アンディ・ボガード、ただいま修行中、特訓中 ~ザ・キング・オブ・ファイターズ~


 頭上から落ちてくる滝の飛沫が、熱くたぎっているボクの心を静めてくれる。
「臨、兵、闘、者、皆、陳、烈、在、前!!」
 念を篭めてから渾身の力で印を組む。不思議と水の冷たさが段々遠のいてくるようだ。
 骨法は、まだまだボクにマスターしきれるものではない。あと一歩、一歩が足らずに兄さんに負けてしまう。
 今回の山篭りの目的は心身共に鍛え直すことと、もう1つ理由があった。
 もう1つの理由・・・ボクにとって結構深刻な問題だ。他の誰にも言えないような悩みだった。
 髪の毛じゃない。それは・・・ちょっと心配だけど、ホントの理由に比べたら大したことではない。・・・気になるけど平気・・・いや、少し心配かな?滝に打たれても大丈夫かなあ?・・・兄さんは大丈夫みたいだな・・・

 違う!!もう1つの問題の方が大事だ。大きな声では言えないが、どうやらボクは「男」として今イチらしいのだ。・・・はっきり言うと、舞を満足してあげてないらしいのだ。ボクは見たんだ。聞いてしまったんだ。

 ボクがこの間日本へ帰った時、舞(註・ボクの恋人だ)とジョー東(註・ボクの親友だ)が、浮気してるのを知ってしまったんだ。
 舞を驚かそうとして、例の武家屋敷を覗きこもうとした。骨法術を活かして、ニンジャのように忍びこもうとしたのだ。床下に隠れて舞の寝室辺りまで来た時、あの声が聞こえてきたんだ。
「気持ちいい、もっとお、もっと!!」
 紛れもなく舞の声。しかもあんなよさそうな声、ボクはついぞ聞いたことがない。床下で自分の顔が蒼くなっていくのが判った。
「あああっ、あっあ、いいっ!!」
 ボクは怒鳴りこんでやろうかと思った。相手の男をブン殴ってやろうかと思った。でも、続く声に更にびっくりさせられた。
「深いのおっ!ジョー、深いところまで来ちゃってるうっ!!」
 何と相手はボクの親友にして、ライバルのムエタイ・チャンプ(註・タイで防衛戦は行ってないようだが)、ジョーだった。めまいがした。頭がくらくらした。
・・・一緒に3人で、世界最強を目指そうって誓い合ったのに・・・なぜ!
 ボクは固まったまま2人の会話を聞いていた。
「いく、いく、いくうっ!!」
 絶叫する舞の声。周りの迷惑なんて、全くお構いなしだ。いくら広い屋敷っていっても、こんなに大きい声だったら、ご近所に聞こえてしまうに違いないのだ。
 一瞬の静寂。どうやら2人は終えたらしい。だがすぐに舞の咽喉の鳴る音と
「ああ、おいしかった!」
 という声が聞こえた。舞はジョーの精液を飲んだらしいのだ。ボクなんか、飲んでもらったこともないのに・・・
「お、おい、舞・・・」
 ジョーの戸惑う声。まだ、続くのかとボクは不安になった。
「ジョーのおちんちんってカッコイイわぁ。この雁首の高さ・・・好きなの、あなたのおちんちんが好きよ、ジョー!」
 ちゅっとキスの音と濡れた舞の声。
・・・ジョーのおちんちんが好き・・・?
 ボクはあぐらをかいて、考えこんだ。
・・・ペニスだけ、好きなのか?・・・
 だが、続く舞の言葉がボクの心を粉微塵に粉砕した。
「なんか、アンディに悪いな。」
「アンディは、おちんちん以外の全部が好き。おちんちんだけは、どうしても物足りなくて・・・」
「しょうがねえなアイツも。ま、辛いときは俺様が慰めてやるからいつも、言いな。」
「ありがとう!」
 くぐもった音。秘めやかな声。
「あ~ん、だめよ、ジョー・・・」
 何がありがとうだ!あんな不埒な女、願い下げだっ!!淫乱で、スケベで、巨乳で、怒りんぼで、ヤキモチ焼きで、可愛くて、素直で・・・愛しくて・・・
 そこまで思ったら、ボクは泣けてきた。床下で号泣しそうになり、慌てて塀の外で出た。外で思い切り泣いた。すれ違う人が見たら、ボロボロ涙を流す変なガイジンにびっくりしただろう。

 結局、舞にも会わずに空港へ行った。空港へのバスの中で、ボクは考えていた。
・・・つまる所、ボクが悪いのだ。舞の欲求に余り応じずに修行に打ちこんでいたボクが。かくなる上は舞を、喜ばしてやらなくてはいけないのだ!
 確か舞は言っていた。
『おちんちんだけは、どうしても物足りなくて・・・』と。
 ようし、性技の特訓だ。
 性技と言えばやはり4000年の歴史を持つあの国だろう。あそこしかない。
 ボクは急いで北京行きの飛行機のチケットを買った。 

 北京でボクは途方に暮れていた。言葉が通じない。サウスタウン訛りの英語が全然通じないのだ。日本語も通用しない。あきらめて、ホテル紹介所の前で長い列に加わっていると、
「珍しいお人やなあ~、何してんねん、こんなとこで!」
 地獄でイエス様とは正にこのことだった。ボクは謎の関西弁を使う椎拳崇クンにばったり会ってしまったのだ。
 早速ボクは頼みこんで、拳崇クンに鎮元斎老師の所へ連れて行ってもらった。
・・・老師なら4000年の性技をご存知だろう、あ~あKOFに出てよかった~
 北京から列車で3時間、バスで4時間の所に今の鎮元斎老師の修練場があるそうだ。うんざりしてると拳崇クンがいい加減、青島ビールで酔っ払っていた。
「おんどりゃ、舞ちゃんとおめこしとんのか!!」
 まだ1本目なのに目が座っている。
「うん、ま・・・ぼちぼちね。・・・アテナちゃんとは、どうなんだい?」
 その瞬間、拳崇クンが泣き始めた。
「アテナ・・・アテナよおっ!・・・アタナとおめこしたい~!!あ~アテナ、おめこさせてんか~!!」
 中国の大地にも激しく大きく響き渡るのではないかという絶叫、魂の叫びだった。ボクは慌てて拳崇クンの口を手で塞ごうとしたが、考え直して止めた。拳崇クンの関西弁を理解できる乗客がいそうにないからだった。
 よくよく拳崇クンの話を聞いてみるとこうだった。
 何とか拳崇クンは、麻宮アテナちゃんと付き合うようになったのだが、アテナちゃんはキスも許してくれないらしかった。性欲に我慢できなくなった拳崇クンは、アテナちゃんの食事に薬(註・睡眠薬ではなく、発情するもの)を入れて、夜に迫ったらしい。最初、アテナちゃんは抵抗がなかったが、薬の効き目が薄れてくると、挿入寸前で拳崇クンのペニスを蹴飛ばして暴れたそうだ。今でも口も利いてくれない、と拳崇クンは嘆いていた。
・・・ああ、気の毒な男がここにも・・・
 アルコールが抜けるまで拳崇クンはずっと泣いていた。

「あ・・・アンディさん!!」
 修練場に付随する家で、アテナちゃんがボクを迎えてくれた。拳崇クンは、いつのまにか姿が見えなくなっていた。
「どうしたんです?わざわざ、こんな所まで!」
「北京でばったり、拳崇クンに会ってね、ここまで連れてきてもらったんだよ。」
「まあ~それは災難でしたね。」
 笑顔のアテナちゃんの額の血管がぴくぴく動いたような気がした。
「・・・で、老師は?」
「あ・・・老師に御用でしたか、残念ですね~老師は今サウスタウンです。」
「へっ?」
「何かタン老師やチンさんとも会うそうで、行ってしまいました。」
・・・がっくし、こんな所まで来て、会えないなんて・・・
「それで、何を習いにここまでいらしたのです?」
 まさかアテナちゃんに、『性技』を習いに来ました、とは言えないので、拳法の極意とかなんとか言って、その場は誤魔化した。

 その晩。
 ボクは
「アンディーはん、アンディーはん・・・」
 という拳崇クンの声に目を覚ました。ボクの寝台の近くにお酒くさい拳崇クンがいた。
「ううん・・・拳崇クン、どうした?」
「シーッ!・・・アンディーはん、わいも男や、今晩やったるでえっ!」
「何をやるの?」
 ずるっと拳崇クンがこけた。だがすぐに気を取り直して、指を1本立てると反対の拳の握りに突っこんだ。
「これや、おめこや、アテナをひいひい言わせたるわ!!・・・ほなっ!」
「ああ、そう、がんばってね。」
 ボクは眠たくなって寝台に横になった。辺りは虫の声だけだ・・・あれっ?・・・女の声がする・・・
 声が段々大きくなってきた。そうなると現金なもので、ボクは目が覚めた。そっと、廊下に出てアテナちゃんの部屋に行く。部屋の中から声がしていた。
 不知火流の要領でそっと扉を開けてみる。
「!」
「ええのか、ええのか、感じとんのか?!」
「・・・あん・・・あん・・・気持ちいいよっ!ケンスウ~!!」
 アテナちゃんと拳崇クンだった。なぜかアテナちゃんはセーラー服(註・日本の女子高校生の制服だ。マニアが大勢いるらしい)姿で首輪をしていた。スカートを大きくまくりあげて、拳崇クンは頭を入れている。頭が動くたびにアテナちゃんが
「あん・・・あん・・・ああっ!いいよっ、ケンスウ!!」
 と叫ぶ。
「ケンスウ、じゃなくて、拳崇サマと呼ばんかい、こんボケ!!」
 ぴしゃ、ぴしゃとお尻を叩く音がする。叩かれると、あの可憐なアテナちゃんが
「痛いですう、拳崇サマ!!・・・あん・・・あん・・・あっ!」
 喘いでしまっている。ふと、寝台の下を見るとえっちな本が落ちていた。
・・・そうか・・・
 やっと、ボクは事情を飲みこんだ。アテナちゃんは自慰をしていたんだ。首輪つけて、セーラー服まで着て・・・そこを拳崇クンに襲われたんだ・・・何だ、上手くいってるじゃないか~
「ほら、今度はご奉仕せんかい!」
 拳崇クンはペニスをぷるるんって露出させた。アテナちゃんの首輪を持って咥えさせると、嬉しそうに
「あむっ・・・ちゅるるる・・・ちゅぱっ、・・・おいひいですう、えんすうはまのおひんほ、ほっても!!・・・ちゅ・・・ちゅぱっ!!」
 普段のアイドル顔からはこんな淫乱な様は全く想像できないのに、尻尾を振る発情した牝犬のようにしゃぶっている。
 だが、拳崇クンの様子がおかしい。彼は顔を真っ赤にしている。そして、大きく叫んだ。
「あ・・・出るっ!出る!!」
 拳崇クンは思い切り、アテナちゃんの口内に射精したらしい。その間もずっとアテナちゃんは含み続けていた。
・・・早いぞ、拳崇クン・・・
 ボクは哀れに思った。拳崇クンはどうも早漏らしかった。その後も、アテナちゃんを押し倒して、挿入した途端に
「うっ!」
 と呻き声をあげて終わってしまう。アテナちゃんは、しょうがないなって顔をしていたが、怒り始めているようだった。
 その晩、拳崇クンは3回もアテナちゃんに挑んでいた。3回目もすぐに拳崇クンが達してしまうと、アテナちゃんは怒り出していた。
 ああ、そうか、とボクは思った。拳崇クンの列車で話した媚薬うんぬんの話は、ウソなのだ。肉体関係にはなったものの、早漏が原因でアテナちゃんが激怒したに違いなかった。
 ボクは朝、早々にサウスタウンへ向かった。そして、心の中で呟いた。
「がんばれっ、拳崇クン!」と。
 だが、人のことを応援する余裕などボクにはありゃしない。

 太平洋を横断して(韓国のキム・カッファンさんのことも思い出されたが、面倒そうなので寄るのをやめた)サウスタウンへ到着するとまずボクは、兄さんと借りているアパートへ向かった。どうせ、兄さんはいないはずさ、修行と称して荒くれどもとケンカしてるに違いないのだ。
 鍵を差込む段に及んで、ボクは中から人の気配を感じて、身を緊張させた。
 そっとドアを開く。誰も出てこない。
・・・おかしいな、ギースの手下かと思ったのに・・・強盗か?・・・
 兄さんの部屋のドアが開いていた。そこには、裸のブルー・マリーと兄さんがいた。
「あう!あうっ!!・・・くる、くるっ、テリー、くるよっ!!」
 よつんばいのブルー・マリーがよがっている。サンボとマーシャルアーツの達人も愛し合うのに夢中で、乱入者たるボクに気づいていない。
・・・いい機会だ、兄さんのえっち、見させてもらおうっと。
 後ろから兄さんはマリーを喜ばせている。
 ぱん、ぱんっ、ぱん、
 マリーは意外と巨乳だった。もちろん舞ほどではないが、動くたびに乳房が揺れて、汗がシーツに落ちていくのがセクシーだった。
 兄さんが乳房をもんだ。にゅっと柔らかそうなその手応えに満足そうだった。
「・・・もっときつくつかんで、・・・あうっ・・・あっ・・・いいよ、テリー、めちゃくちゃにしてよっ!!・・・そう、壊れちゃうくらい、あう、あうっ、あうっ!!」
 兄さんはにやっと笑いながら、マリーをえぐりまくった。マリーの口から漏れる声が高く、細く、断続的になってきた。
・・・マリーいくみたいだな・・・
「あう、あう、あう、あう、あう、あう、く・・・る・・・くるよ、くるよ、くるっ、あ・・・あ・・・ああっ、んっ!!」
 雄叫び(註・雄叫びって男性言葉だけど、使わせて)がして、マリーが達した。
 兄さんも雄々しくなったペニスを引き抜いて、マリーを仰向けにひっくり返した。
「胸にかけてよ、テリー!!」
「OK!!」
 キャップを投げて、兄さんは熱い精液をどくどくとマリーの胸に撒き散らした。うっとりとした顔でそれを指で集めるマリー。指で集めた精液をなめる仕草がとっても卑猥だった。
 そしてまだ勃起したままのペニスを、身体を起こしてマリーは口で掃除するのだった。
・・・すごいぜ、兄さん・・・!
 ボクは感動していた。
・・・あんなにペニスを固くして、あんなにマリーを喜ばして・・・さすが、ボクの目標だ、すごいぜ、兄さん!!
 胸を打つような感動を味わいながら、ボクはキスしてる2人から離れていった。

 鎮元斎老師とタン老師は、チン・シンザンの中華料理店におられる、というアテナちゃんの情報だったが、店まで行くと閉店の札が掛かっていた。
・・・しょうがないなあ・・・ああ、お腹もすいたなあ~
 ふと気づくと高級住宅街の一角に来ていた。
・・・高級住宅街と言えば・・・
 ボクは白亜の豪邸の前に立った。ガルシア財団の若き当主にして、極限流カラテの無敵の龍ことロバート・ガルシアの屋敷だった。
 ロバートも何故か日本語は関西弁だった。金持ちで、背が高くて・・・余り女の子にはもてなさそうだが、気はいい奴だった。
 ブザーを鳴らしてしばらく待つと執事が出てきて、来客中の旨を告げてくれた。
 ボクの好奇心が騒いだ。大体、ロバートは、普段は屋敷にいるはずないのだ。ボクは執事に別れを告げて帰るフリをして、屋敷に忍びこむことにした。

 ハイテクの警備装置を潜り抜け(犬に見つかりそうになったけど)、2階のロバートの部屋近くに潜りこんだ。
・・・やっぱり、ボクの思った通りだ・・・
 ベッドで愛し合う2人を見て、ボクはにやっとした。ロバートのお相手は、まだ少女のように見えるユリ・サカザキだった。
「ふう、ふっ、あん、あう、んくっ!!」
 大きなロバートに抱きすくまれて、どうしてもミドルティーンに見えてしまうユリちゃんは、小鳥のように小さくその身体を震わせていた。
「・・・ええか、ユリちゃん、ええ?」
 ロバートがひひ親父に見えてしまうから不思議だ。
「うん!・・・感じるよ・・・おちんちん、深く入ってるう!・・・大きな声出ちゃうよっ!」
 ロバートがユリちゃんの身体を持ち上げ、座位の態勢になった。見つめ合う2人は激しくキスをした。
・・・そうか、座位か・・・あれはキスできていいなあ・・・
「ほら、ユリちゃんのあそこにワイのが、入ってる・・・見てみい!!」
「・・・んう!・・・あ・・・あっ・・・入ってる、入ってるう!!・・・あん・・・気持ちいいよお!」
 ひしとロバートに抱きつくユリちゃん。
・・・ふうん、座位に淫語責め、か・・・か、感じるんだな・・・
 身体を揺するうちにユリちゃんは達したらしい。情熱的にキスする2人を見てから、ボクは引き上げた。

 その足でボクは近所の極限流ドージョーへ向かった。どうせならミスターカラテことタクマ・サカザキ、最強の虎ことリョウ・サカザキ親子の近況も知りたかったのだ。
 スタンドで買ったホットドッグをかじりながら、極限流ドージョーへ行くと、白帯の練習生達しか見当たらなかった。顔見知りの古参練習生に聞くと、最近若先生(註・リョウのことだ)は恋人を作って、稽古にも遅刻気味だ、という情報を教えてくれた。それを大先生(註・タクマさんだ)は苦々しく思っているということまで教えてくれた。相手の恋人までは彼等も知らないみたいだった。
・・・ということは、見れるかな?
 ボクは期待しながらサカザキ邸に潜入を試みた。

 恐ろしく無用心な家だった。防犯装置もなければ、鍵もない。だが、泥棒ならがっかりするはずだ。
 何にもないのだ。1枚の写真立てを除いては。写真の中でリョウの母と思しき美しい女性が笑っていた。
・・・ごめんなさい、泥棒じゃないので・・・
 と写真に謝ってから、汗臭い道着の散乱する部屋を離れて2階へ上がった。
 さすがにユリちゃんの部屋には、頑丈な鍵が2重、3重に掛けてあった。ドアには『無断で入ると、ユリちょうアッパー!!』と可愛く描かれていた。
 ユリちゃんの部屋の奥に、リョウの部屋がある。
 耳を澄ますと、艶っぽい声が聞こえていた。
・・・やっぱりだ・・・
 ボクはほくそ笑んだ。真っ最中なのだ。期待にワクワクしながらちょっとずつドアを開けた。
「はあっ!いくうっ!!」
 フィニッシュの現場に来てしまったらしい。美しい金髪が夕方の太陽に照らされている。リョウの肉体の下で喘いでいたのは、予想通り、キングだった。
「う・・・くくく・・・出ちゃうぞ・・・!!」
 リョウが弓なりになって苦しそうに言う。
「・・・いいよ・・・来て、リョウ!!・・・あんっ・・・私にちょうだいっ!!」
 がおっとリョウは叫んだ。部屋が揺れたような気がした。
・・・そうか、これが極限流の奥義、『気』なんだ・・・
 ボクは痙攣しながらキングのヴァギナ内で射精しているリョウを見て、納得したような気持ちになった。
「・・・ああ・・・リョウのが・・・中に入ってるう・・・」
 玉のような汗をかきながら、うっとりとした声でキングが言う。夢見ているような表情だった。
「あ~最高だったよ・・・」
 がくっとリョウがベッドに倒れこんだ。
 ぶちゅ、ちゅ、ちゅう、
 というキスの音がしている。ボクは突然階下に人の気配を感じて、部屋の中へ入ってしまった。キスに夢中の2人は全然こちらに気づく様子もないのをいいことに、ボクは衣装クローゼットの中へ潜りこんだ。
 !ボクは慌てて声が出そうだった。クローゼットの中は、女性の下着や服で一杯だったのだ。いい匂いのする赤いブラジャーやピンクのキャミソールを頭にかぶってしまいながら、ボクは気配を殺した。
・・・リョウの訳ないし・・・あ、キングのか・・・そうか、2人は同棲状態なのか・・・
 一方、もう1人の侵入者は誰だろうとボクは考えていた。2階へ上がってくる様子がないので、ギースやルガールの刺客ではないだろう・・・では、一体誰だ?
 ボクはキングの衣服に埋もれそうになりながら、首を捻っていた。
「リョウ!!・・・稽古指導に行かんのか!!」
 下から怒号が聞こえた。その瞬間、リョウが跳ね起きて、
「やべ!!オヤジだ!・・・じゃ、行ってくるわ、後で、またしような!」
 キングともう1度キスを交わして、降りていった。下でリョウのオヤジ・・・タクマさんがリョウを叱る声とフライパンみたいなものをひっくり返す派手な音が聞こえた。
・・・まずい・・・まずい・・・キングが服を着替えたら、ボク、見つかっちゃう・・・
 しかし、ベッド上のキングはまったく動く気配がない。ぼうっとしてるようだった。
・・・エクスタシーのまんま、腰でも抜かしちゃったのかな?
 じっとしていると階下から上がってくる足音がして、ドアがノックされた。
・・・へ?・・・キング、まずいんじゃないの?・・・裸だぜ??
「リョウが出かけた・・・」
 タクマ・サカザキがいた。
「・・・はい。」
 キングが、ベッドに横たわったまま熱っぽい視線でタクマさんを見ながら答えていた。
・・・???
「リョウに抱かれたのか?」
「はい・・・」
「何回だ?」
「・・・2回です。」
「どこに出された?」
「・・・口と中です・・・」
 タクマさんが緑の道着をするすると脱いでいく。訳が判らない。
「見せてみろ・・・」
 タクマさんが命じると、キングがのろのろと身体を起こして、大きく下半身を広げた。
「・・・感じたのか?」
「・・・はい・・・」
 ヴァギナをさらしたまま、恥ずかしそうにキングが返答する様がとてもいやらしい。
「・・・後ろを向け!」
「・・・はい・・・」
「何回いった?」
「・・・3回、いきました・・・」
 キングがむきだしのお尻をタクマさんに向ける。リョウの精液とキング自身の愛液で、そこはもう濡れているようだった。
 タクマさんがふんどしの横からペニスを出した。・・・失礼ながら、お年にも関らず立派だった。テリ-兄さんよりも太く、逞しかった。
「・・・欲しいか?」
「はい・・・」
 キングが切なげな吐息を洩らす。さっきリョウとえっちしてたのに、キングはタクマさんのペニスを望んでいるのだった。
「下さい、と言わんか!!」
「・・・はい・・・どうか太いペニス、私のヴァギナに入れて下さい!!」
 誘うようにキングのお尻が円を描く。タクマさんはくわっと短く叫んで、ペニスを押しこんでいった。
「んうっ!・・・はぁん、い、いいっ!!・・・すごい・・・太くて・・・たくましくて・・・あんっ!!」
 金髪が揺れる。豊かな乳房が波打つ。キングは自ら動いて、ペニスをヴァギナに迎え入れていたのだ。
「・・・ふん、ふん・・・まだ、小僧には負けんっ!!・・・ふんふんふんっ!!」
 タクマさんが突くと、キングは息も絶え絶えだった。もう快楽の言葉など出てこない。息を呑んで、唇をぎゅっとかみ、シーツを拳が白くなるまで握り締めていた。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ!!」
 枕に顔を埋めながら、鳴く。いや、鳴くのではない。哭いてるのだ。
・・・すごい、タクマさん・・・ペニス入れただけで、キングをいかせてる・・・
 感動だった。シンプルイズベストとは、正にこのことだ。
 後ろから貫かれて、キングは何度も到達していた。KOFで鋭い技を繰り出すあの美しき女豹が、人間凶器と恐れられるその両手両足を痙攣させながら、何度も達してるのだった。
・・・?・・・キングは、タクマさんがリョウの嫁として望んでなかったかな?・・・タクマさんってキングの義父だよな・・・え、そうなると、これって不義密通じゃあないか!!・・・それにしても気づいてないのか、リョウは・・・
 ボクは哀れに思った。だが、人のことを応援する余裕などボクにはありゃしない。急いで観察を続けることにした。
「ふん、ふん、ふん、ふんッ!」
 タクマさんとキングのリズムが短くなってきた。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、またっ、いくうっ!!」
 キングの動きが止まり、数秒遅れてからタクマさんも停止した。タクマさんもようやく射精したようだった。ゆっくりタクマさんが動くとぴくぴくキングが震えてしまう。タクマさんがスポッとペニスを抜いた。キングの高く突き上げたお尻から、内圧で押し出された白く濁った精液がゆっくり溢れ出してきた。タクマさんはそれを満足そうに見ていた。
「あん・・・精液が・・・」
 キングが慌てて、まだ硬直状態のペニスに舌を伸ばし始めた。全部欲しいみたいだった。虚ろな瞳でご奉仕を続けるキング・・・卑猥だった、いやらしかった、最高にえっちだった。
「どうだ、満足したか?」
 タクマさんが勝ち誇った顔で言った。正に親父の威厳を見せつけられたようだった。
「・・・はい・・・も、もう1度・・・」
「よし!」
 タクマさんは今度はキングを抱きかかえると、挿入したまま部屋の中を歩き始めた。歩くごとにキングが、悲鳴と甘い声を交互にあげるのだった。

・・・す、すごかったなあ・・・
 ボクは感動しながら、パオパオカフェへ向かって歩いていた。
 結局、あの後ユリちゃんが帰ってくるまで、えっちが続いた。キングは、最後の方なんて半分失神していた。ボクは、キングがシャワーを浴びに行ってるスキに2階から、スタコラ脱出したのだった。
・・・すごいなあ、あれも極限流の奥義、『気』なんだろうなあ・・・
 カフェに行くと珍しいことにダック・キングが1人で酒を飲んでいた。
「よう、ダック!」
 ボクは、サカザキ家について誰かに喋りたくてしょうがなかったのだが、キング絡みの話題はやばいので、差し障りのない冗談を言った。
「お前よ、舞ちゃんがサウスタウンに来てるぜ、いいのか、ほっといて?」
 ひとしきり話した後、ダックが言った。
「え?どこだ、どこにいるんだ?」
 ボクは思わずダックの襟首を掴んでいた。
・・・舞が来ている?・・・
「・・・苦しいって・・・手を離せ、アンディー!!」
 手を離すと地面に座りこんだダックが苦しげに話し始めた。
 2日ほど前、ギースタワーに美しい女が乗りこんだそうだった。サウスタウンでは誰も知らない人はいない悪名高きギースタワーに入っていったのは、これまた知らない人がいない女忍者、不知火舞、だった。
「舞!!」
 ボクは駆け出した。もう間に合わないかもしれないが、走り出した。
・・・ばか、ばか、ばか、舞のばか!!・・・
 ジョーと浮気をしてても、淫乱でも、ボクはやっぱり舞が好きなのだ。愛してるのだ。いくら彼女が強いといっても、魔人のようなギースには勝てっこない!!
・・・死ぬな、舞!!
 ボクは夜の闇に絶叫した。

 ギースタワーに接近した。
・・・おかしい・・・
 ボクは今、氷のように冷静だった。舞を助けたい一心だったが、心は醒めている。それが格闘家の性、というものだ。そのカンがボクに異常な気配を感じさせていた。
 いつもなら、ギースタワーの入口辺りには、下衆なちんぴら連中が警備員気取りで集まっているはずだったが、今晩に限ってその数が異様に少ない。見た感じでは、2、3人という所か。そのメンバー達も顔が、アザや最近できたような傷や包帯でひどいことになっていた。
・・・Mrビッグが殴りこんだか?・・・それとも米軍特殊部隊・・・あ、舞か、いや、まさか・・・
 悩んでいても仕方がない。ボクは姿をさらした。
「・・・おい?」
「!・・・アンディー・ボガード!!」
「餓狼だっ!!」
「片割れが来たぞ!!」
 さすがにボクの面は連中に割れているようだ。ちょっと睨むと後退していく。
 ボクは飛んでくる何かの気配を感じて、しゃがんだ。間一髪、ボクの頭の辺りを赤い棒がかすめていった。
「現れたな、アンディー!」
 三節棍の使い手ビリー・カーンだ。魔人ギース・ハワードの忠実なる番犬だった。
 ボクは身体の面を薄くして、次の棍の攻撃に備えた。相手はボクの何倍ものリーチを持っている。次が勝負だ・・・
「・・・舞はどこにいる?」
「?・・・そうか、お前、不知火舞を追って来たか。」
 突然、ビリーが棍を納めた。ボクは面食らってしまった。
「・・・お前とやる気はないぞ、アンディー!」
「な、何を考えている、ビリー!!」
 ボクは構えを崩さない。不意打ちだって連中の手段だ、用心するに越したことはない。
「・・・あの牝犬・・・じゃなかった女忍者ならもうここにはいない。」
「・・・舞はどこだ!・・・監禁してるんじゃないのか?」
「疑い深い奴だな~こっちこいよ!」
 ボクはビリーの案内でギースタワーに入った。何だか妙な感じだ。宿敵の案内とは・・・これもワナか?
 ボクは唖然とした。1階はひどい有様だった。観葉植物や、カウンター、ガラスのドアがぼろぼろでひどい有様だった。きれい好きなギースのビルとはとても思えない。おまけに内装業者が忙しそうに作業をしていた。
・・・ホントに米軍特殊部隊やMrビッグの手下が殴りこみでもしたのかな?・・・そういえば、ビリーも怪我をしていた。
「ビリー・・・怪我でもしてるのか?」
「んあ?・・・ハハハハッ、おもしれえな、アンディー、さすが俺の兄弟だ!」
「ばか言うな!誰がお前の兄弟だ、ボクの兄弟はテリー兄さんだけだ!」
「そりゃそうだ、ハハハハ!!・・・おい、見た通りだ、忍者なんていねえぞ!」
「・・・まだだ、ギースの部屋へ連れて行け!」
「判った、判った、エレベーターに乗れ!・・・お前、ブルー・マリーを最近見たか?」
 あ、マリーなら、と言いかけて止めた。危うく兄さんとのことを言いそうになって、知らないと返事した。
 警戒しながらエレベーターに乗る。憎たらしいことにビリーは口笛を吹いていた。2分ほどかけて、唯一の最上階用のエレベーターでギースの部屋へ入る。趣味の悪い東洋風の骨董品が所狭しと並んでいるが、人の気配はなかった。
「ギースはどこだ?」
「・・・残念だったな、スイスへ骨董品の買い付けに出発されたんだ。」
「何?・・・い、いつだ?」
「今朝早くだ・・・さ、もう帰れ、アンディー!」
 ボクは焦っていた。となると舞はどこだ?
「おい、舞は来たのか?」
「・・・2日程前来たよ。それで出て行ったよ。」
「本当か?」
「ああ、本当だ。・・・しつこいな、警察呼ぶぞ!」
 本当に警察に電話しかねない様子だったので、ボクは退散した。

 舞・・・どこにいる?お願いだ、無事でいてくれ・・・

 帰り道はどうやって帰ったのか判らない。降り出した雨の中、アパートに戻ると部屋の前で人影が立っていた。
「・・・ま、舞っ!」
「・・・お帰りなさい・・・」
 ボクは舞を抱きしめて泣いた。
・・・よかった・・・無事だ・・・怪我もしてない・・・うううっ!
 雨に冷たく濡れた舞を抱きしめる。
「アンディー・・・痛いわ・・・そんなに強くしたら・・・」
「ああ、ごめん、部屋に入ろう!」
 取りあえず部屋に入る。すでに兄さんもマリーもいない。
 暖かいシャワーを2人で浴びて、何とか生き返ったような気がした。
「どこにいたんだい、舞?」
 コーヒーを沸かしながら舞に尋ねる。
「・・・」
 返事がない。ボクは舞を見つめた。顔がぼうっとしている。何も考えてない、魂がないといった感じだった。
「舞?!」
「・・・ああ・・・ごめんなさい・・・私、疲れてるの・・・先にやすませてもらっていいかしら?」
「・・・うん・・・」
 後片付けをして、舞とボクの服を洗濯機に放りこんでベッドへ行った。舞がすでに寝ていた。その可愛い寝顔を見ているうちにこの数日間の苦労と疲れが思い出され、更にはペニスが膨張してきてしまった。
「・・・舞・・・舞!」
 アテナちゃん、マリー、ユリちゃん、そしてキング逹女格闘家の痴態が思い出されて、ボクは欲情していた。舞に手をかけて、起こそうとする。
「舞!」
「・・・うん?・・・何?」
「えっちしようよ・・・」
「私、そんな気分じゃないの!」
 舞はこちらも見ずに怒ったように言うと、背中を向けて毛布の中へ潜りこんでしまった。
・・・ガ~ン!!・・・
 いつも向こうから求めてくるくせに、ボクが断ると頬っぺたをぷくっと膨らませて怒るくせに・・・そんなにジョーのことが好きなのかなあ?
 ボクも毛布をかぶった。すぐ隣で寝ている舞は、とっくにすやすや寝息を立てている。舞の体温を感じているうちに、あちこち走り回って疲れきったボクも眠りに落ちるのだった。

 ちゅぱ、ちゅぷ、ちゅっぷ、
・・・何か変な音がするよ・・・兄さん・・・何だろう?
 ちゅぷ、はむっ、れろれろれろっ、
・・・何か寒いけど気持ちいいや、兄さん・・・
 はっと目が覚めた。辺りがもう明るい。ガバッと上半身を起こして、ボクは時計を見た。
・・・あ、もう2時だ・・・うわ、爆睡したな・・・って舞!
「舞!!」
 半裸の舞がボクのパジャマからペニスを取り出して咥えていたのだ。一生懸命にご奉仕していた。
「・・・アンディー・・・ごめんね、昨夜は・・・疲れてたの・・・でも、欲しくなっちゃって・・・入れたいの・・・ね、いい?」
 ボクが返事をできずに唾を飲みこんでばかりいると、我慢できなくなったのか、舞はボクに跨ってきた。
「アンディーのいじわる・・・入れちゃうから・・・んっ!」
 ボクのペニスが舞のヴァギナに吸い込まれていく。にゅぷという音に、ボクはやっと完全に覚醒したような気がした。
「んっ、んっ、んっ!」
 舞がその美しい眉をひそめて、ボクに抱きついてくる。
「アンディーも動いて・・・」
 舞の欲求に答えるべく、ボクも腰を揺らして、ペニスを突き上げる。
・・・これだ、これこそボクの舞・・・気分屋で、淫乱で、わがままで・・・可愛くって・・・お、そうだ、これってロバートとユリちゃんの体位だ・・・
 ボクは調子に乗って、ずんずん身体を動かす。そして舞の耳元でこう言ってやった。
「気持ちいい?気持ちいいかい、舞?」
 舞が?って顔をしてボクを見る。その唇にちゅっとキスをしてから、もう1回言った。
「ほら、舞のあそこにボクのペニスが・・・」
 最後まで言えなかった。舞がこっちを怖い顔で睨んでいたのだ。
「アンディー・・・うるさいよ、黙ってえっちしよ!」
「わ、判ったよ・・・」
 ボクは叱られてしまった。ロバート作戦失敗だ。
 少し気まずいので、体位を変えることにした。舞が好きなバックへ移行する。大好きなバックなので、舞は進んで協力した。
「ん、んうっ、んっ、んっ!!」
 舞の大きなお尻が揺れる様は気分いい。拳崇クンとアテナちゃんのことが思い出されて、ボクは試してみることにした。
 ぴしゃ、ぴしゃ、ぴしゃっ!
 お尻を手の平で軽く叩いてみる。そして、命令口調で何か言ってみようと思ったその時、
「もう、何よ、痛いじゃないの!」
 舞がペニスを抜いてこちらを振り返った。その口調のきつさにボクは萎縮してしまう。
「今日のアンディー、どこか変よ。・・・もういいわ、やりたくなくなっちゃった。私、出かけるから。」
 舞は、呆然とするボクを尻目に服を着始めた。拳崇作戦も失敗した。
「・・・舞が喜ぶと思って・・・色々試してみたんだけど、ダメ?」
 舞の表情が険しくなる。火に油を注いだようだった。
「・・・いい、アンディー・・・えっちは楽しくするものでしょ?」
「うん・・・」
「それを色々と耳元で余計なこと言われたりしたら、盛り上がるものも盛り上がらなくなっちゃうわよ。それに何、あのお尻叩くのは?」
 拳崇クンとアテナちゃんが、と言いかけて口をつぐんだ。
「私はね、SM趣味はないの。何かどこかで変な修行したんじゃないでしょうね!」
「ばか、言うなよ!・・・ちょっと、舞どこ行くの!!」
「買い物よ。」
「話終わってないよ、待てよ、舞!」
 舞は諦めたようにボクの目の前で正座した。
「ボクはえっち上手くないけど、一生懸命、舞にしてるつもりだよ、何だい、ばかにして!」
 ボクは切れそうだった。爆発寸前だった。さすがに浮気の件はもちだせなかったけど。
「別にアンディーは、えっちは下手じゃないわよ。」
「へっ?」
・・・どういうことだ?えっちが下手じゃない?・・・
「キスも前戯も愛撫も合格点よ!」
・・・今までの苦労は一体・・・
 だが舞が続けた。
「ただ!!」
「ただ、何だよ!」
「ペニスが・・・ペニスが固くないのが、私の唯一の不満なのっ!!」
「ペ・・・ペニスが・・・」
 舞の恐ろしい言葉にボクは絶句した。が~ん、が~んと響き渡っていた。超必殺忍び蜂を喰らったような感じだった。
・・・技術ではなく、肉体のこと、だったのか・・・
 技術は熱心な研鑚で、ある程度レベルアップ出来る。だが、肉体的なハンデは人間の努力の範疇外だ。
「そうよ、ペニスの問題!!固~いペニスが1番なの。・・・でも私はアンディーの恋人よ、今までも、これからもずっと。」
 変な慰め方だ。
「ペニス・・・ペニス・・・ペニス・・・ペニス強化法・・・」
 ボクは呟いていた。
「・・・でも残念よね~アンディーのペニスがも少し固かったら、私達は最高にして、完璧な美男美女カップルなのにね~ああ、ギースとは言わないまでも、ジョーやビリーみたいに・・・あっ!!」
「舞・・・今何て?」
「な、何も言ってないわ・・・じゃ、じゃあ、出かけるわ!」
 ボクはアマレス選手のように舞の足にタックルした。弾みで舞が倒れこむ。
「・・・ジョーとの浮気は知ってるけど。」
 ボクは身体をずらして舞の胸の上に跨った。いわゆるマウントポジションってやつだ。Tシャツの下で大きな乳房がむにゅとたわんだが、気にしなかった。
「ギース、ビリーって何のことだ!え、舞!!」
 ボクは舞の両手を肘で封じながら言った。真剣に怒っていた。たまに怒るとボクは怖いのだ。
「舞・・・まさか、ギースタワーで、ギースとかビリーとえっちしてたのか?!え、どうなんだ!!」
「・・・ご、ごめんなさい・・・」
 舞の告白が始まった。いわく、ジョーとの浮気の最中にビリーにレイプされたこと、復讐のためにサウスタウンまで来てビリーを倒したはいいが、ギースに負けて散々に犯されたこと、スイスに出発する直前までギースに犯されていたこと、空港に向かうリムジンの中でもずっと犯されていたこと・・・
「・・・もうたくさんだ!・・・もういいっ!!」
 ボクは舞からどいて、服を着始めた。
「・・・アンディー!!」
 舞の両目に涙が浮いている。
「・・・君が快楽に弱い、溺れやすいっていうのは知ってた。ジョーやビリー、ギースとのことは全部ボクの責任だ。」
「どこ行くの、アンディー・・・」
「・・・君はずっとここにいろっ!!」
 ボクは外へ駆け出した。

「ビリー、表に出ろっ!」
「んあ・・・色男じゃねえか、どうだ、牝犬、じゃなくて不知火舞、見つかったか?」
「・・・いいから、表に出ろ!」 
 ボクは怒っていた。だが、ビルの修理に来ている人は一般の人だ。迷惑を掛けられなかった。
「んあ・・・その様子だと、聞いたみたいだな・・・俺とお前は兄弟なんだよ!!」
「棍を構えろ、ビリー、容赦なくいくぞ!!」
「おもしれえ、Hey、Hey!!」
 ボクの気の結界にビリーの棍の先端が触れた・・・

 バー「イリュージョン」のネオンがボクを誘っていたような気がした。
 ビリーを倒した後、ギースの帰国予定日を聞いても、奴は知らなかった。ボクはせめてもの腹いせに1番高そうな東洋美術の骨董品をギースの部屋から持ち出して、オークションに掛けてやった。・・・たった100ドルぽっちにしかならなかった。
 その100ドルを握り締めて歩いていたら、イリュージョンの前にいつのまにか立っていたのだった。
・・・部屋に帰る気がしないや・・・
 きっと舞と会っても気まずい思いするだけだ。ボクはまだ舞のことを愛してる・・・だがこれからも愛せるだろうか・・・酔っ払えばいいんだ!
 名案のように思えた。
 ギイッ・・・
 バーの扉を開ける。
「あら~珍しいわね、今晩はお1人?」
「いらっしゃい。」
「アンディーさん!!」
 客がいない。返事をしたのは、赤い飲み物を手にしたブルー・マリーに、カウンターでグラスを磨くキング、ミルクを飲んでるユリ・サカザキの3人だった。・・・いずれも激しいえっちの現場を見た3人娘だった。
 構わずにボクはブルー・マリーの隣のイスに座って、
「バーボン、ダブルで。」
 と注文したのだった。キングが黙って酒をボクの前に出した。出されたグラスを一気に流し込む。
「もう一杯・・・」
「アンディー荒れてるわね・・・」
「判ったっち、舞さんとケンカしたっち!!」
 マリーとユリが交互に言う。煩わしくなって2杯目の酒を飲み乾した。
「もう一杯・・・」
「そんな無理な飲み方したらだめよ、アンディー!」
 心配そうにキングが言った。その優しい声が胸に刺さったけど、飲まずにいられないのだ。
「いいから・・・」
「ふ~ん、さては舞に振られたな。」
「それはまずい、元気出すっち!」
「・・・違うよ、舞が・・・舞が浮気したんだよっ!!」
 ボクは言ってしまった。言ってから気づいた。3人が交互に顔を見合わせる。
「・・・お勘定して・・・あ、いいや、釣りも要らない。」
 ボクがさっきの100ドルを置いて、出て行こうとすると両脇からマリーとユリちゃんが掴まってきた。
「な、何だよ・・・」
「・・・面白そう、酒の肴に、もっと話してよ!」
「今日はアンディーさんの失恋パーティーだっち、徹底的に飲むっち!!」
「え~やだよ!」
 2人はボクを座らせて、ボトルをグラスに並々とついだ。キングがそっと、ドアに鍵を掛け、ネオンのスイッチを落とすのが見えた。
「さ、アンディー飲め!飲んで、忘れちゃえ!」
 マリーがボクに飲ませるのだった。

「・・・そんでさ、舞はさあ、ボクのペニスが固くないって言うんだよ、浮気しておいて、あんまりじゃない?」
 いつしか下の酒場から、ボク達は2階のキングの部屋に移動していた。ボクとマリーとユリちゃんがベッドの上で飲んでいた。キングは後片づけを終えてから、イスに座って黙って話を聞いていた。
「・・・うい・・・でも、固くないと私も嫌だなあ・・・テリーのは充分、固いから満足してるけど・・・兄弟でも違うんだなあ。」
「・・・ロバートさんは・・・長いっち・・・時々、抜けちゃうのが難点かなあ。」
「リョウ・サカザキはどうなの、キング!!」
 マリーの質問にキングが頬を染めた。
「し、知らないわよ!」
「・・・いい歳して、ぶってどうすんのよ、・・・ったく、こら、アンディー寝るな~!」
「・・・あ・・・ごめん・・・たくさん飲んだな・・・なあ、固い方が喜ばれるのかな?・・・なあ!」
「ま、固い方が子宮にごりごり当たっていい感じだけどね。」
 腕を組んで当然のように言うマリーを見ていたら、何だか段々悲しくなってきた。
「くそう、そんなにボクのは柔らかいのかな?・・・ちくしょう・・・ちくしょう!」
「・・・だったら・・・だったら、試してみるっち?」
「へっ?」
「ばか言って、ユリ!」
 キングが慌てて言った。
「そっか~そうよね、よし、試そう!」
 マリーがボクを押し倒した。連携プレイで、ユリちゃんがベルトを引っこ抜く。ズボンまで脱がされた。
「じゃあ、お先に!」
 ユリちゃんがボクの後ろに回って頭と腕を抱えこんだ。柔らかい感触にはっとする。ユリちゃんがボクを覗きこんでいた。
「・・・アンディーさん、勃起しちゃう?」
 マリーがパンツを脱がし、ボクのペニスをしごいた。
「・・・お先頂きま~す。」
 あむっ、くちゅ、ちゅぱ、
「・・・へえ、兄弟で全然形が違うのね~、あ、大きくなってきた♪」
 マリーは変な感心をしている。
 ちゅぷ、じゅるっ、じゅるるるる、
「はあ・・・はあ・・・マ、マリーさん・・・ユリも、ユリも舐めたい・・・」
「うふふ・・・じゃ、ちゅむ、ちゅぷ、一緒に・・・ちゅるるる、舐めようよ・・・ちゅぱっ!!」
「うん!」
 ユリちゃんがボクの股間へ行った。その反動でボクはしたたか、ベッドに頭をぶつけてしまった。
・・・頭痛え・・・でもペニスがすごく気持ちいい・・・
 快感が2倍になったような気がして、ボクは上半身を起こす。マリーが亀頭を、ユリちゃんが胴体を舐めていた。
・・・キングは・・・キングは手を顔に当てて、ヤケクソになって酒を呷っていた。
 巧みなマリーがボクを責める。技術は今イチだけど、ユリちゃんのその稚拙な初々しさが、ボクを興奮させる。
 ちゅぱっ、ちゅぷっ、じゅぷっ、
 ちゅるる、ちゅる、じゅる、
・・・ああ・・・気持ちいいよ~
「・・・んっ、んっ、ふふ、私、濡れちゃった・・・ね、ユリ、先に入れてもいい?」
「ん!ん!ん!・・・あ、はい・・・私も後で・・・」
 ユリちゃんが立ち上がって、服を脱いでしまった。一糸もまとわぬ姿になると、ボクの顔に股間を当てるのだった。
「ね、アンディーさん、舐めて!!」
 舐めるというよりも股間に押さえつけられたボクは、少女の甘酸っぱい体臭を嗅ぎ、興奮していた。そして、きぬずれの音がしてボクのペニスがマリーに握られた。
「ん・・・んっ・・・あ・・・入った・・・んっ・・・柔らかくないよ、アンディー・・・はん、あ、あ、あ、あんっ!!」
 とうとうボクはマリーの中へ入ってしまった。
・・・これって浮気なんだろうか?・・・
 ユリちゃんに舌を這わしながら、ボクは考えた。
・・・もう、どうなってもいいや・・・
「あん・・・そこ舐めて・・・あん・・・あん・・・あん・・・ユリ、濡れちゃう!!」
 ユリちゃんのヴァギナから透明な蜜がたくさん出てきた。ボクはミツバチのように無尽蔵なそれをちゅっちゅっと吸い続けた。
「あうっ、あう、あう、な、なんだ、固いじゃないの、アンディー!!」
 マリーが鍛え上げたその身体で、ボクのペニスに絡みついていた。筋肉で引き締まったその身体が、収縮を繰り返しボクに快感を与えるのだった。
「ず、ずるいっち、マリーさんばかり楽しんで・・・」
「じゃ、交代だ。」
 ぬるっとマリーが引き抜いた時、危うくいきそうになった。
・・・これで兄さんとも兄弟だ・・・と間抜けな考えが走った。
「へへ・・・ロバートさん以外の初めてだ・・・」
 ユリちゃんが嬉しそうにまたがっていく。マリーとのえっちでぬるぬるになったボクのペニス・・・ユリちゃんが眉をしかめて挿入していく。
「ああ!・・・入った、アンディーさんの・・・あん・・・ああっ、いいよ、うんっ!!」
 マリーがその様を見ていた。ボクは引き寄せてマリーの重たげな乳房に顔を当てた。
「んふう・・・テリーも私のおっぱい、好きなんだよ・・・兄弟って好みも一緒なんだね・・・あう!」
 マリーの乳房を舐め終わって、ふとキングの方を見た。キングがぽうっとした顔でこちらを見ている。
・・・あの顔・・・そうだ、リョウと終わった後、タクマさんに抱かれた時の顔だ・・・
 ボクはユリちゃんをベッドに倒したまま、隣にマリーを寝かせた。そして交互に2人のヴァギナに突っこんでやった。
「あう!あうっ!」
「あん、あん、ああ!!」
 嬌声が上がる中、ボクはじっとキングを見つめていた。ボクの視線に気づくと悩ましげな吐息をつき、目をそらそうとするのだった。
「おいで、キング・・・」
 ふわっと夢遊病者のようにふらふらとキングがこちらに来た。腰を休めることなく、ボクは言った。
「服を脱いで・・・」
「・・・」
 無言のまま、服を脱いでいくキング。・・・実はここだけの話だが、ボクは舞の次にキングが好きだったのだ。
「マリーにキスして・・・」
 キングはまるで操り人形のようだった。ユリ、マリーの順に犯していたボクは遂にキングのお尻を抱えて挿入した。
「!んっ、ん、ん、んっ!!」
 1人を犯している間には、他の2人同士が絡んでいた。ものすごい光景だった。
 そのうち、限界がきた。ボクはキング、マリー、ユリちゃんを向い合わせて、乳房に精液をかけてやった。
「熱い!!」
「う・・・ううっ・・・はあっ!」
「・・・すごい勢い・・・」
 正に男性の威信の復活だった。ボクは3人とえっちしたのだった。
・・・はあ、はあ、はあ、こ、これで・・・ボクは・・・男として、復活、はあ、はあ・・・
 そう思っているとぴとっとキングが身体を寄せてきた。
「はあ、はあ、え?・・・なん、何?・・・何?」
「もっとしたい・・・」
 貪欲な女達だった。見回すとマリーもユリちゃんも期待に目を輝かしているようだった。
・・・みんな、ごめん!!・・・
 ボクは心の中で兄さんとロバート、タクマ・リョウ親子、そして舞に謝ってから、挑むことにした。
 3人の嬌声が爆発した。

 ボクは早朝、気分が悪くなって便所で戻していた。精も根も果てていた。戻ると3人とも満足したような顔で寝ている。
・・・すごかったな、昨夜は・・・
 ボクは服を着ながら、射精の回数を数えていた。5回かな、6回かな・・・

 家までの途中に極限流ドージョーを覗いてみた。タクマさんが朝稽古をしているはずだった。
 果たしてタクマさんが1人で演武を行っていた。静と動、動と静、見事な美しさだった。やがて演武が終わるとタオルで顔を拭きながら、タクマさんがこちらに来た。
「よお、アンディー君・・・おや、目の下に隈が出来てるぞ。いかんな、不摂生は。」
 ボクは真面目だった。真面目に質問してみた。
「・・・男性器の鍛錬について教えて下さい!!」
 タクマさんが目を丸くしていた。

・・・とまあ、そんな訳でタクマさんに教えてもらった通り、滝に打たれている訳だ。
「臨、兵、闘、者、皆、陳、烈、在、前!!」
 ボクはもう1度9字を切った。滝の水はもう冷たくない。
 最後の仕上げに取りかかる。タクマさんの教え通り、ボクは右手を高く振り上げた。
・・・恐いけどやるしかない、ボクと舞のためだ・・・
 渾身の力で、手を降ろしていく。破壊的な速度で、手に持っている滝の水入りのビール瓶が股間に当った瞬間、
「い、痛い!!」
 ボクは絶叫した。そして気絶した。
・・・タクマさん、これシャレにならないっす!・・・

 

(了)

 

亭主後述……

今回アップは新作ではなく、以前にFatManさんのHPに寄贈したものです。(笑)
とんびさんの「舞ころし」という非常にえっちな作品に刺激を受け書きました。
合わせてお読み頂くと面白さ増大かも!
でも、とんびさんの世界を壊してしまったかもしれません。
2次作品から更に影響を受けて書くということは、それがいかに素晴らしいかということを証明していると思ったりもします。影響を受け、与えられたらいいですよね。
初代餓狼伝説を遊んだ時から、アンディーには思い出があります。
格闘ゲームが下手な私が、ギースを倒すことができたのがアンディーなのです。
そう、残影拳連発です。ためコマンドオンリーです。
アンディー……ありがとう、恩返ししたよ!! でもラストが可哀想かな?