよ。でも腰も膝もがくがくになって、僕はそのままベッドに沈んじゃった。
「何これ、最低!!ジャンのバカ!!」
 またバカって言われちゃった。
 頭を起こしてナディアを見ると、さっきの半固形状のモノが顔一面に貼りついていた。
 泣き出しそうな顔のまま、ナディアは必死になって、顔に付着したそれを拭い取ろうとしてる。
「いや~ん、臭くて汚~い・・・」
 そのまま泣き叫ぶようにして、外に走り出して行っちゃった。
 僕は、起き出してズボンを履いて追いかけたよ。腰が痺れてて、身体にも力が入らないんだけど、こういう時くらい、女の子の後を追いかけなくちゃいけないってこと、知ってるもん。
 外に行くと、暗い浜辺でナディアがうずくまっていた。
 ピチャピチャ、音がしてる。どうやら、海水で顔を洗ってるらしかった。
「ナ、ナディア・・・」
「・・・こっち、こないで!」
「ナディア・・・」
「早くあっち行って!」
「・・・その・・・ごめんよ、僕よく知らないんだ、怒らないで。」
「怒ってなんか、ない。」
 ウソだよ、その声、本気で怒ってるよ。

 カトリーヌ、ウソみたいな本当の話なんだけど、サヤエンドウの腫れがおさまったんだ。
 気になって、徹夜で、ネモ船長の百科事典の医学の箇所を読んだよ。
 そして判ったんだ。
 僕のあの腫れは、病気なんかじゃない。これは,第2次性徴期ってヤツなんだ。
 陰茎に血液が集中して、勃起状態になってたんだ、僕は。そして、外的要因による摩擦を加えられたことによって、精子を放出してしまったんだ。
 僕はもう精通、というものを知らず知らずのうちに経験していたんだ。大人になっていたんだ。
 肉体的に、という意味だけど。基本的には、世間知らずの子供のままだけどね。
 ああ、カトリーヌ、徹夜したからもうだめだ・・・お休み。

 親愛なるカトリーヌ。
 その・・・勃起したサヤエンドウって、1回くらい精子を出しただけじゃ、だめみたい。また大きくなっちゃった。
 痛い程じゃないけどね。

 翌朝、ナディアは普通にしてた。普通にふるまってたと思うよ。だって、マリーやキングの手前があるじゃない?
 でも、マリーのお昼寝の時間になると、僕が話しかけたらそっぽを向いて、聞こえないふりするんだ。
 これって、ひどくない?
 もう、悲しいから寝ちゃおうっと。お休み。

 親愛なるカトリーヌ。
 今日、ナディアと2人で島の中央部にある、林に行ったんだ。マリーとキングはお留守番。
 2人きりで、実はすごく緊張してたんだよ。おととい、あんなことがあったでしょ?
 不思議にも、ナディアはおとといのこと忘れちゃったみたい。
 野草の花を見つけては、きれい、とか、高い見晴らしのいいところに行けば、いい景色、そんなのばっかり。
 ったく、女心はワケ判んないよ。

 でさ、林に到着した頃、雲行きがにわかに怪しくなっちゃった。ゴロゴロって低い音が遠くにしたと思ってたら、いきなりピカッ!
 きゃ、ナディアが僕にしがみついてきた。
 そしたらザーッと雨が降ってきた。ドシャ振りの大雨。林の下にいても、ズブ濡れになってしまう。
 とりあえず、洞穴があったんで2人で入ったんだ。・・・ここだけの話、実はサヤエンドウが勃起してた。
 だって、またまたナディアからいい匂いするし、寄せた身体が熱くって、柔らかいし。雨で褐色の肌に、何て言うか・・・ドキッとさせられちゃうし。
 ああ、これだけで、僕、爆発しそう。
 ようやく、洞穴に入って雨を避けたんだけど、寒くってしょうがないんだ。
 ガタガタ震えていたら、ナディアも同じみたいで、
「ジャン、寒いの?」
「う、うん、かなり雨に濡れちゃったからね、ナディアは寒くない?」
「寒いの・・・」
 そこで2人で隣に座って、身体を温めることにしたんだけど・・・サヤエンドウが疼いっちゃって、しょうがない。
 ナディアにばれないように隠したつもりだけど、
「ジャン・・・」
「うん?なあに?」
 うわ、恐い顔で僕を睨んでる。
「また大きくなってるでしょ?」
「う・・・あ・・・うん。」
 正直に言うことにしたよ。隠すと、ろくなことにあった試しがないからね。 
「本当に男の人って、しょうがないんだから・・・」
 でもナディアがいけないんだよ、って言いかけてやめた。だって、こんなに側に密着できるのに、言ったら離れちゃうだろ?もったいないって思ったさ。
 その分、僕は思いきり息を吸い込んで、ナディアの香りを吸った。
 胸の底までしみたよ。柑橘類と麝香が混ざったような刺激的な匂いだった。
「・・・また、してあげようか?」
「え・・・?あ、いいよ、ナディアが汚れちゃうから、いい・・・」
 本当はしてもらいたいくせに、僕は強がりを言った。だけど、ナディアは僕の手を取ってこう言ったんだ。
「無理しないで・・・いいから・・・」
 結局、ナディアのなすがままに、僕はズボンを脱いじゃってた。恥ずかしいくらいに勃起したサヤエンドウが痛い。股間が突っ張って痛いのもあるし、露出させられて、彼女の視線が刺すようにサヤエンドウに注がれてるのも痛い。
 ナディアは、僕の足の間に入って、また両手でサヤエンドウをしっかりと握ってた。
 ふうと暖かい吐息が吹きかけられた。見ると、うわ、ナディアの顔がサヤエンドウの直前まで迫ってきてるんだ。彼女の眼差しは真剣じゃなかった。何かこう、恍惚状態というか、夢うつつというか。はっきりしなくって.でも、手はしっかり根元をこすっているんだ。
 こすこすこす、
「ううっ・・・」
 きょ、今日はまだ大丈夫だ。この間は初めてだったから、あっという間に出しちゃったけど、何とか平気みたいだ。
「ジャン、気持ちいい?」
 ああ、ナディア、そんなせつない瞳で言わないでよ。
「うん、気持ちいい・・・」
 しこしこしこ、
 うう、今日は全然痛くないよ。ああ、気持ちいい。
 でもどうしてナディアは、こんなにサヤエンドウの扱いが上手なんだろう?不思議だったよ。
「ああ、もうこんなに大きくなっちゃって・・・ジャンのえっち・・・」
 ナディアの悩ましい吐息が聞こえた。今度は、サヤエンドウをじっと触りながら見つめてる。
 と、思ってるうちに、はあ、とため息を吐いたかと思うと、驚いたことに、ナディアが頬ずりしてきたんだ。もう、僕はびっくり!
 サヤエンドウがさんざん僕の体液で汚れてるっていうのに、そんなことお構いなしだった。
 褐色の肌に、僕のサヤエンドウはなすりつけられた。何回も何回もナディアは顔を往復させて、その度に僕の体液は糸を引いて、粘っこく頬を汚していった。
 そしたら、頬で嬲られているうちに、また体内の圧力が高まってきて、破裂しそうになっちゃった。それをナディアに訴えたよ。
「ああ、ナディア!」
「出ちゃうの?ジャン、出しちゃうの?早く出して!!」
「だって、このままだったら、顔に掛かっちゃうよ!!」
 とか言ってると、出したいという内圧に対する限界阻止点を越えてしまった。
 恐ろしいばかりの奔流が身体の中を駆け巡り、サヤエンドウの先端に向けてまっしぐらなんだ。
「ナディア、ああ、ナディア、ごめん!!」
 サヤエンドウを握って離さなかったナディアは、予想だにしない行動に出た。口にすっぽり入れちゃったんだよ!
 僕が唖然としてる間もなく、奔流があっけなく僕の抵抗を打ち破り、ナディアの口向けて出て行った。
「あっ!あっ!」
 僕は呻き声を出しながら、何度なく放った。それをナディアは、目を開けて僕を見つめながら、口で受け取っていたんだ。 
「うう・・・くうっ・・・ん、ん、んっ!」
 ナディアが必死になって、僕の出した体液を受けている。眉をしかめて辛そう、でも絶対に僕から視線を外さないんだよ。その苦しそうな顔、とっても色っぽい。普段のナディアと違ってたよ。
 放ち終えると、うえ~っとナディアが呻いた。唇の端からトロ~リ、白いのが垂れてきて、顎を伝って地面に染み込んでいった。
「苦しかった・・・死ぬかと思った・・・出しすぎよ、ジャン!」
「ど、ど、どうして口でなんてしたの?」
「顔に引っ掛けられるより、マシだからよ・・・でもやっぱり、少し汚れちゃったかなァ・・・洗ってくるね。」
 言うなり、ナディアは洞窟の入口に行った。ズボンを上げて、ナディアの後を追いかけて行くと、
「あ、もう雨やんだわよ!」
「ホントだ。」
 ナディアの言う通り、雨が上がって太陽の光が眩しいくらいだった。
 ふと見ると、青い空に虹の橋が架かっていたよ。それに気を取られていたら、
「さっきのこと、マリーとキングにはナイショよ。」
 と、ナディアが意味ありげな笑みを浮かべて言った。

 ああ、カトリーヌ、ナディアが取った行動には説明を要すると思わないかい?
 実は帰りながら聞いてみたんだ。
 ナディアの告白はこうだった。サーカスにいただろ、彼女は。
 公演が終わって、真夜中、外を散歩してたんだって。そうしたら見たらしいよ。
 猛獣使いのおじさんと軽業の曲芸をするきれいなお姉さんが、してるのを。おじさんは檻にもたれて、お姉さんが手や口でしてたんだって。
 子供のナディアはどきどきしながら覗いてたんだって。
 そのうち、おじさんはお姉さんの後ろから、サヤエンドウを挿し込んでいくんだって。
 お姉さんはひいひい叫んでたらしい。
 2人は夫婦でもないのに、子供をつくる行為をいつもしてるんだってさ。
 
 で、ナディアは僕で試したらしい。う~ん、何か複雑な気分だね・・・

 あ・・・待って、ナディアが来たみたい、麗しのナディアが。
 お休み、カトリーヌ。
 さあ、今晩もナディアにすっきりしてもらって、寝ようっと。
 でも、そろそろ手と口だけじゃなくって、僕もナディアの身体の中に入ってみたいなぁ・・・でも・・・怒られちゃうだろうなぁ・・・

(了)

亭主後述・・・

 

「アンネの日記」風にジャンを綴ってみました。(笑)
余談ですが、小学生の頃「アンネの日記」を読んだ時、冒頭の「親愛なるキティ」という文句に違和感を覚えました。
「お前、隠れて住んでるのに、ペーターと姉ちゃん以外に誰に手紙書くねん!」と思ったものです。
あれは、日記につけた愛称だったのですね。意味が判ったのは、中学生になってからでした。(←鈍感)
ところで、W・ディズニー社でもナディアのリメイクを行うそうですね。(爆)
本作もとっても面白かったです。意味があるようでないようなリンカーン島での長いお話。
国営放送では考えられないような虐殺シーンや、船内での有毒ガス対処法、ネオアトランティス王(し、塩沢兼人さん・・・合掌)の末路も刺激的でした。
・・・しかし、ナディア・・・性格キツ過ぎるぜ、と思ったのは私だけでしょうか。
よっぽど、グランディスさんやエレクトラたん、それからあの看護婦さん(名前忘れました、たはは!)がいいです。
このお話は、先日すえさん(gansya主催)とお会いした時に、妄想を口走ったものです。すえさん、しょうもない酔っ払いのおつきあいしてくれてありがとうございます。

さて、ジャンは突撃するのでしょうか?・・・私にも判りませんです。(笑)