俺は見ていた。
牢屋の奥で、白いものがうにうにと蠢いているのを。日が差さない、暗くじめじめした監獄で、湿気のこもった最下層の地獄で。
最初はモンスターだと思った。だから、俺は腰のミスリルナイフを引き抜いて、用心した。
だんだん暗闇に目が慣れていくと、白いものは、2つの物体に挟まれているのが判った。目をこらしてよく見ると、白いものの正体は女だった。
何のことはない、監獄の看守達が囚人の女をオモチャにしていたのだ。
ケッ、ガストラ帝国のクズどもめ、よってたかって、かよわい女に無茶しやがって。
そう思って、俺は引き抜いたミスリルナイフを、女を強姦するのに熱を上げてる看守達に突き刺そうと思ったが、止めることにした。
俺は反帝国組織、リターナーに身を投じた者。偵察のために、帝国占領下に置かれたこの町、サウスフィガロに潜入している途中だった。
強いて危ない橋を渡るまでもないのだ。このまま、おとなしく身を潜めていれば、女をいたぶるにも飽きて、看守達はいずれどこかへ行くだろう。その時に脱出すればよいのだ。
そう自分に言い聞かせて、じっと凌辱の光景を見つめていた。
後ろから看守に貫かれてる女は、年の頃なら18か19。恐らくは、20才を越えてはいないだろう。ボロキレ同然の、薄汚れて血まみれになったシーツみたいな布だけを身体に巻いていた。それをたくし上げて、看守の1人が女を犯しているのだった。
「う、う、う、ぐ、う、あ、ああ・・・」
女の顔が見えなかったのは、前からもう1人が女の口にペニスを突っ込んでいるせいだった。苦しくなったのだろうか、女が顔を上げた。
「へへ、最高の女だぜ。」
「ほら、よがってないで、口を使わねえか、女将軍様よ!」
「く、く、お前達、こんなことして、ただで済むと思って・・・あ、ああ!」
後ろの看守が、腰を思いきり突いたらしい。どうやら女の身の上は、前は帝国の将軍にして、今はなぜか囚人のようだった。
「余計なこと言わねえで、集中するんだ、こら!どうせ、お前は明日になったら、処刑されるんだからよ!」
女が悲鳴を上げた。
「どこがいいんだ?ええっ、ここがいいんだろう?」
「どうだ、相棒、女将軍様の具合は?」
女の口に無理矢理ペニスを押し込んだ看守が、後ろで突きまくる相棒に聞いていた。
「さ、最高だよ、とろけそうだ。」
看守は恍惚感に満ちた顔になった。
「ひひ、こんなきれいな顔してても、初物じゃねんだから、驚きだよな、え、将軍さんよ。」
「小さい時から皇帝陛下に仕込まれたらしいぜ、ルーンナイトとしてももちろん、奴隷としてもな。」
「ひえ~じゃ、俺っち達は、皇帝と兄弟ってことか?」
「ま、そういうことだ、どうだ、ビックリしたか?」
「あ、あ・・・わ、私を馬鹿にするな・・・あ、くう、あ、ああ、あっ、あ、も、もう!!」
「ほらあ、口でしゃぶらないと、終らないぞ、いつまでも。」
一瞬、苦悶に喘ぐ女の顔が見えた。美しい金髪の娘だった。
俺は胸の奥で何かが騒ぐのを感じた。ミスリルナイフを握る手がいつのまにか、汗でびっしょりになっていた。
「へへ、美貌の女将軍のきれいなお顔に、前から掛けてみたい、と思ってたんだ、うう、そら、味わいな!!」
「あ、あ、熱い!」
女が喘いだ。口でさせていた看守は、大量の精液を放ち、女の顔や金髪を汚していった。
「う、う・・・」
唇の端から精液を地面に垂らした女は、力尽きて顔を伏せた。しかし、尻を高く持ち上げさせているもう1人の看守は、まだまだ終らないようだった。
「あ、ああ、ああん!!あ・・・うぐ・・・」
女の声が途切れた。
放った男が、用を終えてうなだれつつあるペニスを、女の顔になすりつけたのだ。2回、3回、4回と執拗なまでに看守は押し当てた。
「ぐ、ぐ、あ、あっ!」
男がようやく離れ、精液で濡れ汚れた女の顔が、地面に沈んだが、
「あ、ああ、いや、やあ!!」
背後の看守の責めに、再び持ち上がっていた。
「へへ、俺っちので、感じてやがるぜ。おらおら!」
女の顔に、苦悶とそうではない何かが同時に現れていた。俺は、虜囚の女が次第に感じているのだと気づいた。
「だ、だめえ、だめえ!!」
歪んでいた眉根にあった苦痛のしわが消え、歓喜に呆けた表情が浮かび上がった。
そのまま女は半身を反らして、看守の突きを食らい続けた。
「あ、あ、あ、ああ!!」
大声で、女は叫んで果てた。同時に後ろの看守が引き抜いたペニスを、女の顔に当てて射精した。
女の顔は、看守達の欲望でドロドロになってはいたが、それでも美しいことに変わりはなかった。
その後看守達は、攻守を入れ替えて、さんざんに女を凌辱していった。女はくたくたに疲労している様子だったが、それでも時々、かぼそくも高く、そしてせつない声を振り絞って哭き続けた。
「おお、も、もう充分だ!」
「俺っちも、もう煙も出ねえ、あ~くたびれたあ!」
女をいたぶるのに飽きた看守達は、ようやく腰を下ろし、動かなくなった女をよそに、猥談を始めた。
そのうち、片方がうつらうつら頭を揺らし出した。疲れが出たと見えるらしく、居眠りをしているのだ。
もう1人は、しばらくタバコを吸って起きていたが、やがて外へ出て行った。
物音が聞こえなくなったのを確かめてから、俺は、ようやく緊張させていた筋肉を弛緩させた。そして看守が完全に眠っているのを確認して、牢屋に忍び寄った。
汗で手が汚れるのに我慢して、看守の腰から牢屋のカギを奪い取った。音を立てないよう注意して、牢屋の中に入った。
「おい、起きれるか、おい!」
小さい声で囁くと、完全に気を失っていたのではないらしい女が顔を上げた。
白く、美しい顔だった。精液にまみれ、ホコリで薄汚れていても、そして拷問を加えられた傷があるにもかかわらず、はかなくて美しかった。
「!」
「しっ、声を出すな、看守に気づかれる。」
女の肩に身体を貸して、俺達は牢屋から離れた。吐きそうな異臭と、身体にべっとりとついてしまった体液に、俺は心の底で悪態を吐いた。
「・・・盗賊か?」
牢屋の隣の倉庫らしき部屋に入ったところで、女が口を開いた。
「トレジャーハンターって呼んでくれ。俺はロック、リターナーのメンバーだ。」
「・・・わ、私はセリス。帝国の将軍だ、いやかつて将軍だった。」
セリスが目を床に落とした。
若い女の身の上で、帝国の将軍か、俺はしばらく思案してから尋ねてみた。
「その将軍様が、どうして牢屋で拷問、それで明日、処刑になるんだ?」
「・・・帝国のやり方に疑問を持った。ただ、それだけのことだ。」
「そうか。」
俺は短く答え、うつむいたままのセリスに目をやり、これからのことについて考えてみた。
どっちにしろ、セリスは処刑される運命にある。反帝国組織リターナーに連れ帰っても、不都合はあるまい。帝国の内情に詳しいのだ、きっと役に立つだろう。
それに、と俺は思った。
女を見捨てることはできない。
「さあ、行くぞ。」
「え?」
「さっさとこの町からおさらばするんだ、さあ、早く。」
「待て、私は行けない・・・足手まといになる・・・置いて行け!」
女の足から血が出ていた。俺は予備のバンダナを取り出して、女の足下に屈んだ。
「な、何をする!」
ビクついた顔のセリスが足をどけようとする。俺は逃がさずに、そのか細い足を掴んだ。
「あっ・・・」
白くきれいな足に、俺は一瞬だけ目をやってから、バンダナを巻いた。
「血が出てるぞ・・・さあ、行くぞ!俺が守る。」
「な、何?」
「女を見捨てて行くのは、性に合わないんだ。さあ・・・」
決心したらしいセリスが、かすかにうなづいた。
その後、苦心しながら炭坑都市ナルシェにたどり着くと、懐かしい顔や新顔が集まっていた。
フィガロ王国の若き王、エドガー。こいつは発明家でもあり、機械狂いだ。ただ、女と見ればすぐに口説き出すのが、玉の傷だ。今回もセリスを見る目が怪しかったが、これから重大な会議が始まると判っていたから、さすがにおとなしくしていた。
マッシュは、エドガーの双子の弟にして、フィガロ王国の王位継承を巡るゴタゴタが煩わしくなって、山に篭った修行僧。熊みたいにいかついが、普段は優しくってニコニコ笑っている。いいヤツで頼もしい。
ティナ。失われたはずの魔導を使う、謎の少女だ。記憶を失っているらしい。帝国の秘密兵器ということだが。
ガウは・・・よく知らない。マッシュが旅の途中で拾った野生児だ。武器は使えないらしく、どうやって戦うのか、俺はちょっと興味がある。
東方の国ドマのサムライ、カイエン・ガラモンドは、剣士。そういえば、ドマの国がガストラ帝国に滅ぼされたというウワサを聞いた。
最後に元帝国の常勝将軍セリス・シェールと、トレジャーハンターのこの俺、ロック・コール。
そしてリターナーの指導者バナンとナルシェの兵士達がいれば、ちょっとした敵軍くらいなら平気だろう。
そう思った矢先、自己紹介をすませたセリスに、カイエンが絡んできた。
「ム、帝国の将軍?!そこに直れ、刀のサビにしてくれるわ!」
50才のサムライはそう言って、ギラリと光る刀を鞘から抜いた。
俺にはカイエンの気持ちが判った。それはそうだろう、国を家族を毒で殺されたのだ。
だが、ここでむざむざとセリスを討たせる気もなかった。
「陛下の、妻ミナの、息子シュンの仇、ここで取らせてもらう!」
怒りに顔を真っ赤に染めたカイエンの前に俺は立った。
「の、のけ、ロック、そこなる女を成敗してくれるわ!」
「・・・帝国は悪だ。」
エドガーがマントを翻し、ぽつんと言った。
「だが、そこにいた者すべてが悪ではない。」
「・・・」
振りかざした刀が徐々に下がっていく。沈黙が会議室に流れた。
帝国にいたセリスもティナも、当のカイエン自身も何も言わなかった。と、その時、ドアが開いてナルシェの兵が飛び込んできたのだ。
「大変だ!帝国が攻めてくる!!」
日和見を決めこんでいたナルシェも、紛争のご当地となってしまい、遂に帝国と戦うことを決めたのだった。
何とか帝国軍を撃退したのはいいが、今度は謎の少女ティナが氷づけの幻獣と「共鳴」(いや、そうとしか表現できなかった)し、身体を白く輝かせ飛んでいってしまったのだ。
「早く行こう!ティナを、俺はティナを守ると約束したんだ!!」
俺はフィガロ国王のエドガーと、モンクのマッシュ、そしてセリスを引き連れて、出発した。この時、セリスが悲しそうな目をしていたと、エドガーが後で俺に教えてくれた。
砂漠を潜って移動できる要塞フィガロ城は、俺の故郷コーリンゲン近くで浮上してくれた。
エドガーの計らいで、俺は思いがけず、故郷へ久々によることになったのだ。
変わらない光景、久々に会う知合いや友人、ここには、帝国の本格的な侵攻の手は及んでないのだ。空気も町並みもあの日のまま、何も変わってない。
そして・・・そして・・・彼女もきっと。
俺が地下室に降りると、医者くずれの怪しいオヤジが近づいてきた。
「ロック、久々だね。ヒャヒャヒャ。」
「ああ、彼女は変わりはないか?」
「え、あれかい?心配しなさんな、あんたの宝物は大事に大事に取ってありますよ、けっ、けっ、けっ。」
「そうか。」
「変わるも何も、ないさ、偶然できた薬で、あの娘は永遠に年を取らずに、この姿のまま。けっ、けっ、けっ。」
変な笑いをしてオヤジは向こうに行ってしまった。
「おい、ベッドで誰か寝ているぞ、誰だい?」
ベッドに気づいたマッシュが言った。
「レイチェル・・・」
俺は、眠っているかのようなレイチェルの姿を覗き込んだ。
眠るような。
そう眠るような。
2度と目を覚まさない眠り。
それは死、であった。
「お、おい、どういうことなんだよ!」
不思議がるエドガーに、俺はレイチェルのことを語り出した。マッシュとセリスが近づいてきた。
「レイチェルは帝国の攻撃で・・・こうなってしまった。」
俺とレイチェルは恋仲だった。が、あるダンジョンの探求をするのに、俺は無謀にも一緒に冒険したいという彼女のわがままを断ることができず、彼女を連れて中に入った。
その時、ダンジョンの中で足を滑らせて頭を強く打ったレイチェルは、命は取り止めたものの、記憶を失ってしまったのだ。
花を持って見舞いに行った俺を、屋敷から出てきたレイチェルは、
「出ていって!あなたが誰か知らないけれど、あなたがくると家族みんなが辛い顔をするの!」
そう言って、決して花束を受け取ろうとはしなかった。
「でも、彼女は記憶を失っただけだろ?それは可哀想だけど、身体は無事だったんだろう?」
マッシュが口を挟んだ。
「まだその後があるんだ。」
エドガーが邪魔するなとばかりに、マッシュの腰を突ついた。
傷心の俺は、またダンジョン巡りに出かけた。そうやって宝捜しに熱中さえしていれば、レイチェルのことを考えなくてすむからだ。
だけど、きれいな花や結晶を見つけた時、持ち帰って渡せばきっと嬉しそうな顔をするはずのレイチェルのことを思い出してしまって、泣けた。逆に宝物をいろいろ見つけ出す度に、彼女のキラキラと眩しい笑顔を想像して、涙があふれた。
そしてコーリンゲンの町に戻ると、更なる悲劇が俺を待っていた。
モクモクとたなびく黒い煙が遠くから見えた。俺はいやな予感がして、慌てて街に駆け込んだ。
そこら中を走り回る人々の、恐怖に歪んだ顔。
「何が起こったんだ?」
その辺にいたやつを捕まえて、胸倉を掴むと、
「て、帝国のやつら、攻めてきやがった。」
と言う。
レイチェルは、と聞くと、
「判らない、暴れるだけ暴れて引き上げちまったから・・・」
俺はみやげものの入った袋を投げ捨てて、レイチェルの屋敷に駆けつけた。が、時はすでに遅く、もうそこには、焼き討ちにあって全焼した黒焦げの屋敷の残骸しか見当たらなかった。
聞けば、帝国の先遣部隊が押し寄せ、略奪暴行の限りをして、あっという間に撤退したそうだ。
レイチェルの家族は全員殺されてしまい、彼女だけが村の医者(医者といっても、本当は錬金術にばかり凝っているマッドなオヤジだ)のところに運ばれたという。
「遅かったな、ロック。」
医者は、息を切らせた俺を見るなりそう言った。
「え?」
「たった今、レイチェルは息を引き取ったよ。」
「!」
診療所にある3つのベッド。2つのベッドの上には、見るも無惨な黒焦げの死体があり、レイチェルの両親だと思わせた。そしてもう1つに彼女が横になっていた。
「う、うそだろ、レイチェル、君が死ぬなんて!」
それほどに、レイチェルの死に顔は美しかったのだ。今にも目を覚ますんじゃないかっていうほどに。
「俺は・・・俺はまた君を・・・君を守れなかった・・・う、うう・・・レ、レイチェル・・・」
冷たくなってしまったレイチェルの手を取って、俺は崩れた。自分の無力さ、情けなさが悔しくなった。
「それ、大分前のことだろう?じゃあ、どうしてレイチェルの遺体がここに?」
マッシュが目を丸くしていた。エドガーも手を組み、ふんふんとうなづいている。
「それはほれ、この薬じゃよ。」
オヤジが、自慢そうに薬の入った壜を俺達に見せた。
「この薬はの、死者の肉体を、そのままに保存できる薬なのじゃよ。ひっひっひっ・・・」
「ぼ、冒涜だ・・・そんなの、死者に対する冒涜だ。」
エドガーが呟いた。
「うるさいわい!ロックがそう望んだんじゃからな!」
「ロック!死体を保存してどうするんだ?行き返るわけがないだろう!お墓に埋めてやれよ!」
マッシュが俺の肩を強く揺さぶった。
「・・・あるんだ。」
「へ?」
「死者を行き返らせる、秘宝があるんだ。魂を甦らす伝説の秘宝が、この世界のどこかに。」
「お前、だからトレジャーハンターになって・・・」
あきれたような目でエドガーが言った。マッシュも言葉を失っていた。セリスはレイチェルの顔だけを見ていた。穴が空くくらい、じっと食い入るように見ていた。
姿を消したティナの消息を追って、早々に俺達は出立した。コーリンゲン南の町、ジドールを目前にしてキャンプを張ることにした時、エドガーが提案してきた。
俺達は、フィガロ王エドガーの贅沢病が移ってしまったのかもしれない。彼はテントを1人1人別々に設営することを主張したのである。
「セリスは女だからいいけど、俺達は一緒でいいんじゃない?」
「お前はのん気だね、ロック。マッシュのイビキの恐ろしさ、知らないだろ?」
チッチッチとエドガーは指を振った。振り返ると、マッシュがへへ、面目ないと頭を掻いている。
「マッシュのイビキ、それはもうすごいんだぜ。フィガロ城の壁が崩れるくらいなんだから。」
「兄貴、それは言い過ぎだ、ひどいぜ!」
「わはは、すまんすまん。でもこの間、お前が泊まった時なんて、一緒に寝ていた侍女がな、地震よ、なんて大きな声で叫んで、裸で逃げだし・・・あ・・・」
「兄貴・・・バカ?」
兄弟漫才を見ているような気がして、俺はくすりと笑った。まったく一緒にいて、飽きることをしらない楽しいパーティーだ。
夜半になって酒もなくなった頃、俺達はたき火を消して、テントに入った。寝袋を広げて、ここのところ無言になりがちのセリスのことを考えていた。
「うん?」
テントの前に人の気配がしたのだ。俺は買ったばかりのエアナイフを探して手に取り、次の行動のために筋肉から力を抜いた。
次の瞬間、入口から黒い人影が侵入し、俺に抱きついてきた。エアナイフを突き立てようとして、腕を止めた。
人影は柔らかく、いい匂いをさせていたのだ。
セリス、そう呼びかけて、俺の唇は柔らかいものに塞がれた。甘く香りのいい身体から発するフェロモンのようなものが、次第に俺の脳髄を蕩かせていくようだった。
人影は俺を押し倒した。そして無言のまま、カチャカチャ俺のズボンを引きずり下ろしていく。
「や、やめろ!」
だが依然として無言の人影は、荒々しい息のまま、俺の服を脱がしていった。そして、むき出しになった俺のペニスを握りしめ、強く動かした。
「あ・・・よせ・・・」
「ん・・・んうう・・・はあっ!」
人影は、ペニスをいそいそと自分の股間に宛がっていった。どうやら、服も着たまま、するつもりらしかった。
「よせよ・・・あ・・・」
ペニスにひどく柔らかく、濡れた粘膜の感触が触れ、俺は喘いだ。そのまま、人影、いやセリスは腰を落としていく。
そして寝たままの俺の上で、腰を揺らすのだった。
「あっ、あっ、あっ、ああ!あ、ああん!!」
セリスらしい人影はそのまま、テントの天井を仰ぎ、自分で自分の胸を揉みしだいた。腰を回転させる速度を上げ、俺のペニスに花芯が絡み、どんどん締めていく。
「ああ、ああ、ロ、ロック!!」
俺は、いつのまにか下から女体を突き上げ、指で突起をこすっていた。
「ああん、ああん、い、いい!!」
熱くて柔らかくって、美しく、その上淫ら。
乱れ舞うセリスの身体に、俺は溺れそうだった。くいくい、濡れた花芯が俺を吸い込んでいく。
暗くって顔だけが見えない。
だが、サウスフィガロの牢獄で看守達に犯されていたセリスの光景が、頭に浮かんだ。
小さい頃から皇帝に仕込まれた、奴隷として。
看守達はそう喚いていた。
「あん、ああん、いい、いいの!!」
例の高くて切ない喘ぎ声を振り絞って、セリスが哭いた。そして腰の動きがいっそう激しくなり、ペニスを包む花芯の中の妖精達がザワザワ蠢いた。その濡れた粘膜に、妖精の踊りに、俺のペニスも反応を示した。
「あ、セリス、出る、俺・・・」
「あ、あ、あ、い、いい、いくう、あん、いい!!」
びくんびくん、俺に跨ったままセリスが達した。俺は身体の中に吐き出すのはまずい、と思って、急いでセリスから離れた。呆然とする彼女の口にペニスを入れた瞬間、放った。
「う、う、う・・・」
「あんあん、ああん、う、う、う・・・ん、ん、ん・・・」
口で咥えたまま、悩ましい声を出すセリス。俺はすべてを出し終え、おぼろな月の光に浮かび上がったその姿を見ていた。
「・・・ん・・・んく・・・」
咽喉を鳴らして、セリスは口の中いっぱいの俺の精子を飲んでしまっていた。その姿を見て、俺は再び欲情し、淫らな元帝国の女将軍の身体を組み敷いた。
「あん・・・」
甘えた声を出して、セリスが俺に抱きついてきた。
夜が明けるまでセリスとの行為に没頭した。彼女は1晩中、美しく、か細く、そしてせつない声で喘ぎ続けた。
「よっ、昨夜はお楽しみ!」
「え?」
「隠すなよ、聞こえたぜ、悩ましい将軍様の声がさ。」
エドガーが悪戯っぽい顔をしている。そこに荷造りしながらのマッシュが割り込んだ。
「昨日さ、女の泣き声聞こえなかったか?」
「さ、さあ、知らないぞ。」
俺がどもりながら答えると、マッシュは着替えを終えて、テントから出てきたセリスに向って、
「セリスは聞かなかったか?女のすすり泣きの声をさ。」
「ええ、聞かなかったわ。」
「おかしいなあ、なあ、兄貴、空耳かな?」
腕を組みながら、エドガーは言った。
「そうだな、お前の空耳だよ。」
荷物をまとめながら、俺はそっとセリスの横顔を見た。
昨晩の痴態のことが思い起こされ、頬が赤くなるのを感じた。
「何、ロック?私の顔、何かついてる?」
「い、いや、別に。」
「おかしな人、さあ、出発よ。」
セリスは俺との夜を覚えてないのか。
夜明けと同時、俺が何回目かに果てた後、そそくさとセリスは無言でテントを抜け出してしまったのだ。
「ロックよ。」
ジドールへの途中、小声でエドガーが囁いてきた。
「お前、目にクマができてるぜ。」
「マジ?」
「マジも大マジ。」
「くう~!」
俺は泣きそうになりながら歩き続けた。
(続く)
亭主後述・・・
久しぶりに、男性側視点から書いてみました。ぎこちなくないですか?(笑)
私の大好きな「FINAL FANTASY 6」に挑戦です。1番好きなのは、2ですけどね。
タイトルの「Famme Fatale」、FFと引っ掛けているんですが、「運命の女」という意味です。
レイチェルの亡霊に取り憑かれているロックにとって、セリスは・・・
さあて、次は、世界を震撼させたオペラだ・・・(笑)、これを見た時、ショックを受けました。
当時のSFCでは考えられなかったシ-ンでしたもんね~今でもあそこからのセーブファイルは残してあります。(笑)
一応続きまする。