I still haven't found what I'm looking for #1 ~To Heart~


 くちゅくちゅ、ってえっちな音が、私の身体からしてる。
「ん、ん、んうっ!・・・ん、ん、あ、あっ!!・・・ん、ん、ん・・・」
 階下のお母さんにはナイショ、聞かれたくなくって、枕を噛む。
 でも指を止められない、ううん、指がどんどん入りこんでいくの、奥へ奥へ。
 またくちゅくちゅ、って水の音。
「ん、んう!あっ、あ、あっ、ああっ!!」
 声が大きくなっちゃいそう。
 それが怖くて、枕をひと噛み。何かを抱きしめていないと、身体ごとどこかへ飛んでいっちゃいそう。
 頭の横のクマチュウを力一杯抱きしめて、今は指を激しく動かしていく。自分を慰めている。
 指が粘々した蜜の中を掻き回す。手のひらの平らな部分で、外にある発達した突起をこすりこすり。
 もう、だめ。声が出そう。大きく出ちゃいそう。
「んううう・・・うう・・・ん、ん、ああっ、ひ!!」
 ああ、とうとう私、呼んじゃう、名前呼んじゃうの、ここにいて欲しいって。
「あん、だめ、だめっ!、ひろ・・・浩之ちゃんっ!あ、いい、ん、んっ!!」
 頭の中が真っ白になった。白い光の中、浩之ちゃんが私に優しく笑ってる。
 だけど、それは私の幻、妄想、夢。
 背筋が伸びて、絶頂を迎えちゃう。
 足を広げたはしたないカッコのまま、しばらく呆然として快感の余韻に浸っていると
「あかり!!いい加減お風呂入りなさ~い!」
 というお母さんの声がした。
「・・・は~い・・・」
 力なく私はベッドの上で返事をする。
 手を伸ばして机の上の小さな鏡を取ると、私は自分自身を眺めてみた。
 女の子自身。ゴールデンウィーク、とうとう浩之ちゃんを迎え入れた私が鏡に写っている。薄い体毛の奥で、そこだけが妙に赤くていやらしい。
 時々、蜜がぽとりぽとりって溢れ出てくる。
 鏡を持つ指も、さっきの粘々した私の蜜だらけで汚れたまんま。
「・・・みじめだよ・・・浩之ちゃん・・・」
 ふと言葉が洩れた。
 悲しくないのに、悲しかった。
 鏡の中の私自身は、まだ疼いている。指にはカタツムリの這った跡みたいな蜜が、まだ乾かないまま。
 現実の私はみじめだった。
・・・浩之ちゃん・・・
 もう1度だけ呟いてから、お風呂の用意をした。

 翌朝、もう待ち合わせすることがなくなったいつもの通学路、浩之ちゃんを見かけた。
 声をかけようとして、志保が隣にいるのを見てやめた。
「アンタ、バカねえ~」
 朝からハイテンションの志保がいた。
「あ、痛ててててて・・・おめーの声は朝っぱらから頭に響くんだよ、ちっとは静かにしてろや。」
 悪態を吐く浩之ちゃんに、志保は更に追い討ちをかけるかのように、話しかけていった。
・・・ふふ、漫才みたい・・・
 くすくす笑う私。もう笑っちゃうくらい、まるで夫婦漫才のよう。
・・・何で笑うの、あかり?どうして笑えるの、あかり?・・・
 自分の中にいるもう1人の私が、突然問いかける。
 本当は、毎朝、浩之ちゃんの隣にいなくちゃいけないのは、私なのに。この私なのに。
 私の指定席を、志保が奪った、盗った。
・・・盗・ま・れ・た?・・・
 盗む、という語感に、凶々しさを感じて頭を振る。
「まったくうっせ~な、おめえはよ!!」
「ムッカ~、腹立つわねえ!!」
 また2人の声が響き渡って、その声の大きさに驚いた生徒が何人か振り返った。
 そしていつもの2人だと判ると、安心してそれぞれの相手とお喋りに戻るのだった。
 私は1人ぼっちで、2人の後ろをついていった。
 とぼとぼと歩いた。
 もうすぐ長い長い夏休みが来ようとしている。
 だけど、私は1人ぼっちでみじめだった。

 授業が終わり、浩之ちゃんに声をかけようとしてもダメだった。委員長の保科さんと、楽しそうにお喋りしていたからだった。
・・・裕之ちゃん、私とお話してよ・・・
 まごまごしてる間に、今度は志保が来て、浩之ちゃんとやりとりを始めてる。
 ふざけあって、本当に楽しそうな2人。苦笑しながら、雅史ちゃんがそんな2人を見ている。
 でも最後は、保科さんが額の青筋を震わせながら
「いい加減静かにしいや!・・・長岡さんも他のクラス来て、騒がんとき!」
 なんて怒るのがいつものことだった。
 浩之ちゃんは、いつものように保科さんと志保の両方とものご機嫌をうまく取って、その場を取り繕うのだ。
 私の入りこむ場所なんて、ない。
 それでも放課後になって、勇気を出して浩之ちゃんに話しかけてみた。
「あの・・・ひ、浩之ちゃん?」
「うん?・・・あ・・・ああ・・・あかりか・・・」
 あかりか、その言葉には動揺と戸惑いが隠せないみたいだ。私には判ってる。
「どうした?」
「今日、一緒に帰らない?」
 浩之ちゃんの顔が途端に曇る。
「あ・・・ああ・・・いいぜ、たまにはな・・・ちょっと下駄箱で待ってろ!」
 ぶっきら棒に言う浩之ちゃんから久々にOKが出た。
「うんっ!」
 私は言われた通りに教室を出る。嬉しくってしかたがない。この気持ちは隠しようがない。
 でも、教室を振り返ると、どこかへ携帯で電話してる浩之ちゃんの姿が見えた。
 誰に電話してるか、なんて、もちろんそんなのお見通しだった。

 下駄箱で浩之ちゃんを待っていると、これからサッカー部の練習に向かう雅史ちゃんがやってきた。
「あかりちゃん!」
「雅史ちゃん、これから練習?」
 うん、とうなづいた雅史ちゃんは、仲間から離れて急に私に囁いた。
「浩之から伝言・・・」
「えっ?」
「裏山の神社で待ってろって。」
「・・・あ、ありがとう・・・」
 雅史ちゃんは気の毒そうな顔をしていた。
「あんなところで待ってろ、なんて浩之、ひどいよね!」
「ううん、大丈夫。ありがとう、雅史ちゃん、練習がんばってね。」
 私は駆け出した。後ろから雅史ちゃんが私を見ているような気がした。

 学校の裏手にはひなびた神社がある。
 格闘技同好会に所属した浩之ちゃんは、時々ここで松原葵ちゃん相手にサンドバックを叩いたり、蹴ったりしていた。
 本気で格闘技やるの、という私の質問に、浩之ちゃんは、気分転換でストレス発散できるから、なんて答えていた。もちろん本格的にやるつもりはなくて、ただやる気まんまんの葵ちゃんの手伝いしてるだけだよ、なんて笑っていた。
 でも・・・私は見ちゃったんだ、見ちゃったの。
 あれは、にわか雨が降った日。
 週番で下校するのが遅くなった私は、突然振り出した雨に置き傘を広げた。その時、裏山で練習してる2人のことを思い出した。
・・・葵ちゃんに傘貸してあげて、私は浩之ちゃんと相合い傘しようっかなあ・・・
 なんてことを考えながら、裏山に登っていった。
 途中、ぬかるんだ地面に何回も転びそうになりながら、ようやく神社まで登ってみると、2人の姿が見当たらなかった。
「・・・あれ~おかしいなあ・・・」
 サンドバックだけが雨に打たれている。
 練習熱心な2人が、大切なサンドバックを置いて帰るはずがなかった。何でも高価なものらしい、と浩之ちゃんは前に教えてくれていた。
「・・・ん・・・ん・・・んう・・・」
 くぐもった声が聞こえてきた。はっとして神社の縁側に目を向けると2人がいた。
・・・ひ、浩之ちゃん・・・
 私は大声を出しそうになった。
 縁側に座り込んだ浩之ちゃんのあれを、葵ちゃんが、葵ちゃんが、葵ちゃんが・・・口でしていたのだ。
 大きく股を開いて目を閉じる浩之ちゃんのジャージが、膝までだらしなく脱げていた。
 そして葵ちゃんは体操服とブルマのまま、浩之ちゃんの股間に顔を埋めていた。
 神様に叱られちゃうよ、浩之ちゃん、なんてばかげた考えが頭をよぎっていた。
「ああ・・・気持ちいいよ、葵ちゃん・・・」
 浩之ちゃんがそう言って、葵ちゃんの頭をさわさわと撫でる。
「ん・・・んっ・・・ん、ん、くぽっ・・・そうですか、私嬉しいですっ!」
 葵ちゃんは誉められて喜んでいる。
「先輩に誉められると嬉しいんです、がんばります!・・・はむっ、ん、ん、くぷっ、ん、ん・・・」
 また葵ちゃんが続け出した。頭が揺れ、全身を動かして浩之ちゃんのあれを舐めているのだ。
「うお、そ、そんな・・・うお!気持ちいい!!」
 激しく吸い込む葵ちゃん。あんなに大切そうに浩之ちゃんのあれを口でなんて・・・
「へへっ、こういうのどうです?」
 いたずらそうに微笑むと、葵ちゃんは、舌先であれの先っぽから根元までつーっ、つーっと何度も往復する。
 果たして浩之ちゃんがもがいていた。
「そ・・・そんなにしたら・・・う、うわ!」
「こぽっ・・・へへ、雑誌に書いてあったんです、これが。」
 いったん離れて浩之ちゃんを揉み揉み。得意そうに葵ちゃんが言った。
「さすが研究熱心な葵ちゃん、技の習得に余念がないね・・・」
「はい、練習練習あるのみです!」
「葵ちゃん、頼むよ、焦らさないでよ・・・」
「もう、藤田先輩、わがままなんだから・・・じゃあ、いって下さいね、お口の中でいいですから・・・ん、ん、んう、むっ・・・・」
 後はもう、じゅるじゅる葵ちゃんが、浩之ちゃんを吸い込むだけ。
 ちゅぱちゅぱ、吸い続ける。しまいには葵ちゃんの両手が、浩之ちゃんの足をしっかりと持って、頭が何度も上下していた。
「・・・葵ちゃん、出すよ、そらっ!」
 浩之ちゃんが叫んだ。更に葵ちゃんは吸い込みを続けて、浩之ちゃんを最後まで感じさせていた。
 ぬるりと葵ちゃんの口からあれが現れた。口一杯に浩之ちゃんの精液を溜めた頬が膨らんでいる。その顔はどこか嬉しそうだった。
「あ~気持ちよかった・・・よし、じゃ、飲んで。」
 ごくっと葵ちゃんが飲みこむ。もう慣れた様子だった。
「・・・一杯出ちゃいましたね、藤田先輩。」
「さすが葵ちゃん、うまくなったねえ。」
 しみじみと浩之ちゃんが言うと、
「藤田先輩のご指導の賜物ですよ。」
 って葵ちゃんが言い返していた。それでも手の中で、浩之ちゃんのあれを名残惜しそうに弄んでいる。
「ねえ、先輩?」
 ふと葵ちゃんが顔を上げて聞く。
「ん?」
「本当に、精液飲んだら強くなれますか?」
 浩之ちゃんは、こうして葵ちゃんに悪いことを教えているのだろうか。
「うん、大丈夫、飲み続けると、強くなるって何かの雑誌に書いてあったよ。」
・・・ウソ、浩之ちゃん、ウソばっかり・・・
 でも葵ちゃんはそれを信じてるらしく、にこって微笑んでいた。
「また飲ませて下さいね。」
「うん、これで来栖川綾香にも、きっと勝てるようになるよ・・・ようし、じゃあ今度は葵ちゃんが気持ちよくなろっか。」
「はいっ!」
 いそいそと喜ぶ葵ちゃんが浩之ちゃんの足の間にもたれていく。葵ちゃんを後ろから抱きかかえながら、浩之ちゃんが身体中を触っていくと
「あうっ・・・あ・・・あ・・・いや・・・」
 浩之ちゃんの指が体操着の上から、微妙な膨らみを撫でている。
「もうこんなに尖ってきたよ、葵ちゃんのおっぱいが・・・」
「あん、や、やだっ!」
「ほら?」
「あっ、あっ、あっ、あん、おっぱい感じるう~」
 浩之ちゃんの髪の毛を掻きむしって、葵ちゃんが悶えた。
「こっちはどうかな~?」
 浩之ちゃん、いやらしそう。
 ブルマの間に指が消えていく。途端に葵ちゃんがもがき出した。
「あん!あ・・・指、指、あん、あっ、そんな~」
「あれ~、もう湿ってるよ。」
「ち、違います!汗です、汗!あ・・・あ・・・きゃっ!」
「汗?違うよ、もう濡れてるよ、葵ちゃん!!」
「先輩、もう直接して下さい・・・ああん、あん・・・」
 リクエストに応じて、体操着の中に指を潜らせた浩之ちゃんが、露わになった葵ちゃんの可憐なピンク色の乳首を摘み上げた。
 指で挟んで引っ張るように2度、3度、どんどん摘むと、葵ちゃんが大きな声を出していた。
 こりっ、こり、こりり、
「あ、ああ、あん、先輩、先輩!!・・・私の胸、小さいでしょ、長岡先輩やレミィ先輩ほど・・・あ・・・あ・・・あん・・・大きくないんです・・・」
 悶えながら葵ちゃんが必死の形相で言う。浩之ちゃんは笑って
「大丈夫、こうやって、大きくしてあげる。」
 と言って、更に乳房を愛撫するのだった。
・・・葵ちゃん・・・羨ましいな・・・
 立ちつくしたまま、私はそう思った。
・・・ああやって、浩之ちゃんに嬉しそうに愛されて、気持ちよさそうで・・・
「ああっ!ああっ!」
 葵ちゃんのブルマを撫でている。股間の中心を浩之ちゃんがもぞもぞと嬲っている。 
・・・私も、ゴールデンウィークにしてもらったのに・・・何回もああやってされたのに・・・
「あん、先輩、先輩っ!」
 今度はブルマを脱がして寝かせると、浩之ちゃんは顔を股間に埋めていった。
「や!やっ、汗だらけで汚いんです!!あん、いやあ!」
 懸命に抵抗してるけど、結局は快感に負けて震える葵ちゃん。
 いつのまにか抗わないで、浩之ちゃんの頭をぎゅっと押しつけている。
「そんなことないよ、葵ちゃん、きれいだよ・・・うわあ、きれいなピンク色だなあ。」
 感慨深げに浩之ちゃんが言う。恥ずかしそうに身体をよじる葵ちゃんが痙攣していた。
「ああん!」
・・・こんなところでするなんて、バチが当たっても知らないよ、浩之ちゃん・・・
「先輩、来て、早く来て下さい!」
 大きな声で求める葵ちゃんの声を潮に、私は傘を1本だけ置いてその場を去った。
 裏山を駆け下りる途中、熱い何かが頬を伝わっているような気がした。

「あかり!」
 浩之ちゃんの呼ぶ声に私は現実に戻った。
 いつもサンドバックを吊るす木の下で、私は浩之ちゃんと葵ちゃんのことを思い出していたのだ。
「あかり!ったく、気づけよ~」
「浩之ちゃん!?」
 浩之ちゃんがやっと来てくれたのだ。自分の声が弾んでいるような気がしている。 
「待ってたよ、遅かったね?」
「・・・ちょっとこっち来い。」
「えっ?!」
 浩之ちゃんが私の手を引いていく。
「どこ行くの、浩之ちゃん?」
 私の問いに答えがない。とうとう、神社で1番大きな銀杏の木の下まで連れて行かれてしまうと、浩之ちゃんは木に寄りかかって、
「しゃがめよ、あかり!」
 と怖い声で言った。
「え、で、でも~」
 おろおろする私を尻目に、浩之ちゃんはカチャカチャとズボンを弛めていた。
「早くしゃがめよ!」
「きゃっ!!」
 頭を押さえつけられて、私はついしゃがんでしまった。
「ほら、口でしてくれよ。」
 私は驚いた。目の前に浩之ちゃんのあれが、無造作に突きつけられたからだった。
「ひ、浩之ちゃん?」
「時間ないんだ、さっさとしてくれよ。」
 いやだよ、そう言い掛けた瞬間、あれが口に入ってきた。
「ぐっ、ぐっ・・・おほ!ぐう!」
 涙が目ににじんで、視界がぼやけていた。あれが咽喉の奥まで入ってきたのだ。
「噛むんじゃねえぞ、ほら、ほら!」
 頭を掴まれて、がくがくと揺さぶられていく。
 本当はこんな外でなんていやなのだが、抵抗すると怒られそうなので、黙って浩之ちゃんの命じるままになっていた。
「もっと丁寧にしろ。」
・・・葵ちゃんみたいに?・・・
 くぷ、ちゅぷ、じゅぷ、
「そうそう、丁寧にな・・・あ、おい、歯を立てるんじゃねえよ。」
 なるたけ歯を出さずにゆっくり舐めてあげる。だんだん口の中のあれが大きく太くなってきていた。
「鈍くせえな、もっと音出して。」
 ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぷっ、 
 言われた通り、唾を思いっきり舌に含めて、浩之ちゃんを舐めてあげる。
「そう、そう、そう・・・ほら舌で先を刺激して。」
 口から出したあれがてかてかに光っている。何か獰猛な肉食獣みたいだ。
 舌の先を尖らせて、あれの割れた先端をなぞると、浩之ちゃんが気持ちよさそうな声を出す。それが私にも嬉しくって、ついついこの作業に熱中してしまうのだ。
 割れた先端から透明な液体がどんどん出てくる。浩之ちゃんに言わせるとガマン汁って言うのだそうだ。
・・・男の子って不思議だな・・・
 そう思って根元を握った指をしごいていった。
 れろ、れろ、れろ、
「うう・・・手をもっと動かしてくれ・・・」
 こす、こすっ、こすり、
 苦い透明な液体がまた大洪水。私の口の中へ広がっていく。
「・・・気持ちいい・・・ようし、あかり、また口の中へ入れてくれ!」
 ちゅぽん、唇をきゅっと閉じ、顔を揺らす。びくん、びくん、口の中で浩之ちゃんのあれが震えた。
 舌でまんべんなくあれを愛してあげる。
 ちゅぱ、ちゅぷ、じゅぷ、
 そうしていると、
「あ、いく、いくぞ!」
 また頭が掴まれて、がつんがつん動かされる。もちろん私は苦しいのだが、浩之ちゃんがいいなら耐えられる、と思った。
「あ、いく!」
 どろどろの液体。熱くて粘っこくって、まだまだ出てくる。
 でも、もう何回か慣れた・・・本当は出され慣れているだけなのだが、とにかく愛しい、そういう味。
 口から少しあふれ、頬や唇に張り付いていく、浩之ちゃんの精液。
・・・温かい・・・
 射精しきったあれがまだ固いまま。私は口に含んだまま、それをまた舐めていく。
 れろ、れろ、れろ、
 全部、私のもの。葵ちゃんにはあげたくない、最後の1滴まで。
「はあ、はあ、はあ・・・もういいぞ、あかり・・・」
 息を荒くした浩之ちゃんが私から離れていく。
 まだ。まだ許可があるまで、飲んじゃだめ。
「いいぞ、飲んで。」
 味わって飲む。ごくりと咽喉を伝わって、身体の中へ注がれる浩之ちゃんの精液。
 私はしばらく、その味わいに身体を火照らせていた。
「・・・じゃあな、あかり。」
「?」
「悪いけど、用事があってよ。先帰るわ、またな。」
 とっとと支度を終わらせると、浩之ちゃんは私を残したまま去っていった。
「・・・ひ、浩之ちゃん?!」
 泣き声で私は叫んでいた。
 浩之ちゃんの背中が小さくなり、やがて見えなくなった。
「浩之ちゃん、浩之ちゃん、浩之ちゃん、浩之ちゃん、浩之ちゃん、浩之ちゃん・・・」
 昔子供の頃、公園でみんなと隠れんぼをした時、私が鬼になった。
 その時、いじめっ子の浩之ちゃんが、みんなをそそのかして家に帰ってしまったことを思い出しながら、私はしゃがんだまま泣いた。
・・・浩之ちゃん、絶対迎えに来てくれるよね、あの時みたいに・・・
 でも、どれだけ待っても、浩之ちゃんは帰ってこなかった。
 私は口内に残るねばねばした精液を噛み噛み、1人、暗くなった山を降りた。
 最低の気分だった。

 翌日の土曜日、授業が早く終わると、また浩之ちゃんのところへ行った。
「おう、あかり。」
「ね、ちゃんとご飯食べてるの?」
 浩之ちゃんのご両親は仕事で家を空けている。一人っ子の浩之ちゃんは、お金を貰って、外で食事を済ませているのだが、その食生活がひどく気になっていたのだ。
「あん?」
 興味なさそうに浩之ちゃんが鼻を鳴らした。
「今日、また作りに行ってあげようか?」
「・・・ったく、いいよ、間に合ってるよ。」
「夜は家にいるの?」
「あ~判らねえな。」
「・・・そう。」
「ヒロ、お待たせ!!」
 元気のいい声が教室の入り口から聞こえた。
 あの高い声は志保に間違いない、これから2人でどこかへ遊びに行くのだ、きっとそうに決まっている。
「・・・って、あかり・・・」
 私が浩之ちゃんと一緒にいるのに気づいて、志保の声のトーンがやや下がった。
「・・・志保・・・」
 私は笑って志保に手を振った。うまく笑えなかったような気がした。
 志保も私に手を振った。でもそれは一瞬だけのこと。視線が合ったのも、ほとんどないくらい。
「じゃあな、あかり。」
 そう言って、浩之ちゃんは教室を出て行った。すぐに教室の外から志保のテンションの高い声が聞こえていた。
「・・・ええんか?」
「え?」
 その声に私は驚いた。
 振り向くと、浩之ちゃんの隣の席の保科さんが、教科書とノートを片付けながら私を見ていた。
「保科さん・・・?」
「・・・神岸さん、ええのか、言うとるんよ。」
「な、何?」
「アンタ、藤田君の彼女ちゃうのんか?」
 そう、私は保科さんの指摘する通り、浩之ちゃんの彼女だ。いや、今は違う、彼女だったのだ。
「・・・」
「あのまんまじゃ、長岡さんに藤田君、取られるんと違うか?」
 違う、もう取られている。
「・・・」
「アンタ見てると、めっちゃ腹立つんや、昔の自分みたいで!」
 保科さんが怖い顔で私を見ていた。
「イジイジして、待ってるだけで、自分から何もせえへんで・・・そんなんやから、彼氏取られるんや!」
「・・・」
「・・・あ~こんなに私に言われても、何も言えへんのやからな~昔の自分見てるみたいで、ほんまにむかつく!」
 鞄がどさっと机に置かれた。
「・・・もう1つ、教えたろっか?」
「な、何?」
「私もな、藤田君の家に泊まったことがあるんや。」
「!」
 保科さんがにやりと笑った。
「・・・後のことは教えたらへんけど・・・何でこんなこと、神岸さんに言うと思う?」
 判らない、判らない、保科さんが言ったことが、言った意味が、全然判らない。
「アンタも私の敵やからや、嫌いやからや。ほな、先に帰るわ、さいなら~」
 おすまし顔の保科さんが教室を出て行った。
 身体の中を熱い熱い衝動が駆け巡る。悪寒に似た何かが走る。
 私は女子トイレに駆け込んだ。扉を閉めた途端に、涙が出た。出た。出た。
 何でこんなに悲しい思いをしなきゃいけないんだろ、と思いながら泣いた。
 ハンカチで拭いても拭いても、涙が止まらなかった。それどころか、嗚咽まで洩れていた。
 トイレの中でひたすらに泣き続けた。

 近所のスーパーで買い物を終えて、1度帰った私はシャワーを浴びた。
 頭のてっぺんから熱湯を浴びると、さっきの涙の痕がうまくごまかせると思った。そして身体の隅々まで丁寧に洗った。
 お母さんに志保の家に泊まる、と嘘を言って外に出た。
・・・何作ろうかな、浩之ちゃん、味にうるさいからな・・・
 買い物の袋を見ながら歩いていく。
・・・おいしいもの作ったら、私のこと、ちょっとは見直してくれるかな?・・・
 おいしい、そう言って私を誉めてくれる浩之ちゃんの姿を想像する。
・・・そしてその後は・・・きゃっ、何考えてるの、あかり!・・・
 ばかなことを考えている間に、浩之ちゃんの家に着いた。
 ベルを鳴らす。1回。
 誰も出てこない。
・・・浩之ちゃん、志保と出かけて、まだ帰ってないのかな~・・・
 もう1回、2回。
 お家の中に人の気配がする。間違いない、浩之ちゃんはいる。
 階下に降りてくる人の気配、慌ててる。
「はい・・・?」
 玄関の向こうから浩之ちゃんの声。
「浩之ちゃん?私。」
 はあ、そうため息が聞こえ、扉が開く。
「ご飯作ってあげる、浩之ちゃん、あのね・・・え?」
 扉の向こうに浩之ちゃんがいる。でも上半身は裸、下はジーパン穿いてるけど・・・顔が怒っている。
「お前な~頼んでもいねえのに、余計なことすんじゃねえよ!ったくフラウ・ボゥとかファ・ユイリィじゃあるめえし!」
「ひ、浩之ちゃん・・・ごめん・・・」
 ああ、まただ、またなかよくしようとして失敗してる、私。
 じわっとまた涙腺が緩みそうになった。だけど視線を落とした時、玄関に靴があるのが見えた。
 赤いスニーカー。見覚えがある。あれは・・・
 違う、靴だけじゃない、階段に白い何かが引っ掛かっている、脱ぎ捨てられたルーズソックスだ・・・
「・・・ヒ~ロ~、ま~だ~?!」
 2階から声がした。この高い声、もう間違いない。
 視線を上げると浩之ちゃんが狼狽してる。私の視線を追って、靴のこと気づいたみたい。
「・・・いや、その、お客が・・・な、来てるんだ。その~」
「志保が来てるんだ。」
「え!・・・う、うん、そう・・・柄にもなく勉強してるんだ、はは。」
 嘘をついても、もうバレバレ、この2人が進んで勉強なんてするはずがない。浩之ちゃんは居直っている。
 よく見ると浩之ちゃんの首筋に腫れた痕。
 あれは絶対キスマークに違いない。
 きっと浩之ちゃんと志保は、玄関に入るとすぐに、相手を抱きしめて、何回もキスして、階段を登りながら、素早くお互いの邪魔な服を脱がして、ベッドの中へ・・・狂おしい程の熱情で重なりあって、その時には、2人とも私のことなんかこれぽっちも思い出してくれなくって・・・
「・・・勉強がんばってね・・・」
 そう言って私は扉を閉めた。
「あっ、おい!!あかり、あかりっ!」
 途中で声が聞こえなくなった。外に出ても、後ろから浩之ちゃんが追いかけてくることももうなかった。

 

(了)

 

亭主後述……

犬属性のあかり、妙にいじめたくなりませんか?
まだ全員口説いていないのに、書いてしまった~
1回目のプレイで志保をGETしたのですが、その時、この物語が頭に浮かびました。
何か無茶苦茶お話が長くなるような気がしてます。飽きずにお付き合い頂ければいいのですが。(汗)
次回、あかりは意外な人物と会う。悩みに揺れるあかりの明日はどっちだ!?(笑)
尚、タイトルはU2のパクリでございます。妙に長くて、彷徨えるあかりにぴったし……かな?