グラナダの夜1 ~機動戦士ガンダム 逆襲のシャア~


 夜半に目が覚めた。急に不安になって、隣を窺うと、すうすう穏やかな寝息が聞こえていた。
・・・よかったぁ・・・
 いなくなってない、ここにいる、そう安心しながら、乱れた掛け布団を肩まで掛けてあげる。
「あっ・・・」
 布団の中から伸びた腕が、私を抱き寄せたのだ。バランスを崩して、私はそのまま、身体を預けていった。
「ごめん、起こしちゃった?」
「・・・」
「あん・・・」
 いきなりキスされた。身体がカーッと熱くなり、こちらから唇を吸い返していくと、ますます抱擁がきつくなった。
 炎が身体を走る。駆ける。痙攣する。震えてしまう。
「ああ、カミーユ!!」
 カミーユの柔らかい唇が欲しくなる。何回もお互いを重ねて、舌を絡めていくと、歯がカツンと当たってしまった。今はその痛さも、愛しくて構わない程だった。
「好きだよっ!カミーユ!!」
「ファ・・・俺のファ!!・・・」
 囁き。甘い声。もう蕩けてしまいそう。
 身体が引き寄せられて、くるっと下にさせられてしまう。下からカミーユのきらきらした瞳をただ見つめると、何だか幸せな気持ちになっていた。
「あっ・・・」
 カミーユが甘えるように、私の胸へ顔を伏せる。思いきり、私の匂いを嗅いでいる。恥ずかしさと官能が、交互に私の身体へ一斉に押し寄せていた。
 ぱちん、ぱちん、私のネグリジェのボタンが、1つずつ外されていった。
 いや、私だけじゃ、いや、そう思って下から私もカミーユのパジャマのボタンを取る。
 我慢できない。でも、もどかしい。いらいらする。じれったい。指が満足に動かない。
 カミーユにどんどん脱がされていくのに、私はまだ彼を脱がせてあげられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・手が動かない、満足に脱がしてあげられないよう、カミーユ・・・

 

「焦らないで、ファ・・・」
 余裕で言うカミーユが憎たらしい。とうとう彼は自分で外してしまった。
「ああん、カミーユ!」
 改めて素肌になったカミーユを抱きしめる。強い抱擁でその存在を確認する。
 そう、カミーユは私の腕の中にいるのだ。
 唇、耳、頬、首筋、カミーユの舌が這っていく。
「ああ・・・」
 私は目を閉じない。私を愛してくれているカミーユの姿を見失わないためにも。ずっと彼を見ていたい。
 指先がお腹を撫でる。恥ずかしい、だけどいい、構わない。もっと指が下へ移動する。
「んっ!」
 乳首が唇に含まれたのだ。
 コリコリって転がす感じ。いっぱいカミーユの唾液だらけ。私の乳房が愛されている。
 時折、軽く噛まれて私は喘ぐ。ぴりっ、ぴりって電気が走るみたい。だけど気持ちいい。
「ああ、カミーユゥ!」
 細身だけど筋肉質の身体にしがみついた。
 もう病床にいた頃のカミーユじゃない。復活したカミーユ。たくましくなったカミーユ。天才的パイロットじゃないカミーユ。私のカミーユ。
 唇を重ねながら、私を探るカミーユ。手を伸ばしてその雄々しさに触れる。
「あっ・・・カミーユが固くなってるう・・・」
「ファが欲しいのさ。」
 暗がりの中、私はきっと赤面してる、そう思った。
 恥かしい口説き文句、これはきっと陳腐な言葉。昔から言い古されてきた言葉に違いない。だけど、私への言葉。
 くちゅくちゅって水の音がする。あふれ出した私。カミーユの指が絶妙に愛撫してる。
 突起、入口、内側。ざらざらしてる私の中。
 情欲が高まって、もう頭の中にあるのは官能だけ。
「そ、そんな音させないで・・・」
 なのに、恥かしくなって私はカミーユに訴える。
「誰にも聞こえないから、いいよ、もっと声出して。」
 魔法の指が私を高める。まるで楽器を奏でてるかのよう。
 だめ、だめっ、私は快感を否定する。だが、カミーユの指が愛液に埋もれ、ぴちゃぴちゃ音を立てると、もっとしがみついちゃう。
「あっ!あっ!だめ!!・・・んうっ!」
 快感が魔法の指によって膨らむ。大きくなる。
・・・も、もう、いじわるしないで、カミーユ!!・・・
 目を開いてカミーユに訴えた。私の懇願が届いたのか、指と舌で充分愛されていた身体が、優しくベッドに横たえられた。
「いくよ・・・」
「うんっ・・・」
 カミーユのペニスが当たった。ひどく熱くて、ヤケドしそうだ、そう思ってしまう。そのままぐっと私の身体を引き寄せると、ペニスが私の中へ入ってきた。
「あっ、ああんっ!!」
 膨れ上がったペニスの外周部が、私を責め立てている。抽送する度にどんどん深部に突き刺さり、侵入されていた。
「いい、いいよっ、カミーユ!」
 必死にしがみつく私。もう離さない。離れない。離してあげない。
 どっかいっちゃやだ。いなくなっちゃいや。ああ、カミーユ、私の恋人。
 もっと抱いて。もっと突いて。離さないで。毎晩、ずっと私を愛して。
 他の誰も見ないで。私だけ愛して。きつく抱きしめて。
 じゅぷ、じゅぷ、ずぶっ、
 はしたない音。ああ、こんな恥ずかしい音させながら、私は悶えてるんだ、そう思いながら抱かれてる。
「ああ、いい、いい!」
 上から汗だらけになったカミーユの視線が、私に注がれてる。
・・・見られてる、私の顔、ああ、恥ずかしい・・・
 でもいい。もっと見て欲しい。私のすべてを見て欲しいのだ。
 羞恥心と快感、交互に支配されながら、私は高まっていく。
「ああ、ファ、ファ!」
 カミーユ・ビダン、そのペニスが私を操っている。
 子供の頃はよく女の子にも間違えられた端正な顔、名前(これを言うと怒るけど)、ああ、愛しい。愛しくて仕方がない。
「痛くない?」
「あっ、あっ、ん・・・い、痛くないよ・・・あん、カミーユ!!」
 叫びかけた口がカミーユに塞がれる。息が苦しくなっても、私はひたすらキスを求め続けた。
 もう何回も身体を合わせるようになったけど、気持ちいい。2人して未知の分野を切り開いてるようで、その度に発見があるような気がする。
「あん、だめ!!だめっ!」
 とうとうキスをやめて私は叫んでしまった。カミーユが低く身体を倒し、私の耳元に突っ伏していた。
「ああ、俺も、俺も、ああ!」
「うんっ!いいよ、カミーユ!!一緒にいって、ね、ああ、あ、あん、い、いいっ!」
 背中を抱きしめた。汗ばんだ身体が心地いい。
 カミーユの律動が更に早くなり、もう私は、私は、私は・・・
「あ~ん、だ、だめえ!!」
 ペニスがぐいんと膨らんだ気がして、慌ててカミーユが離れようとする。でも私はぎゅっとしがみついたまま、彼を逃がさなかった。
「あ!」
 カミーユが短く叫んで、私の体内に射精していた・・・

 愛の交歓を終えてから、シャワーを出てベッドに戻ってみると、カミーユはもうすやすやと寝ていた。半分呆れながらもベッドサイドに近づいて、その寝顔を覗きこむ。
 穏やかな寝顔だった。軽く口を開けている。可愛い寝息が聞こえた。
「フフフ。」
 何故か笑ってしまった。今、この幸福に浸っていたかった。長く続いて欲しい、心底そう思った。
 頬にちゅっとキスしても目覚めないカミーユの隣に潜り込んで、私は眠ることにした。

 患者の申し送りを終え、夜勤が明けた。身体に疲労が残っているので、背伸びをしていると、
「お待たせ。」
 白衣のカミーユが待ち合わせ場所にやってきた。彼も私と同じく徹夜明けなので、うっすら無精髭が伸びていた。
 2人並んで公園のベンチに座っていると、グラナダ市は朝の通勤時間帯を迎えていて、人通りが段々激しくなってきた。
「カミーユ、今度いつ出勤?」
「う~ん、夕方に行くんだ、家帰って寝たいよ。ファは?」
「へへ、私は明日の朝、通常勤務だよ。」
「ずるいな、ファは・・・さあ、帰ろうよ。もうヘロヘロなんだ。」
 ベンチから立った私達は、バス亭まで向う。オフィス街に向う人々の群れとは逆に郊外へ向う路線のバスだった。
 途中、これから出勤する同僚に会ったりする。
「フランクさん、おはようございます。夜勤お疲れ様でした。」
「あ、おはようございます。」
 カミーユが挨拶を返す度に私も会釈する。私の同僚だったりすると、
「ユイリィ、おはよう。」
「おはようございます、お先に。」
 カミーユも頭を下げる。もっとも今の彼は、あのカミーユ・ビダンでは、ない。フランクという医者の卵だ。姓は私から、フランクという名前は、カミーユの父からとったのだ。私が考えたのだが、最初カミーユはひどく嫌がったものである。カミーユと彼の父、フランクリン・ビダンとの間にいろいろ葛藤があったのは、私だって知っていた。
 だが、いざグラナダで生活していくには、カミーユ・ビダンの名前は余りにも有名過ぎた。
 グリプス戦役の英雄、カミーユ・ビダン。エウーゴの少年天才パイロット、カミーユ・ビダン。悲劇のニュータイプ、カミーユ・ビダン。
 恐らくこの名前を知らないスペースノイドはいないはずだ。
 グリプス戦役の終了時、私は精神崩壊を起こしたカミーユと地球のダブリンに降りて、治療に専念した。アクシズのネオジオン軍によるコロニー落としを辛くも避けた私達は、カミーユと第1次ネオ・ジオン抗争(ハマーン戦争)の終結とともに、また宇宙に上がったのだ。
 そしてブライト艦長の尽力で、新たにカミーユの戸籍を取得し(それがフランクという名前だ)、グラナダで生活しているという訳である。ブライト艦長のおかげで、私は看護学校へ、カミーユは医者の学校へ行き始めた。
 先にダブリンで実習経験のあった私は、半年程前から正規看護婦として勤務していた。一方、カミーユの方は・・・まだまだ、だった。正式な医者と共に臨床には参加するが、未だ学生であった。故に私の細腕で暮らしている、ということである。彼にはそれが面白くないみたいだった。

 バスに乗って15分程で家に到着する。アパートの前に見慣れない高級エレカを見かけて、カミーユがおや、という顔をした。
 エレベーターを降りたヘロヘロの2人が部屋に着くと、非常階段用の扉がギイと開いて屈強そうな大男が1人出てきた。ダークスーツを着て、サングラスをした大男が、ドアの鍵を探していた私に近づいてくる。
「・・・失礼、ファ・ユイリィさんと・・・カミーユ・ビダン君ですね?」
 風のようにカミーユが私と大男の間に割り込む。
「近づくな!」
 空手の構えを取ったカミーユに、大男が困ったような表情を浮かべた。
「おお、驚かせて申し訳ありません、危害を加えるつもりはまったくないのです。」
 少なくとも悪い人ではなさそうだ、でも何故カミーユの本名を知っているのか、それが疑問だった。
 カミーユも同様に思ったらしく、大男をまだ警戒し、構えを崩さなかった。
「あなたがたに会いたいという人がいるのです。」
「・・・誰だ?」
 険しい声でカミーユが言った。
「そ、それは・・・」
「名乗れないなら、会う必要もない!」
 カミーユが大男ににじり寄る。大男は困ったように手を広げた。
「ああ、悪いお話ではないのです。」
「・・・どうだかな、誰だ、俺達に会いたいっていうのは。」
 カミーユの厳しい問いに大男は後退った。
「言えないのか!」
 その瞬間、もう1度非常階段の扉が開いて、また1人の男が出てきた。スーツ姿でサングラス、というのは大男2人と一緒だったが、やけに高そうな紳士服を着ていたし、小柄だった。それでも大男と比較して小柄、というだけで、カミーユよりも遥かに身長が高い。
「相変らずだな、フランク・・・いや、カミーユ・・・それに元気そうで何よりだ、ファ・ユイリィも。」
 オールバックの金髪を輝かせて、サングラスを取ったその男が言った。
・・・見覚えがある・・・誰だろう、私、知ってるはず・・・誰、誰・・・・
「あ、あなたは・・・」
 カミーユの声が高くなった。だがすぐに声のトーンが下がって、
「ク、クワトロ・バジーナ大尉・・・」
 とだけ言った。 

「いやあ、済まないな、徹夜明けなんだろう?」
 クワトロ大尉は屈託なく笑った。私達2人を目の前にして、小さな部屋のソファに座っていた。
「コーヒーどうぞ。」
「ありがとう、ファ・・・しばらく見ないうちにますます美人になったね。」
「そ、そんな・・・ありがとうございます、お世辞でも嬉しいです。」 
 クワトロ大尉は、本当に優雅に振舞っている。まだ、私がエウーゴのパイロットだった頃は、優雅な中にも戦う男のイメージがあったが、今は違う。
 紳士そのものだった。恐ろしくハンサムな紳士だった。
 渋いのに、その動作の中に猛獣のような気配を漂わせている。いや、猛獣ではない、色気だ。男の色気だった。
 確か、まだ30代半ばくらいのはずだ。
 しばらく、カミーユと差し障りのない話題に終始している。グラナダはどうだ、こんなモノが流行しているなど、当たり前の話をしている。
 大男が、守護神よろしく、おとなしくクワトロ大尉の後ろに立っている。コーヒーカップを渡すと、恐縮しているように何遍もその大きい身体を折り曲げて、私にお礼を述べた。
 大男がコーヒーを啜るのを見てから、おもむろにクワトロ大尉が言った。
「テレビを見たいが、いいかな?」
 何でテレビ、そう思う間もなくカミーユがスイッチを入れた。そしてくだらない映画を上映しているテレビの音量を大きくするのだった。
「やっと本題ですね、クワトロ大尉。」
「ふっ、さすがはカミーユ・ビダン。」
 あっと思った。テレビを点けるまで、2人は互いの名前すら呼ばないでいた。
「これで盗聴されないだろうな。少々やかましいが私の話を聞いてくれ、カミーユ、ファ。」
「と、盗聴?!」
 私が声を荒げると、クワトロ大尉は、
「そうだ。君達はずっと連邦軍の監視下にあるのだ。知らなかったのか?」
 私が知らなかったと言うと、
「あのアムロ・レイですら、1年戦争後はずっと北米に軟禁されていたのだ、ましてカミーユとファだって、監視されていても盗聴されていても不思議じゃあるまい?」
「カミーユ、知ってた?」
 カミーユはうなづいた。
 何てことだ、私だけ知らずにいたのだ。お間抜けさんだ。恥ずかしすぎる。
 監視と盗聴の件を私に教えてくれなかったカミーユに、だんだん腹が立ってきた。
・・・いやだわ、ずっと監視されてるなんて。!ま、まさか盗聴って、私達のベッドルームにまでされていたのかしら!?・・・
「盗聴器?まさか家中に?」
 カミーユが口を開く前に、クワトロ大尉が答えてくれた。
「計測したらあちこちにあるみたいだな・・・変わってないよ、連邦のやり方は。まあ、アムロのように軟禁されるよりはマシというものだがな。」
 うう、きっとベッドの側にもあって、私達の夜も盗み聞きされてるんだわ、急に悲しくなった。カミーユは、それを知りつつ、私を抱き続けてきたんだろうと思ったら、もう泣きそうだった。
「・・・で、クワトロ大尉、今日いらしたのは、そんなことを教えに来たわけじゃないでしょう?」
 その言葉にクワトロ大尉はカップを置いた。これから、何か大切な話が始まるという予感がした。
「連邦が、サイド5のスウィート・ウォーターを難民用に開放したのを知っているか?」
「ああ、ええ、知ってます。」
 私も知っている。密閉型とオ-プン型を接続させて建造された不恰好なコロニーだ。宇宙難民のために、間に合わせで作られたひどい代物だった。それはおよそ人々が住む場所ではないと聞いていた。
「何でもひどい所だそうですね。」
「連邦のいつものやり方さ。人口密度、環境、その他すべてが最悪の場所だ。」
 とクワトロ大尉は吐き捨てるように言った。
「・・・スウィート・ウォーターってのは、名前ばっかりですか・・・」
「ああ、連邦は、それを作ったら後はもう知らんとばかりに、管理さえ満足にしない。人間を閉じ込めたら、もう終わりってワケさ。許すことのできない犯罪行為だ。」
「・・・大尉・・・まさか・・・まさか大尉は、戦争を起こすつもりじゃないでしょうね!」
 挟んだ机に身を乗り出してカミーユが言った。クワトロ大尉は少し驚いた顔をして、それから笑った。
「驚いたな・・・いや、さすがはニュータイプ、といったところか。」
「ふざけないで下さい!」
 激怒した声にもクワトロ大尉は動じなかった。
「そうだ。その通りだ。」
「あなたって人は!」
 カミーユが絶句した。
「ぬるま湯に漬かった連邦の地虫どもに、鉄槌を食らわすのだ。」
「・・・考えてもみて下さい、1年戦争からこっち、何人もの人が死んだと思っているんです!?」
「だからこそ、だからこそ・・・もう2度と戦争を起こさないようにするのだ。恐らく、これが最後の戦争となるだろう。」
 自身ありげにクワトロ大尉が言い放つ。カミーユが大尉の胸倉を掴んで、拳を振り上げた。
「貴様、修正してやるっ!!」
 だが、カミーユの拳は届かなかった。例の大男が素早く動いて、カミーユの拳を掴んだのだ。
「離せ、こいつを殴ってやるんだ!離せ、離せったら!!」
 カミーユが暴れても、大男は離そうとしない。その間にソファに座り直したクワトロ大尉が、目で大男に指示すると、ようやくカミーユの腕を離すのだった。
「はぁ、はぁ、大尉、やめろ、戦争なんて・・・」
「では本題に入ろう。ずばり、カミーユ・ビダン、私に力を貸せ。」
「え!」
「!」
 クワトロ大尉が平然と続ける。
「このままグラナダで、連邦のクズどもによる飼い殺しの生活を受けていてもしょうがあるまい。それよりも、私に力を貸せ。一緒に連邦を倒すのだ。」
「大尉、大尉、あなたが何を言っているのか、全然判りません・・・」
 消え入るような細い声でカミーユが言う。顔が蒼白になっていた。
「優秀なパイロットが必要なのだ。グリプス戦役の英雄、少年天才パイロットだった、カミーユ・ビダン、お前の力を欲しているのだ。私は知っているぞ、カミーユ。」
「な、何を知っているんです?」
 クワトロ大尉が身を乗り出した。
「あの戦いで、カミーユが廃人になってから直るまでのすべて、をだ。」
「大尉・・・」
「連邦はお前に何をしてくれた?ファの献身な介護だけが、貴様を治してくれたのではないか?違うか?」
「・・・」
 カミーユは何も言えなくなって、がっくりとうなだれた。
「ファだけがお前を癒してくれた、だが連邦は何をした?してくれた?・・・お前を追いやるように地球に降ろして、知らん顔だ。治ったら治ったで、今度は、アムロと同じように監視付きの生活だ。スウィート・ウォーターの件と変わりあるまい。」
 クワトロ大尉は机を回って、うなだれたままのカミーユの肩に手を置いた。
「カミーユ、私と一緒に来い。真のスペースノイドによる自治を獲得するのだ、私に手を貸せ。」
 だけどカミーユが下を向いたまま、何も言わなかった。そんな彼を見ていたら、何かが私の中で弾けた。
「や、やめて!!大尉!!」
 カミーユに抱きついて、私はクワトロ大尉を睨んだ。
「もう、カミーユを連れて行かないで!そっとしておいて!監視されたっていいじゃない!!盗聴されたって構うもんですか!」
「ファ・・・」
 クワトロ大尉は、私の剣幕にたじろいだ。
「今は、生活だって豊かじゃないけど、それなりに幸せなの!放っておいてちょうだい!!カミーユと私のささやかな生活を壊さないで、お願いだから邪魔しないでよう!!」
 最後は泣き声になっていた。目から熱いしずくが落ちて、視界がぼやけていた。
「・・・今日のところは退散するとしよう。カミーユ、しばらくグラナダのホテルに滞在している、その気になったら来たまえ。」
 そう言って、クワトロ大尉はボディガードの大男と出て行った。
 私は、カミーユを抱きしめながら泣いた。2人で号泣した。不思議なことにカミーユまでが泣いていた。

 ひとしきり寝た後、シャワーを浴びてから、夕方病院へ通うカミーユのために、夕飯を用意することにした。
 夕食の準備をしていると、不覚にもまた涙がこみ上げてきてしまった。
 大尉が、クワトロ大尉が憎かった。やっと回復したカミーユを、再び戦場へ誘おうとする大尉が憎かった。いやそれよりも、ようやく鎮静化した宇宙に、戦争の嵐を起こそうとするクワトロ大尉が憎いのだった。
・・・大尉のばか!ばか、ばかっ!!・・・
 そうだ、連邦軍に密告して、クワトロ大尉を捕まえてもらったらどうだろ、なんてことを考えながら、支度していると背後に人の気配を感じた。
 振り向くと、カミーユがバスタオルを腰に巻いたままで立っていた。
「あ、起きたのね、ごめんなさい、急いで作るから・・・」
 いきなり抱きしめられた。
「ど、どうしたの、カミーユ!」
「・・・ファはどう思う?」
 バスローブの上から肩にキスされた。くらっとするものを感じながら、
「何のこと?・・・今日のこと?」
 私を抱きしめながら、カミーユがこくんとうなづいた。
「行かないで、絶対!!・・・お願い、もう2度と私から離れないで!グラナダで勉強しよ?グラナダがいやだったら、どっか違う所行ってもいいから、ね?」
 返事がない。だけどカミーユの手が私の胸をまさぐっていた。
「カ、カミーユ・・・?」
 また返事がない、しかし今度はお尻に何か固いものが当たってる気配がした。
・・・あ・・・カミーユ・・・おっきくなってる・・・
 私はカミーユの手を振りほどいて、ちらっとバスローブの裾をめくってみせた。
「・・・いいわ・・・きて、カミーユ・・・」
 カミーユが途端にむしゃぶりついてきた。頭の隅に盗聴器のことが浮かんだが、今は素直にこのまま彼に抱かれよう、と思った。

 キッチンに手を置いたまま、お尻を高く上げてカミーユを誘う。バスローブが肩からふわっと落ちて、床へ流れるように落ちていくのがセクシーだな、と思ったりした。
「きて、早くぅ・・・」
 唾を呑む音が聞こえたかと思うと、私への愛撫に熱中していたカミーユが腰をあてがった。じわっと身体の中が濡れたような錯覚がして、頭の中がくらくらする。
「ファのここ・・・すごく濡れてるよ・・・」
 言われなくたって判ってる。さっきから、さんざん愛撫され続けていて、私はもう身体が疼いてしょうがないのだった。
「ねえ、早くきてよぉ、あ・・・」
 私の哀願にカミーユが応じた。一気に、奥までずぶっと挿入したのだ。
「あっ、あっ、ああん!あっ、あ、やだあっ!」
 腰を掴まれて、カミーユが私を突く。凶器のようなペニスが私の体内で跳ね回っているのだ。ギシギシとキッチンが音を立てていた。
 時々、乳房の先を摘まれて快感の渦が増幅されてしまう。
「ああ、ああっ、あ、あ、ああ!!」
 商売女のようにカミーユを誘惑した私。ましてこの私の喘ぎ声だって、きっと連邦の諜報部員に盗み聞きされているに違いないのだ。それからこのクチュクチュっていやらしい音さえも。私って、何ていやらしいんだろう、そう思った。
・・・いいわ、せいぜい興奮させてあげるから、ずっと聞いていなさいよ、ほら、ほら・・・あ・・・ああ・・・ああっ!!・・・
「もっと、して、してよっ!カ、カミーユッ!!あ、いいっ!」
・・・だめ、だめ、ああ、もう、も、もう、ああ、感じちゃうよぉ~・・・
 達した。いってしまった。でもまた、すぐに次の昂ぶりが訪れている。
「可愛いよ、ファ、もっと感じてよ・・・」
 耳元に甘い言葉が囁かれる。
「あ、だめ、私またっ、あ、あ、あ、あ、やん、ああっ!!」
 快感のせいで、腰ががくっと崩れてしまう。
 笑いながらカミーユが、今度は私をキッチンの流し台の上に座らせた。いや、道具のように乗せられた、と言う方が正しいのかもしれない。
 恥ずかしさでいっぱいになる。でもカミーユと密着できるから、こっちのほうがいい。
「あうっ!!」
 私はカミーユに抱きついてしまう。お尻を浅く乗せて、彼のペニスを深く受け入れるのだ。そのまま、キスしながら身体を貫かれていくと、
「ファ、ファ、もっと声出して、感じて、気持ちよくなってよ。」
「うん・・・でも・・・あ、ああ、あっ、は、恥ずかしい・・・」
「いいさ、可愛いよ、ファ!」
「うん・・・嬉しい・・・嬉しいよう、カミーユ、私を愛してよ、愛してよ、ああ、もっと・・・あ・・・いい、あ、もっと、愛して・・・ああっ!!」
 カミーユが身体を揺らす。激しく突く。そんなに動いたら、私、またいきそう、ああ、だめ。
「あん、いく、いくう!!」
 カミーユが呻いた。私の中でペニスが弾け、そのまま彼の射精を受けていた。
 私は離れたくなくって、そのままカミーユにしがみついていた。彼のキスを受け、ああ、何て幸福なんだろうとさえ思っていた。

 結局、カミーユは、しばらく病院へ行くのを休むことになった。

 

(続く)

 

亭主後述……
みるみるさんから刺激と感銘を受けた、その後のカミーユとファでございます。
あれえ……話が、何だか変な方向に進んでるなぁ。
私はシャアが好きなのか、きらいなのか、よく判りませんが、結構使ってしまうキャラなんです。(笑)
シャアっていじり甲斐があるでしょ、鬼畜でもロマンチストでもあり、大言相互でもあり……
本当はいい奴なんでしょうがねえ……あ、しまった、カミーユとファのお話だったんだ、これは!
さて次回、カミーユとファのロマンスはどこへ行くのか。そしてカミーユはシャアのスカウトという魔の手に陥るのか!
ま、映画通りなんですけどね。(笑)
カミーユとファのファンの主婦さんから、ステキな挿絵を頂戴しました。ファの黒髪がいいです!
ありがとうございました。