光さす庭・ラプソディー ~少女革命ウテナ~

 

 男達の視線が、あたしから離れない。情熱的に、熱心に、淫猥に見てる、見てる。
 絡みつくように見てる。
 欲望でいっぱいの男達、そんなにあたしが、あたしのことを、このあたしの身体が欲しいの?
 じゃあ、ほら、チャンスを上げる。見つめてあげる。これなら声、掛けやすいでしょう?

 いいよ。いいよ、好きにしたら。
 ほら、ふふ、もっと積極的にしなきゃ、女の心、モノにできないよ。

 今晩2人目の男が、ホテルに入るなり、あたしを抱きしめた。荒い息遣いから逃げようとして、男の身体を押し返したけれど、しょせん女の力じゃ無理だった。
 そのままシャワーも浴びずに、あたしは服を着たまま、小汚い絨毯に押し倒された。
「う、う、う・・・」
 あたしに跨ったままの男は、力のこもった手つきで乳房をつぶすように掴み、スカートの中へ手を入れた。
 身体を洗うのをあきらめたあたしは、男のベルトに手をかけてやる。そうしてパンツの中で大きくなってるペニスを両手で、触ってやった。すぐにポロンと現れた。
「あは、結構大きいんだ。」
 男の返答も待たずに、あたしは先っぽにチュッ、キスをしてやった。
「口でしてくれよ、うまいんだろ?」
「いいよ。」
 どうせそのつもりだったのだ。
 興奮してる男のペニスから、いっぱい水のように薄い体液がにじんでいた。すかさずそれを口の中に含み、先走った汁をすすった。
 男がうう、とまるで女みたいに喘ぎ、あたしを調子づかせた。ペニスの根元深くまで咥え込み、咽喉の奥でそれを咥えた。そのまま首を捻って、舌先でなぞり上げていく。
 ちゅぱ、ちゅぽ、口に溜まった男の体液とあたしの唾が一緒に音を立てた。
 どうやら、男という種族はみんなこういう音が好きらしい。それなら、それだったら、喜んでもっと音を大きくしてやろう。

 ちゅぱっ、ちゅぱぁ、ちゅぷうう、
 ほら、気持ちいいんだろ、もっと感じちゃいなよ。
 あたしだって、男のモノを舐めるの、きらいじゃないんだから。むしろ、好きなんだから。

「た、たまらねえ・・・」
 頭上で男が叫んだ。途端に先走ってる液体の分泌量が、どっと増えた。これ以上、口の中に溜めておけずにとうとう飲み込んでしまい、男の味が、食道を伝って身体の奥へ流れ込んでいった。
 ペニスを口から離し、その大きさを目で確かめた。どくんどくんと脈動を打つペニスの周りに、青筋が走っている。あたしの口が暖めたおかげか、先端から白い湯気が立ち上っていた。
 たまらなくペニスが愛しく思えて、胴体を指で絡めてゴシゴシとしごきあげながら、あたしは袋の部分に口づけた。
「うお、うおう!」
 男の反応に気をよくして、あたしは袋を噛むように吸い込んだ。かと思うと、舌をざらざらした袋に這わしてやった。ふやけちゃうってくらい舐めた。
「す、すげえ・・・」

 まだ。まだだよ、驚くのは。
 わぁ、こんなにヌルヌルしちゃってさ、ふふ、やらしいの。
 ぱく、フィニッシュまで持っていってあげるから。

 すぼめた唇でペニスをしめてやり、舌先で叩いてあげる。握りしめた右手も一緒になってこする。
 そして頭を振り振り、どう、気持ちいい?

 ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぷ、
「お、おい、そんなにしたら、出ちまう、出ちまうよ!」
「ん、ん、ん、かぱぁ、い、いいよ、別に出して・・・かぽ、ん、ん、んっ!!」
 男があたしの頭を持って、腰を振り出した。ペニスが咽喉に突き刺さるけど、平気だった。

 いきたいなら、いけばいい。
 とっととあたしの口に出してしまえば、いい。
 どうせ、すぐに復活するんでしょ?
 だから、だから、早くいって、早く飲ませて、あたしにちょうだい。

「うう!」
 ペニスに絡ませた指が、一瞬膨らんだ気配を感じ取った。ああ、いくのね、そう思う間もなく、男の精があたしの口の中でほとばしった。
 びゅくん、びくん、いや実際には音はしないのだが、そんな感じをあたしに与えた。
 咽喉に、勢いよく精液が叩きつけられた。むせかえりそうになりながら、口に注がれて充満していく精子をうっく、うっくと頬張っていく。
 ああ、もうだめ、そう思って、なおも舌でペニスを舐め取り、胃の中へ男の欲望を流していった。
「んっ、んっ、ごく、はぁ、はぁ・・・」

 まったりとして濃い精液。ねばつく精液。ああ、もう、うっとりしちゃう。
 
 だけど目の先には、まだ残りを出し続け汁を滴らすペニスが、あたしが絞り取るのを待っていた。
 舌先を伸ばして、それをすくう。このまま捨て去るには、もったいないほどたくさんあった。
「う・・・そう、そうだ、全部舐めてくれ。」
 言われるまでもない。
 すべてを舐め取ってやる。粘っこく、そして濃くっておいしい。
「あ~ん・・・」
「え、えげつねえ、お前、精子好きなんだ?」
 あたしの口の中をチラっと見て、すぐに視線を外した男が言った。

 あんたの精液じゃないの。言わばあんたの分身よ、男って、どうして見るのいやがるんだろう。

「んくう・・・あ、あんたのじゃない、濃くっておいしいのに。」
 口に残っていた精液を飲み干した後に、あたしは言った。
「おいしい?ち、誰にここまで、仕込まれたんだよ、一体・・・」
手を伸ばして、大きいままのペニスをまた含んだ。まだペニスは太く、そびえたっているままだ。
 チュルチュル、ストローでジュースを吸い上げるように、あたしは清めていく。清めるというか、残った精子を全部飲みたいだけなんだけど。ペロペロ、舌を使いながら、そう考えた。

 それに、あたしをこう仕込んだのは、あんた達、男全員じゃないの。
 あ、全員じゃない、あいつを残して、残りの男全部だ。

 そう心の中で訂正していくうちに、ペニスはきれいになった。
「はい、おしまい、ごちそうさま。」
「最高だぜ、なあ、いくつだっけ?」
「年齢?」
「ああ、教えろよ。」
 男はやっとあたしから離れて、次をどうしようか思案してるみたいだった。
「・・・もう中学1年生よ、もうすぐオバさんになっちゃう。」
「けっ、俺は犯罪者かよ、まぁ、いいや、後ろ向きなよ。」
「うん・・・」
 男はあたしをよつんばいにさせた。そしてお尻を高く向けさせて、スカートをたくし上げたのだ。
 いきなり、ショーツに鼻が押し当てられた。そしてぐいぐいと食い込ませていく。
「なんだ、もうヌレヌレじゃん。」
 安心したように男が言った。
「口でしてるだけで、あたし、濡れちゃうみたい。」
 ショーツの横から、男が指を突っ込んだ。電気を食らったように、あたしは背筋を反らしてしまった。
「へへ、大分男知ってる割りには、まだきれいな色だな。」
 1本、また1本、男は指を増やしていった。あたし自身にズブズブ潜らせて、ドリルのようにゆっくりと掻き回していく。
「ああん、あん、ああん・・・」
「で、梢ちゃんは、何人の男を知ってるんだい?」
 男は、女の体験人数を知りたがる悪いクセがある。反対に、自分の人数を誇張したり、たくさん女をこなしたいと思ってるクセに。
「50人から先は数えてない・・・あっ・・・あ・・・あ・・・」
「ヤリマンなんだな、お前。」

 そうかな、やっぱり・・・そうかもしんないな。

「いいから、早くそのぶっといの、入れてよ!」
「判った、判った、もう愛撫はいらねえな。」
「うん、早く早くう・・・あ、あ、ああっ!」
 ペニスが入ってきた。ショーツの横から入ってきた。まだ服を着たままだというのに、挿入された。
「熱くていい感じだぜ。」
 あたしは後ろから貫かれて喘いだ。自分で乳房を揉んで、前後に揺れた。
 1番気持ちいい場所(これって男が判るには、なかなか時間がかかるの)に押し当てて、揺すり続けた。
「あ、あ、ああん、そこ、そこ、いい・・・」
「自分で腰振ってやがる、淫乱だね、梢ちゃん!」
「もっと、して、して!!お願い、してっ!!」
 ソファにたどりついて、あたしはそのクッションに顔を埋めた。
 そうすれば、こんな軽薄なドン・ファン気取りの男の顔を見ずに、想像の世界に入って気持ちよくなれるからだ。
 あたしは突かれ続けて、ひたすらに哭いた。哭き続けた。
 そのうちに、脳裏に白い光が訪れ、その中にあいつが現れた。あたしと同じ顔したあいつが現れた。

 み、幹!あん、あん、あん、幹、もっと、してえ!!あん、幹、あたし、いくう、いく、いくっ!!

 あたしが達した瞬間、男が叫んだ。
「ほうら、こっち向いて口開けな!!」
「う、う、う、あ、あ~ん・・・」
 熱い飛沫が、あたしの顔をと舌を叩いた。
 男の射精に打たれながら、またあたしはいった。達した。伸ばした舌に、いっぱいの精子が引っ掛けられて、その熱さに身体が沸騰する。
 思う存分放った後、男はまた清めるように咥えさせた。夢中になって、あたしは残りを絞って、飲んだ。

 別れた後、また今度は違う男達3人に声を掛けられた。
 おとなしく尾いていくと、男達は目で合図して、あたしを川っぺりの野原で押し倒した。3人もいるくせに、ホテル代も惜しむ最低の奴らだった。
 だけど、代わる代わるペニスを入れられて、口で舐めさせれていくうちに、そんなことはどうでもよくなっていった。
「飲ませて!もっと、もっとお!」
「おらよ!」
「こっちもだ!!」

 幹!!見てる?知ってる?あたし、こんなだよ!こんなに汚れてるんだ、見てよ!!

「あん、もっと、もっと、もっと、欲しい!!」
 さんざん撒き散らされた精液を顔中に浴びながら、あたしは喘ぎ続けた。
「たくさんちょうだい、もっとも、もっとちょうだい、お願い!!」
 降るような星空の中、男達の上になって、下になって、腰を振り続け、口で舐め続け、あたしは男達に抱かれた。
 そのうち、また、あたしと同じ顔のあいつが現れて、刺すように冷たい視線で、狂乱するあたしを見ていた。憎悪のこもったその視線に、あたしは言い知れないエクスタシーを感じていた。

 汚れた衣服もそのままに、部屋にたどりついた。
 幹は、もうすでにすやすやと夢の中だった。時々寝返りを打って、むにゃむにゃ何事か呟いているような気がした。
 どうせ、アンシーのことでも考えているのだ。そして夢の世界で、あの黒い肌した姫宮アンシーと、ピアノの連弾でもしているのだ。
 張り裂けそうなこの胸の痛み。
 キリキリと差し込む、この怒りにも似た感情。

 キッチンに行って、何か飲むものを探した。テーブルの上に、ラップされたグラスが1つ。
 それは、ミルクセーキ。幹の作ったミルクセーキ。
 ご丁寧に、
「夜遊びはダメ!」
 と幹の字で添え書きがあった。

 甘酸っぱい匂いと思い出に触発されたあたしは、グラスに手を伸ばして、ラップを外した。いつのまにか、口を近づけてる自分に気づいて、思わず中身をキッチンの流しに捨てた。
 排水溝に流れていくミルクセーキは、今晩飲まされてきた男達の精液に似て、白くどろりとしていた。
 あたしはそれを見て、何か心がザワザワと渦巻くのを感じていた。

 翌日の放課後、指定された待ち合わせ場所の音楽室に行った。
 音楽室のドアをノックすると、中から手だけが現れて、あたしを引きずり込んだ。
「あ!」
 分厚いカーテンが明るい日差しを隠し、音楽室の中はまるで夜のようだ。やけに広いのに、1台だけピアノがぽつんと置かれていた。
 あたしは手を伸ばしてきた相手に抱きすくめられ、いきなりのキスを受けた。
「ん、んう、んっ!」
 すぐに舌が捻じ込まれ、あたしの口の中で蠢いた。歯茎、歯そのもの、そして舌を絡め取られ、腰が砕けそうになってしまいそうだ。
 相手の身体を抱きしめ、今度はあたしから舌を求めていった。こくこく、相手の唾を飲み、複雑な軌跡を描いてあたしを蹂躙していた相手の舌を吸った。
 しばらくそうやって、唇だけの遊戯に耽っていた。
「相変らず情熱的だな。」
「・・・桐生先輩がいけないんでしょ、いきなりキスするから。」
「はは、そうか・・・おい、制服をどうする気だ?」
 あたしは時間が惜しかった。
 早くメチャメチャにして欲しい。もう恋人みたいなゲームの駆け引きはいらない、お断りだった。
 さっさと桐生先輩にしてもらいたかった。身体がそう望んでいた。
 制服の胸とシャツのボタンと外し、薄赤い桐生先輩の乳房をカリっと口に含んで、いっぱい溜めた唾で舐め回してやった。キスマークまで作ってやろうと思った。
「う、う、う・・・」
 桐生先輩が天井を仰ぎ、足をよろめかせた。そのまま、ピアノに当たって動かなくなって安定した。

 先輩、男の人だって、おっぱいって感じるんだね、だってこんなに、こんなに尖ってるよ、うふふ。

 ほんのちょっぴり固くなった桐生先輩の乳首を舐め、時には軽く噛んでやった。股間に手をやると、そこは熱く、膨れ上がっている。あたしは嬉しくなった。
 股間の尖りを、手のひらで掴んで動かした。桐生先輩も手を伸ばし、あたしの制服をまくってスカートに手を伸ばした瞬間、
「おい!」
 そう短く桐生先輩が叫んだ。
「下、履いてないのか?」
 当然のように、あたしは首を縦に振った。
「驚いた子だな。」
「・・・用意がいい、って言って下さい・・・あ、ああ、ん!」
 指が突起を摘み、ピンと弾いた。見るまでもなく、あたしには判っていた。もうすでに女子トイレで下着を脱ぎ捨てた時点で、あたしはこうなっていたのだった。
 桐生先輩から、放課後くるように言われた時から。期待して。どうしようもなく濡れて。授業中も、妄想に身悶えしながら。

 あたしは、淫らな子だ。兄と違って、兄貴とは顔しか似てなくって。どうしようもない、デキソコナイだ。
 だから、こんなに濡れている。湿っている。疼いている。授業中、太腿を愛液が伝って落ちていったのも、デキソコナイだからだ。

「もういい、口でしてもらおうか、と思ったけど、ピアノに手をついてよ。」
 あたしは命ぜられるまま、ピアノに向った。
 目の前に黒鍵が88鍵、昔から見慣れた通りにある。死ぬ程弾いたピアノ。夢にまで出てきて、あたしを押しつぶそうとしたピアノ。
 こんな乱れた、恥知らずなあたしを見ている。
「ポーン♪」
 指で押して、その音色を聞いた。いやな音だった。
 あたしは振り返り、桐生先輩に催促をしようとした瞬間、
「いくよう、そら!」
「ああ、んああ!!」
「ポーン♪」
 思わず手をついた鍵盤から音がした。音色にひるみながら、あたしは椅子に手をやって、桐生先輩に突かれた。
「ん!ん!んうっ、ああ、あっ!」
「おい、ピアノ弾いてくれよ。」
 あたしの腰にペニスを送り込みながら、桐生先輩が言った。
「え、え、あ、あん、ピ、ピアノ?」
「そうだ、いつも幹が弾いてるやつを頼むよ。」

 何だって、こんな時にそういうことを言うんだろう。

 桐生先輩があたしを押した。後ろからされたまま、鍵盤に向かい合わされた。
「い、いや・・・こっちに集中したいもん。」
 あたしがふてくされると、
「最近、ミッキーの奴、よく姫宮アンシーとここで弾いてるぜ。何て言ったっけ、あの曲?」
「あっ、あっ、あっ・・・ひ、『光さす庭』・・・ああん!」
 姫宮の名前が出て、あたしは急に弾く気になった。
 最初は順調に弾けた。桐生先輩がゆっくりした動きになったからだった。
「きれいなメロディーだな。」
「あたしより、幹の方が何倍も・・・ううん、何百倍も上手・・・」
「その代わり、こっちの方が達者じゃないか!」
 そう言った途端、桐生先輩があたしを思い切り突いた。ペニスが子宮近くまでこつんこつんと当たり、『光さす庭』の音階が最後で狂った。
「次も何か弾いてよ。」
「別にいいよ、あ、あああ!」
 子犬のワルツ、ノクタ-ン、雨だれ、覚えている限りの曲を弾いた。
 桐生先輩は、曲に合わせてフォルテの部分になると、深く挿入し、あたしはその度に音を外した。音を狂わす度に、あたしは達していた。
 そして『光さす庭』に戻った時に、とうとう、
「ようし、いくからな、う、うう!」
「あ、飲ませて!飲みたいの!!」
 そう叫んだが、無慈悲にも桐生先輩は、飲ませさせてはくれなかった。ピアノにもたれかかったあたしには出してくれず、低音階の鍵に放出したのだ。
 自分で出し終えた後、
「そら、ピアノをきれいにしな。」
「うん・・・」
 あたしは舌を鍵盤に這わせ、チュルチュルと吸い取った。ピアノを習った者として、最低、最悪の行為をさせられていると思った。
 だけど、それがあたしの身体を熱くするのだった。

 あ、あたし、辱められて、感じてる。
 大切なピアノを汚されて感じちゃってるんだ。

 そう思いながらも、黒鍵に付着していた白いドロドロのプリンのような精子をすすった。それは舌にこびりつき、歯にくっつき、半ば失神しそうな恍惚感をあたしにもたらした。
 ピアノを舐めながら、あたしはまた達した。

「もう行けよ。」
 ことが終わると、暑そうに胸をはだけたまま、桐生先輩がそう言った。もう1回して、直接飲ませて、と頼んだが、先輩は無情にも応えてくれなかった。
 この後、他の女子を呼び出して、あたしにしたことをするのだろうか、と思ったが、あたしはヤキモチなど焼いたりはしなかった。
 別に、桐生先輩のこと、好きじゃないし、遊び、そう、すべては遊びだから。
「うん・・・じゃあ、また・・・」
 熱気のこもった音楽室のドアを開けた途端、あたしは誰かとぶつかった。
「あ、ごめんなさい!」
 声に聞き覚えがあり、顔を見た。
「あっ!」
 そこにはあたしと同じ顔がいた。
「梢!」
 楽譜を持った幹は、呆然とあたしを見た。
 はっと思った。着崩れした制服、ファスナーがいい加減になったままのスカート、乱れた髪。
「よう、ミッキー!」
「き、桐生先輩・・・」
 幹はあたしと桐生先輩を交互に見て、事情をようやく飲み込んだようだった。
 急に恥ずかしくなって、あたしは逃げるようにその場を離れた。

 その晩、あたしは夜遊びをせずに、幹が帰ってくるのを待っていた。
 遅くなって帰ってきた幹の制服は、ところどころ汚れ、顔や手にすり傷を作っていた。
「誰かとケンカでもしたの?」
 そう言って詰め寄ると、
「ケンカじゃない。デュエルに負けたのさ。」
 幹は薄く笑った。
「デュエル?デュエルって何のこと?」
 あたしが何度聞いても、幹は答えてくれなかった。疲れた、そう呟いて寝てしまうのだった。

 兄。お兄ちゃん。兄貴。兄さん。兄上。兄様。幹。
 この中で呼ぶとしたら、強いて言うと幹だろう。それか、なかよくピアノを一緒に弾いていた頃みたいに、お兄ちゃんかな。

 放課後、教室から校内の中庭にある温室を眺めながら、そんなことをぼんやりと考えていた。
 身体中が痛かった。昨夜、根室記念館で教会での懺悔にも似た、カウンセリングを受けて以来のことだった。
 気づくと、いつのまにか自分のベッドで寝ていたのだ。そして、あたしを心配そうに見ていた幹が側で座っていた。目を覚ましたあたしに、
「ミルクセーキ、飲む?」
 と、言ってくれた。
 うん、と涙をこらえながら、フトンで顔を隠そうとした時、頬に暖かいものが触れた。
 それはすぐに消えた。幹のキスだったのだ。はかなく、それは消えた。

 もっとしてもらいたかったのに。ずっと、頬っぺたにくちづけてもらいたかったのに。
 甘ったるいミルクセーキなんかじゃ、やだ。
 幹の、幹の優しい抱擁とキスが欲しいのに。
 あたしは素直じゃない、悪い子だ。幹に振り向いてもらいたいがために、そして構って欲しいがために、悪いことばかりしてる。

 あたし、幹のこと、好きなのに。幹だけが好きなのに。
 こ~んなに、好きなのに。

 桐生先輩から音楽室にくるよう誘われていたが、それをすっかり忘れてあたしは帰宅した。夜遊びもせず、まっすぐに帰った。
 足取りはなぜか軽く、ゴムまりのように弾んでいた。

 幹が帰ってきた。2人して、黙りこくって食事を取り、先にシャワーに入ってもらった。しばらくして、水飛沫を吹き吹き出てくると、
「もう、身体は大丈夫?」
 そう聞いてきた。あたしはにっこり微笑んで、
「うん、大丈夫。」
 幹が引きつった笑いを浮かべた。
「・・・梢のそんな笑顔、久々に見たよ。」

 そう。久々なの。あたしの決意、知ったら幹は引いちゃうかな。でも、もう引けない。後には戻れない。
 幹、あんたをあんな女に渡せない。姫宮なんかに譲れない。あんたはあたしのものだ。他の誰にも、絶対やらない。
 あんたはあたしのすべて。あたしが、あんたのすべてにならなきゃならない。
 道徳心がどうだって?世間体がどうだって?
 もう意地を張るの、疲れちゃった。悪い子の振りするの、いやになっちゃった。
 判ってくれるよね、幹、あんた・・・ううん、お兄ちゃんなら、きっと。

 シャワーで散々身体を磨いた。今までの汚れを落とそうと、必死になって洗った。
 そうして何かをつけようとして、思いとどまった。コロンも下着もいらないのだ。幹には本当の私を、裸の私自身を見て欲しかった。
 ベッドに向って、何かの本を一生懸命読んでるパジャマ姿の幹の真後ろに立った。
「あ、もう出たのかい・・・って、梢!」
 振り返った幹の唇に、そっと指を当てた。腕を取って、自分の乳房に触れさせた。死ぬ程、胸の鼓動が激しくなった。
「!・・・こ、梢!!」
 呆然としていた幹が我に帰った。その口を今度はあたしの唇で塞ぎ、そのまま押し倒した。
「や、やめろ、ボク達・・・兄妹・・・」

 最後まで聞きたくない。そんなの、判ってる。いけないこと。ううん、少なくともあたしはいけないことじゃないと思ってる。
 あたしがそう思ってるから、いいのだ。

 情熱を込めて、幹にキスをした。抵抗が弱まり、力が抜けていった。あたしは舌を絡め、必死になってパジャマのボタンを外した。
 いくつかのボタンが、飛んで行った。
 露わになった幹の胸にキスをすると、
「あ・・・ああ・・・」
 可愛いピンク色の乳首を吸った。くすぐったそうに、しかし気持ちいいらしく、幹は身体をよじっていく。
「だめだよ・・・梢・・・」
「何でだめなの、あたし、幹・・・お兄ちゃんが・・・欲しい・・・」
「えっ・・・」
 絶句したにも関わらず、お兄ちゃんはもう逃げなかったし、固くなった身体の1部分があたしに当たっていた。
 両方の胸を舐め、手でお兄ちゃんのペニスを確かめた。熱く固く、ここも、あたしを欲しがっている。欲しがっているはずだ。
「あん、熱い・・・」
 あたしがそう呟くと、お兄ちゃんは、
「こ、梢・・・梢!!」
 力いっぱい抱きしめてきた。その胸の中で、あたしは例えようもない幸福感に包まれた。
 また熱いキスを交わし、頭が官能と息苦しさでくらくらした。お兄ちゃんのパジャマを脱がせ、固く成長したペニスに頬ずりをした。
「お兄ちゃん・・・お兄ちゃんの、こんなに熱い・・・固い・・・あたし、嬉しい・・・」
 自分が何を言ってるか判らないし、どうするのかも判らなくなっていた。
 ただ、このペニスを、愛してあげればいいんだ、そう思った。
 ちゅぱ、ちゅぱあ、ちゅぷ、
 頬ずりから口の中へ。あたしの口に包まれた途端、お兄ちゃんは喘いだ。
「あっ!だ、だめだっ、ああうう!」
 あたしの髪が掴まれた。その瞬間、口の中のペニスがピクッと膨らみ、お兄ちゃんは射精していた。
「ん・・・ん・・・ああん・・・おいしい・・・ああ・・・」
 いっぱいいっぱい出た。口の中に溜まり、うっかりするとあふれそうだった。ほろ苦い精液の味を噛みしめ、あたしはお兄ちゃんの瞳を見つめた。
「こず・・・え・・・」
 そのままゴクリ。咽喉を伝わるお兄ちゃんの精液。それは今まで飲んだ中で、1番おいしいと思った。
 おっきいままのペニスにチラリと目を落とし、まだまだ元気な状態に満足して、もう1度口に含んでみた。
「あっ・・・」
 聞こえてきたお兄ちゃんの悲鳴に気をよくして、舌を巻きつけた。再び濃い精液がにじみ出し、あたしはそれを味わった。
「ん・・・ん、んっ、ん・・・ああ、おいしい、お兄ちゃんの・・・ね、気持ちいい?」
「うん・・・気持ちいい。あ、何するの?」
「あたし欲しい。お兄ちゃんの、ここに欲しい・・・」
 うなされたような声だと、我ながら思った。あたしは無意識のうちに、ペニスの上に跨っていた。
「だめだよ!」
「何でだめなの?」

 もう遅い。止められない。あたし、欲しいんだもの。身体に刻み込んで欲しいの。

「だって、ボク達は血の繋がった・・・」

 それ以上はいや。言わないで。

 お兄ちゃんの唇を貪るように吸った。そして、腰が落ちてペニスがあたしを貫いた。
「ああん、あん、す、すごい!!」
「梢!梢!!ああ、梢!!」
 真下で悶えるお兄ちゃんが愛しかった。

 その目、鼻、口、耳、全部、このペニスだってあたしのもの。誰にも渡さない。渡すもんか、姫宮、あんたにはあげない。

 お兄ちゃんが、あたしの中に射精した。身体に撃ち込まれるその痙攣を感じ取って、あたしは達した。
 甘美な背徳の甘い香り。それは心も身体もとろけるようなエクスタシーだ。
 放ったはずなのに、まだペニスが固い。今度はあたしが上で動いた。
 前後に動いて、お兄ちゃんにキスをしながら。左右に動いて、天井を見ながら。
「あん、く、くるう、くるの、お兄ちゃんのが、くるの!!」
「あ、あ、あ、梢、またいっちゃいそう・・・」
 お兄ちゃんはあたしの腰を持って、突き動かし始めた。
「いって!中でいって、いいから、いってよう!!」
 あたしは喘ぎ、狂い、達しながら叫んでいた。
「好き!お兄ちゃん!!お兄ちゃんのことが、好きっ!!大好きなの、ああ!!」
 あたしは歓喜に震えた。ただ、震えた。
 ふと、『光さす庭』の旋律が、どこからか聞こえてきたような気がした。

 

 ・・・絶対運命黙示録。

(了)

亭主後述・・・

 

コホン、コホン・・・あ、失礼しました。
全国のよい子のみなさん、2人の真似しちゃだめですよ~(笑)あくまで、「おはなし」ですからね~(爆)
「少女革命ウテナ」。これは「CCさくら」以来のショックを私にもたらしました。
「CCさくら」も、ほとんどの登場人物がエキセントリックでしたが、「ウテナ」も相当なものでした。
だって、登場人物が全部エキセントリック(違うな、エキセントリックではない、アブノーマルが正しいかも)なんですから。
今時の(結構前だって!)少女漫画って、こういう感じ?
ああ、「生徒諸君!」や「キャンディ・キャンディ」にときめいた、あのころのけがれなき私を返して~(意味不明)
話は戻りますが、正直、主人公のウテナには、あんまりいけてません。(←ひねくれ者)
その代わり、デュエリストの皆様方には、いかせて頂きましたよ。
今回書いた薫兄妹、有栖川樹璃&高槻枝織の百合百合ペア、篠原若葉ちゃんには、思い入れたっぷり、でした。
残念ながら、ビデオ屋さんの都合で(笑)、「死の棘」(第17話)の枝織話までしか見れていません。
だからクライマックスも、世界が革命されたかどうかも、果たしてこの兄妹がどうなったかも知りません。ご容赦下さい。

樹璃&枝織も萌えちゃうな~って、は!?私って百合好きだったのか!?(爆死)