聖戦士の休息 ~聖戦士ダンバイン~


 バイストン・ウェルの物語を憶えている者は幸せである。
 心豊かであろうから・・・
 私たちは、その記憶を記されてこの地上に生まれてきたにも関わらず、思い出すことのできない性を持たされたから。
 それゆえに、ミ・フェラリオの語る次の物語を伝えよう・・・

 たき火がパチパチ音を爆ぜて燃えている。オレンジ色の炎が風に揺れ、その向こうにショウの顔が物憂げに照らし出されている。
「・・・火は消した方がいいかな?」
「さあ・・・どうかしらね?」
 私は言葉を切った。
 たき火がドレイク軍に見つかっても見つからなくってもどうでもいい。
 今はただ・・・疲れていた。横になってただ泥のように眠りたかった。身体が重く、あちこちに疲労が溜まっていた。
 ふかふかのベッドが恋しい。ベッドの上でジャンプするとバウンドし、また上へ跳ね上がる。トランポリンのような私のベッド。
 ベッドの上でバニラアイスクリームを食べるんだ。チョコレートが一杯乗った、まるでエンパイアステートビルのようなアイススクリーム。スプーンですくってもすくっても、全然減らないビッグサイズのアイスクリーム。時にはオーラバトラーの装甲のようなウェアハースをたくさんくっつけたり、いちごで飾ったりして、口一杯に頬張るの。とろけそうな甘さと頭が痛くなるような冷たさ。
・・・今思えば、あの暮らしは天国そのものだったわ・・・
 翻ってみてこの暮らしはどう、マーベル?
 戦いの連続。ダラスではご自慢だった爪も、手入れを怠ってるせいでボロボロ。味気ない携行食料を食べてるせいで、肌のツヤも悪くなってる。髪の毛なんてひどいもの。
「ふう・・・」
 ショウと食事を終えると
「・・・なあ・・・マーベル?・・・」
 ためらいがちな声で聞いてきた。
「何?」
 私はショウを見つめながら言った。
「ニーに会いたいのかい?」
 ぷっと飲もうとしてた飲料を吐き出しそうになった。
「ショウ!・・・まったく、突然何言い出すの?!」
 例に寄って例の如く、ドレイクの動きを索敵するために私達は出撃したのだが、オーラーバトラーの調子が悪く、こんな山岳地帯に不時着するはめになったのだ。母艦であるゼラーナにも連絡がどうにもつかなかった。片方だけなら何とでもなるのに、2機ともども調子悪いなんて、まるで呪われているようだった。
「・・・ううん、別に・・・あ~あ、チャムはどこ行ったのかなあ?」
 そう言えばいつもショウの傍らから離れないミ・フェラリオのチャム・ファウの姿が、どこにも見当たらなかった。
「・・・見てないの、ショウ?」
「ああ、付近を見てくるって行ったっきり、帰ってこないんだ。」
「その内、帰ってくるわよ。」
「ああ、そうだな・・・もう休むかい?」
「・・・う~ん、身体が汗で汚れてるから・・・そこの川で水浴びしてくるわ。」
「ああ。」
「・・・ショウ?」
「え?」
「・・・覗かないでね。」
 がくっとショウがこけた。
「あのなあ!」
「冗談よ、冗談。」
「へえ・・・」
 ショウが急に真面目な顔で私を見た。
「何よ?」
 立ち上がりかけた私はついついショウの顔を見てしまった。
「・・・いやあ、マーベルも時には冗談言うんだな、と思って。」
「・・・そうよ。」
 さっき場所を確かめておいた川へ向かいながら、私は呟いていた。
・・・冗談でも言わなきゃ、やってられない時もあるのよ・・・
 と。

 お気に入りのシャンプーもリンスも石鹸も、何もないけど、汗だらけの汚れた身体で寝るよりはましだった。きれいな水の小川で念入りに身体を洗う。まだ冷たいけど、疲労を取り除いてくれるほどの爽やかさに私は満足していた。
・・・ニー・ギブン・・・
 ゼラーナの艦長、ニーはリーダーとして少々頼りないけど、素敵な男性だった。私は少なくとも嫌いではない。聖戦士として召還されたこの身を反ドレイク側に起たせたのは、彼の魅力だったと言っても言い過ぎではないだろう。もちろん彼の理想に共鳴したのも事実なんだけど。
 ぷくぷくと川の中へ目元まで沈みながら、私はいろいろ考えていた。
 ニーにはリムルという恋人がいる。
・・・それは私にとって、何だと言うの?リムルはドレイクの娘であり、ニーにとっては親の仇の娘じゃないの!まるでバイストン・ウェル版「ロミオとジュリエット」だわ・・・
 呼吸が苦しくなって口を水の上に出す。冷たい水にも関わらず、身体が火照ってきていた。まるでハイスクール時代のように好きな男の子のことで、胸が一杯になったと同じ感じだった。
・・・あの時も・・・
 そう、確かあの時もフットボール部の主将のことが好きだった。毎試合応援に出掛けたものだ。でも彼の周りには、チアガールを含めてたくさんの女の子がいた。そっと後ろから応援して、彼の姿を見守っていた。
 ところがある日、夢が現実になった。その彼が私をデートに誘ってきたのだ。本当に夢のよう。他の女の子の羨望の視線が嬉しくって、私は女王様気分。
 そしてデート。彼は父から借りたという、素晴らしいブルーのコンバーチブルで私を迎えに来てくれた。胸をときめかせながら、車にエスコートされる私。
 そして、そして・・・楽しいドライブと食事のあと、キスされて・・・モーテルで初めて彼に抱かれて・・・その後も何回か彼の求めるままに抱かれて。バラ色の生活。あの時、彼は確かに私の生活の一部分だった。
 しばらくして学校へ行くと、彼はもう違う女の子とデートの約束を取り付けていた。にやにや笑う彼の取り巻き達。
「マーベル、相当感じたんだって?!」
「・・・お前だけは、身持ち固いと思ってたんだけどなあ~、ちっ、100ドル損しちまったぜ!」
「彼はね、あんたみたいなダサい女に似合わないのよ!」
 次々浴びせられる悪夢のような言葉。残酷に笑うクラスメート達。
 そう何のことはない、私のヴァージンは、「賭け」の対象だったのだ。
 そう何のことはない、ベッドで散々耳元に吹き込まれた甘い言葉は、全部うそだったのだ。
 そして、私は1晩泣き明かし、彼のことを忘れることにしたのだった。
・・・そうあの時も・・・こんな風に胸が痛くなったっけ・・・
 ニーの笑顔を思い浮かべると、急に胸が痛くなっていた。はっと乳房を見る。
「あ・・・」
 先が固くなっていた。くりくりっと思わず私は掴んでいた。途端に流れる電気が身体を痺れさせていく。
「んう!はあっ!!」
 淫蕩な私。戦士であることを忘れた私。「女」である私。戦いに疲れた私。いろいろ弱い所だらけの私。
「あ・・・あ・・・ああ・・・」
・・・こんなの、こんなの、久しぶり・・・だわ!・・・
 バイストン・ウェルに来てもうどれくらい経たか、私は女であることを忘れそうだった。
 誰も私を「女」とは見てくれない。聖戦士として、戦いの道具としてしか見てくれていない。
・・・でも・・・でも・・・私だって女なのに!!ああ・・・あ・・・誰か、私を抱きしめて!・・・マーベル、好きだ、可愛い、って言って欲しいのに!!あ・・・あう、う、うっ、う・・・はうっ!!・・・
「はぁ、はぁ、はぁ・・・ああん・・・あ・・・あ、あ、あ、あ、あんっ!」
 もう指が止まらない。水の中で乳房を揉みしだくだけでなく、勝手に両足の付け根まで伸びていた。突起、そう私を女として証明する敏感な突起がふるふると自己主張をしている。
・・・あ・・・ああ・・・ん、ん、ん、ここ・・・気持ちいい・・・いい・・・あ、あ、あ・・・
 水の中で私は悶える。指が亀裂の中を割って進入していくのだった。そして私は、固くなった肉の芽をこりこりと弾いていくのだ。
「ああんっ!」
 誰か判らない、そう誰か男性に凌辱される光景を頭に描きながら、私は高まっていった。はしたなく、淫らに、嬌声を上げて・・・川の中で果てていた。
「・・・!」
 しばらく自慰の余韻に酔って身体の火照り具合に浸っていると、突然辺りの繁みがごそごそ揺れたような気がした。
「誰?」
 人の気配が消えた。私は何だか急に恐ろしくなり、川岸にある衣服を急いで身に着けた。
「どこかのガロウ・ランらかしら?・・・それともまさか・・・ショウ?」
・・・でもさっき、ショウは覗かないって・・・こらこら、マーベル、ショウだって年頃の男の子よ、私にムラムラしたって無理ないんじゃないの~?・・・
 茶化すような、それでいて何かを期待するような私の中の私。時にはこの身体の持ち主である私自身をも凌駕して、身体と心を挑発しがちなのだ。
・・・ショウが覗いたのかな・・・いやだな・・・でも・・・でも・・・でも・・・
 でも、何なのだろう?

 火の消えかけたたき火のそばに行くと、ショウが寝ていた。さっきのことが気になって寝息を窺ってみるが、どうも完全に眠ってるようだった。
・・・馬鹿らしい・・・ショウは寝てるわ・・・じゃあさっきのは誰?・・・
「ほら、ショウ!ショウ!!・・・起きなさい、川で身体を洗ってきなさい!」
 2、3度身体を揺らすとショウが目をこすりながら、身体を起こすのだった。
「あ・・・俺、寝ちゃったんだ・・・ごめん・・・」
 眠たそうにショウが言った。その無邪気な顔を見ていたらさっきの覗き犯は、彼じゃないような気がした。
「いいから、ほら、水浴びしてらっしゃい・・・少し冷たいけど、疲れが取れるわよ。」
「ああ・・・明日もきついし、そうするよ。」
 元気よく立ち上がったショウは川に向って歩き出していた。そしてこちらを振り向いて言った。
「マーベル!?」
「何?」
「・・・覗かないでな!」
「バカ!」
 ショウが笑って川の方へ駆けて行った。

「ニー!ニーったら、ニー!!」
 しかしニーは私に気づかない。私の前を通り過ぎたニーの前に駆け寄ったのは、リムル・ルフトだった。
「ニー様ぁ!」
 少女特有の黄色い声ではしゃぐリムルが、ニーの腕の中で抱かれている。強く固く抱きしめるニーと寄り添って甘えるリムルの間には、誰も入っていけないような気がした。
「ニー・・・」
 私の呟きも2人の恋人には聞こえない。リムルのあごを優しく持ち上げたニーが唇を重ねていった。
「ん、ん、ん・・・」
 目を閉じたリムルの甘く濡れた密やかな声が、私の身体を揺らしていく。
 はっと気づくと2人は全裸になっていた。そして、そして身体を重ね合わせていた。そばで佇む私は口に手を当ててその行為を眺めているだけだった。
 上に乗ったリムルを激しく突き上げるニーの白痴めいた顔に、私は吐き気を感じていた。また2人が唇を重ねる。顔が離れると2人の顔の間に透明な糸のような曲線が現れた。2人の唾液が糸を引いているのだった。
「あ、あ、あ、ニー様!ニー様!もっとリムルに、リムルにっ!!」
 汗だらけになって愛し合う恋人達を胸焦す嫉妬と羨望の炎で見つめてる私は、いきなり背後から身体を押さえつけられていた。
「!」
「我が愛娘のふしだらな行為を見たな!」
「ド、ドレイク・ルフト!!」
「聖戦士と言えど、処罰する!!」
 私はルフトの部下達によって、衣服を剥ぎ取られていった。その部下の中にあのトッド・ギネスまでがいやらしい顔をして、にやにやと笑っていた。
「トッド!?」
 地面に押さえられながら見上げると、トッドが言った。
「よう、欲求不満のマーベル!ニーとリムルのセックス見て、悶々としてたか?それとも濡れて濡れてしょうがなかったか?」
「バカな!」
「じゃあよ、欲求不満気味の聖戦士殿に一丁、恵んでやるとするかな、ほら、おめえ達しっかりマーベルを押さえてろよ!」
「待てっ、トッド。」
 ドレイクが重々しげに口を開いた。
「この聖戦士は元々ワシのものじゃ・・・お前は待っておれ。」
「!」
 トッドがオーバージェスチャー気味に肩をすくめると、場所をドレイクに譲った。部下によって持ち上げられた私のお尻をドレイクが見ている気がして、身体中に悪寒が走った。
「あ!」
 衣ずれの音がして、ドレイクの両腕がお尻に触れた。そして・・・いきなりドレイクが乱暴に押し込んできた。
「ぐうっ!や、やめなさい・・・ドレイ・・・ク・・・ああ!」
 ドレイクがすでに奥まで入って来ていた。この暴君は倣岸にして不遜、そして無慈悲に私を凌辱するのだった。
「あぐ、あうっ!・・・や、やめなさい、ドレイク!!んああっ!!」
「ふむ、聖戦士と言えども所詮は女か・・・なあ、トッドよ。」
「あ、ああ、あ・・・ああん、バカな・・・そんな・・・」
 早急に繰り返されるドレイクの抽送に目が眩んでいた。拒否できない、そう否定できない快感の渦が大きくなっていく。
「ああん、ニー様ぁ!ああ、いい~!!」
 2人の恋人達は、快感と苦しみに喘ぐ私を尻目にいよいよ高まりつつあった。
・・・助けて!誰か助けてえ!!・・・ニー、私を助けてよ、そんなリムルなんか放っておいて!・・・お父さん、お母さん、誰かぁ!・・・神様・・・どうか・・・
 痛みと快感の波に揺らされている私に、誰も助けなど寄越しはしないのだ。
 ニーでさえも、恋人との逢瀬に夢中なのだ。
・・・リムルなんか、どこかに行っちゃえ!リムルなんか、リムルなんか・・・
 身体中を襲う快感に身悶えしながら、私はリムルを呪詛していた。
・・・誰か・・・誰か・・・た・・・す・・・け・・・て・・・
 その時、不意にショウの姿が頭に浮かんでいた。
・・・ショウ!ショウ!!・・・助けて、私を助けて!!・・・

「マーベル!?マーベルったら、おい、マーベル!」
・・・え・・・
 気がつくとショウの顔がすぐ目前にあった。
・・・ゆ・・・夢なの?・・・夢だったの?・・・
 私は恐い夢を見ていた子供が親にすがるようにショウに抱きついていた。
「おい!マ、マーベル!!うなされてたぞ、変な夢でも見たのか?・・・お、おい!?」
 ショウの胸に顔を埋めていると、何だか安心したような気になっていく。
・・・ドレイクに凌辱される夢、そんなの恐くなんかない・・・ううん・・・恐くなんかないっ!・・・本当に恐いのは、恐いのは・・・ニーと愛し合うリムルのことを憎んだこと、呪ったこと・・・
「ショウ・・・恐い夢見たの・・・」
「そうか・・・さあ、もう寝ようぜ・・・明日も早いんだ。」
「ううん、聞いて・・・自分が恐いの、恐いの・・・ニーとリムルのことで・・・恐いの、リムルを憎む自分が・・・リムルなんて死んでしまえ、なんて思って・・・それで・・・夢の中で・・・」
 後は言えそうもなかった。私を抱くショウの腕に力がこもっていた。
「・・・マーベル・・・」
 ショウの問いかけに私は顔を上げた。ショウが私を憎からず思ってくれていることは知っていた。気づいていた。だけど今まで安易に応じれなかったし、応じれる余裕もなかった。
・・・だけど・・・だけど・・・もう辛い・・・もう独りで突っ走っていけない・・・私・・・もう・・・独りじゃ生きていけない・・・このまま、男の人に、ショウにずっとすがりついていたいの・・・
「恐いの、恐いの、ショウ、リムルを憎む自分が~!」
 そんな風にまくし立てる私を抱きかかえたまま、ショウが言った。
「そんなの、マーベルらしくないぞ!」
 ああ、この人は男の子なんだ、と思った。バイストン・ウェルに召喚された時はまだ子供とたかをくくっていたが、間違いなく成長していた。私の方がよっぽど子供だった。
「ショウ・・・」
 私はショウの首を抱いてキスをした。唇が重なった瞬間、ショウが鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。触れ合った唇の感触が妙に妖しい感じだった。
「うくくく・・・」
 驚いたショウが離れようとするが私は逃がさない。しっかとショウを抱き、その口を吸っていた。
「マ・・・マーベル・・・」
 ようやくショウが言った。
「・・・その・・・俺はニーの代りになれやしないし・・・」
 そんなの、当たり前のことだ。
「私のこと嫌いなの?」
「!ち、違う!!・・・けど、けど・・・」
 ムキになって否定するショウが堪らなく可愛く思えた。私はショウに訴えていた。
「もう何も言わないで・・・」
「で、でも・・・」
「カモン、サムライボーイ・・・」
 地上界は西海岸のストリートガールにも負けないつもりで、ショウに言った。果たして決意したショウが私の唇を奪うのだった・・・

「ああん・・・あ・・・ね・・・ショウ、もっと一杯キスして・・・」
「う、うん・・・」
 ショウがやや乱暴に私の唇を奪う。今はそんな扱いも身体に心地いい。
 私は、朱の甲冑めいた色気のない服を自分で脱いでいく。下着姿のまま、キスを交しながら今度は青いショウの服を脱がしてやった。
 改めて素肌をくっつけながら私はショウの身体の暖かさを楽しんでいた。
「はぁ、はぁん、ああ・・・ショ、ショウ・・・」
 ショウが私の髪の毛を掻き分けて、耳を軽く舌で嬲っていた。
「きれいだ・・・きれいだ・・・マーベル・・・」
 爪を噛みながら、押し寄せる快感に私はこの身を任せていく。ゆっくりではあるが、ショウの愛撫に私は興奮していた。武骨な手のひらが私の乳房を撫でていた。
「あ・・・あっ・・・ショ、ショウ・・・もっとしていいのよ・・・あん!」
 私の膨らみに沿って手のひらが移動していく。曲線の頂点に指が引っ掛かった時、思わず吐息が洩れた。それに励まされたか、ブラの中にショウは手を潜り込ませていた。
 感度のよくなった乳首が今は痛いくらいに成長している。ショウはぎこちないけれど、優しく私を愛撫するのだった。
「マーベルの身体、いい匂いがする・・・」
 今度は足にショウの指が這っている。控えめながらも、ゆっくりと私自身の中心へ向っていた。
「あん・・・」
 かすかに膝にショウの固くなったペニスが触れた気がして、私は喘いだ。
 私自身に直接触れてはいないのに、目くるめく快感が全身を襲っていた。声を震わせながら、私は耳元に囁いた。
「早く・・・脱がして・・・ね・・・お願い・・・」
「う、うんっ!」
 胸を隠すブラを外すのにショウは必死だった。私は早く外して直接触ってもらいたいのに、まごまごするこの時間が楽しかったりしていた。
「あ・・・うん?む、難しいな、女の下着って・・・」
 ぱちん、乾いた音をさせて胸がショウの視線に晒された。食い入るような熱い眼差しにまた乳首が痛くなり、鼓動が激しくなっていた。
「ああ・・・マーベル・・・」
 ショウが乳房に顔を近づける。熱い吐息を素肌に感じ
「ああっ・・・ショウ・・・」
 思わず呻く。私の声を待っていたのか、ショウは乳首を含み、空いた方の乳房をぎゅと掴んでいた。
「あっ・・・痛・・・あ、あ、あ、んっ!」
 いた気持ちいいと言うのか、疼痛の中に甘い快感。却ってショウの武骨さが心地いい。
 お腹にまた触れたショウのペニス。
・・・ああ・・・固い、固い・・・
「うっ・・・マーベル!?・・・」
 左手で捕まえたそのペニスを軽く動かしてあげる。
・・・ああ・・・熱い、熱い・・・
 熱いのは私の身体。乳房、私自身・・・いや全部。そしてショウのペニス。
 動かすとぬるぬるした液体が頭の先の方から流れてくる。
「ううん・・・ああ・・・ショウ・・・」
 私自身へ手が伸びたのだ。おずおずと指を下着の上から私自身へ当てていく。
 もどかしい快感が微少過ぎて物足りない。自ら腰を浮かし、積極的にショウを誘った。
「ぬ、脱がすよ。」
 ショウが言った。私を守っていた最後の布きれが消えた。
・・・恥ずかしくない・・・でも・・・やっぱり恥ずかしいな・・・最後にここを他人に見せたの、何時だっけ?・・・そうだ、フットボール部の彼以来だわ・・・あ!・・・
 思考が止まる。いきなりショウが足を広げさせたのだ。
 少し時間が止まった。どきどきして待っていると、いきなり熱くざらざらした舌が届いていた。
 ぺろっ、
「あ!」
 ぺろぺろっ、
・・・ゆ、指だと思ってたのに~・・・
 身体に中に入り込む粘着性の舌。ぬらぬらと湿り、体温と交じり合っていく。私の「女」はとっくに濡れていて、ショウの舌と同化しているみたい。
「ああっ!」
 痺れてしまいそうな私は、ショウの頭を掴む。弾みでますます股間へ舌が伸びてきた。
 じゅる、じゅっ、くちゅ、
 恥ずかしくて、恐ろしく卑猥な音がして頭が呆けてしまいそうになっていく。ショウの舌先が私の突起を責め続けていた。
 ちゅ、ちゅ、舌先が突起を突く、突く、突く。
「あ、あ、あ、ああっ!!」
 唇を固く噛んでもだめだ、声だけがとめどもなく出てきてしまう。
「んくっ!あ・・・はぁ、ああん、んう、ん、ん、ああっ!!」
 攻撃の方向性が変わってきた。今度は舌先が亀裂の中へ割って入っていたのだ。身体の奥底まで舐められているのではないか、という変態チックな感じに私は震えてしまう。
「あ、あ、あ・・・あああん、ショ、ショウ!!」
 細かく振動する舌先と突起をさいなむ指に責められて、私は早くも達していた。
「ショウ!!ああんっ、だめ、だめえ、あん、ああん、いい、あ・・・もうっ!!」
 弾丸に撃たれる、というのはこういうことを言うのだろうか、私の身体が伸び切っていた。弾けていた。
・・・自分の指なんかより・・・当たり前なんだけど、人にされる方がいいのね・・・
 軽く痙攣しながら考えてしまう。
 冷たい小川の中で自分を慰めるより、ショウにしてもらう方が何倍もよかった。
「・・・すごいね・・・マーベルって感じやすいんだね・・・」
 ショウの冷静な声が憎たらしい。再び挿さったままの指を少しづつ動かされてしまうと、達したはずの身体が再び疼いていた。
「あん、あん・・・ショウ・・・ね・・・キスして・・・」
 言い終わらない内に唇が押しつけられていた。情熱的に2枚の舌がお互いに絡み合い、官能を更に燃やしていく。お互いの口蓋の中をすすり合い、確かめ合って、何度も重ね合って・・・頭の中が芯から溶けていくほどだった。
「・・・マーベル・・・い、いいかな?・・・」
 長いキスの後、ショウが訊ねてきた。
 この後に及んで何のためらいがあると言うのか。うなずいてショウを待った。
「久しぶりだから緊張しちゃうよ・・・」
 苦笑いが聞こえてきた。照れ隠しなのだろうか?
「・・・緊張しないで・・・久しぶりなのは私も同じ・・・」
 いや、私こそ緊張している、こんな年上の経験豊富な女の口振りをしていたって、だめ。
 咽喉がからからに渇いて、身体中が緊張していて、せっかく汗を流したのにまた汗だらけ。 例のフットボール部の主将以来、男性を迎えるのは初めてのことだった。
・・・あっ!!・・・
 身体を割ってショウがやってきた。
 ずぶって、ずぶりって、私の身体を貫いた。痛さに唇を噛んで、ショウに気取られまいとした。やはり私の身体は、男性を迎え入れるには時間を開け過ぎていたようだった。指と舌の愛撫には散々反応していたのに、いざ挿入となるとひどく痛い。
「ん、ん、ん、んうっ!・・・あ・・・あ・・・あ・・・んうっ!!・・・え!?」
 ふと気づくとショウが動きをやめて、私の顔を心配そうな顔で覗き込んでいた。
「ショウ?!」
「ん?・・・いや・・・マーベルが・・・痛そうな顔してるからさ・・・痛いかい?俺、痛くさせちゃったかい?」
・・・この人、何て可愛いんだろう?・・・
「大丈夫よ、痛くないわ。」
「そ、そう?」
 ゆっくりとショウが動き出す。
 私の中に収まったショウが私を突き始めた。ずん、ずん、ずぶりと細かいリズム、それはどこか優しかった。
「ん、ん、んっ!」
 喘いでいる私、痛さと気持ちよさ、交互に私を訪れる。そしてそれは次第に痛さを薄れさせ、気持ちよさを増幅させていた。肉体がショウをもっと求めているのだった。
「あ・・・あっ、あ、あ、あ、ああん!」
 はしたない声。
「あ、あ、あ、ん、ん、ん!」
 情熱の声。
「はぁん、ああ、あ!・・・ん、んく、あ、ああ!!」
 私の声。
 ショウに届けとばかり高くなって行く私の声。身体の隅々まで、見られ愛され抱かれている。キスをする、もうショウのことしか考えられない私。ショウの存在を確かめるとばかりにきつく抱きしめる。足を交差させ深く深く受け入れると、挿入が更に確固たるものになるのだった。
「痛くない?大丈夫?」
 また動きながらショウが低い声で言う。
「うん・・・うん・・・あ、あ、ああ・・・大丈夫、私、大丈夫だから・・・あ・・・ああ・・・ああん!」
 今度はショウの動きが単なる抽送からゆるい円運動に変わる。弧を描く度に私は哭く。
・・・もう・・・痛くなんかないっ!・・・痛く・・・ない・・・ない、ない、ない・・・んはっ、あ・・・あ・・・ああ!・・・
 円運動に合わせて波が寄せる、寄せる、寄せる、寄せていく。私の中、奥、そして全身に高まる波。高い波、もっと高い波、そうまるでビッグウェンズデーのような波、ワイキキのサーファー達が垂涎を向けるであろう波。
 まるで私にしるしを刻むかのような動き、痺れる、痺れる、痺れていく・・・ああ、もう私・・・
「ああ、ショ・・・ショウ!!私、私・・・」
「マーベル、マーベル!!」
 重ねる言葉と唇がまた官能を引出していく。
「もっとして、ショウ!」
 火のついた私の身体、自由奔放にショウの動きに反応していく。そうこれまで感じたことのない快感は、私を癒してくれていた。
「マーベルが好きだ、俺は好きだっ!あ・・・あ・・・ううっ!」
「私も好き、だからもっと抱いて、抱いていてっ!!」
 心の底からの懇願。哀願。絶望と希望、ただ異世界で巡り合った私とショウの不思議な因果。これがもし地上界ならば、決して出会えなかったはずの偶然。
・・・もう何でもいい、難しいことはどこかに捨てちゃっていい、もう構わないっ!私を愛してえ、ショウ!!・・・
「あ・・・気持ちいい、いい、いい、いいよ!!・・・ああんっ!!」
 津波が押し寄せる、僅かに残った私の理性の防護壁でさえ、やすやすと破壊する快感の波。
「出る、出るよ~!」
 吠えるショウを見つめるだけの私。意識が吹っ飛びそう。
「ああんっ、だめえ、だめえ、あ、いい、ああっ!!」
 どぴゅ、どく、どくっ、
 私とショウは同時に達していた。私から引き抜いたショウが中空に放っていた。
「きゃあ!」
 小さくカン高い悲鳴がした。ぼんやりしながらも視線を向けるとショウが放ったはずの空間に・・・チャム・ファウがいた。どろどろになって白濁した姿で浮いていた。どうやら射精の軌道上を飛んでいたらしかった。
「もう、何!このどろどろしたやつ・・・ああ・・・もう不愉快!もういや!!」
 チャムが悪態を吐いている。
「で、何でショウとマーベルが裸なの?戦闘訓練なの?白兵戦の?」
「う・・・そうそう、戦闘訓練。」
 思いきりショウは動揺してる。
 それを聞いて、チャムは顔から白濁したショウの精液を拭き拭き、言い返した。
「・・・何か怪しい・・・マーベル、いつもの声と違うもん、色っぽくて、女らしいって言うか。川の中でみたいに・・・」
・・・!そっか、さっき見てたのはチャムなんだわ・・・
 これ以上は聞くには及ばない、ショウにも聞かせられない、そう思って
「・・・いいから、そこの小川で水浴びしてらっしゃい、汚れてるわよ。」
「は~い・・・ああ、どろどろ、いや~んっ!」
 ミ・フェラリオ特有の羽音と蛍光性の光を曳きながら、チャムは川の方へ飛んで行った。
 まだ私の上に乗ったままのショウと視線が合った。ショウの顔が歪み、私達は笑い転げていた。お腹の底から笑っていた。
「ハハハハハハハハ!」
「ウフフフフフフフ・・・」
「いや、参った、チャムに見られちゃった。」
「・・・ウフフ、そうね。」
 私はショウを引き寄せてキスをした。口が離れた後、ショウがこう言った。
「もう1回したいんだ・・・」
「・・・いいわ、チャムが戻ってくるまで・・・来て、ショウ・・・」
 最後の方はかすれていた。
 ショウのたくましい身体が重なってきた・・・後は本能に任せるだけでいいのだ・・・何も難しく考える必要ないのだ・・・
「ああ・・・あ・・・ああんっ!」
 後はもう、ショウにしがみつくだけでいいのだ。
 
 翌朝顔を合わすとどこか恥ずかしかった。
「あ・・・おはよう・・・」
「おはよう、マーベル・・・」
「あれ~何で2人とも顔が赤いの?」
 不思議そうにチャムが言う。やがてショウの肩の上に乗って、私達を交互に見るのだった。
「う~ん、やっぱり怪しい・・・」
「あっ!」
 ショウが気まずい雰囲気を払拭するように空を見上げて叫んだ。
 何事かしら、と思って振り返ると、空に私達の船、ゼラーナが飛んでいた。
「あ~っ、ゼラーナ!!私達ここよ~私、呼んでくる!」
 ゼラーナ目掛けてチャムが一目散に飛び上がっていく。
 気づくとショウが私の腰に手を回していた。そのまま優しく抱き寄せられて、私は身体を預けていく。

 チャムの軌跡が、蒼い空に虹のようにきらめいていた。

(了)

亭主後述……

20万ヒットをキリ番獲得された、はとりさんのリクエストの聖戦士ダンバイン、ラブラブなショウ×マーベル、チャムです。
……が思いきり時間が掛かってしまいました。遅くなってすいませんです、はい。
取材、資料集め、やっぱ大変ですね~
リクエストにお答えしたつもりなんですが、チャムをどう絡めるかに悩んでしまいました。

どうですか?(爆)